ちゃんと知ってください


あたしたちはしばらく、記憶と後悔、託し託されたモノについてそれぞれの想いを話し合っていた。

そうすれば、また新たに足音が聞こえてくる。
今度は大人数。

振り向けば、ティーダやユウナ、バッツ達の姿がそこにはあった。





「よく来たな」

「アーロン!心配したんだぞ!」





目が合うなり、ティーダはアーロンに文句を言った。
だけどその表情は綻んでいる。ホッとしたような、そんな感じ。

一番に見つけてくれたのがクルルだっただけで、みんなで手分けして探していたんだろうからそりゃ安心もするだろう。

でもそうした時、アーロンの手には太刀が取られていた。





「寄るな!」

「「「「!」」」」





太刀を構え、突然そう声を上げたアーロンに皆がギョッとする。
あたしも、隣でかなりびっくりした。





「アーロンさん!本気なの!?」

「私達と戦うつもりですか!?」

「俺は無意識の迷いからこのザナルカンドを喚び出した…。この先最深部にどんな悪しきことが待っているかわからん。それを未然に防ぐためにも迷いを断ち切っておきたいのだ」





狼狽えたクルルやユウナに対して譲る事無くそう言う。

まったくこの人は…。
やっぱり根っこ、カタブツじゃないか。

そう思ったら、少しだけ口元が緩んだ。





「不器用な奴だな、アーロン」

「なにも告げずにすべてをダークイミテーションに託したお前に不器用呼ばわりされるとはな」

「それとこれは違うだろ。いいよ、俺たちと戦う事で迷いが経ち切れるなら…俺は協力するよ」





バッツはアーロンの意思を汲み、剣を手にしてくれた。

それを見たあたしは一度アーロンの傍を離れることにした。
そしてバッツの隣に立つと、アーロンに向き直った。





「じゃあ、あたしも。バッツ、ありがとう」

「ん?おう、ナマエも戦うんだな」

「うん。あたしも、こっちに行くよ。あたしは立場的に中間だと思うんだけど、でも今は託された側になる。アーロンが託して残してくれた事、それはどんなに大きなものかって、ちゃんと見せたいから」

「…ああ、わかった」





アーロンは頷いた。
その想いをしかと受け止めると、そう了承してくれた。

ここまで流れが出来れば、他の皆も覚悟を決めてくれる。

クルルにユウナにティーダ、皆も武器を手にしてくれた。





「だけど、力の加減が上手くいかないかも!」

「殺すつもりで来い。どうせ死人だ」

「そこまで言うなら…」

「やってやるッス!」





今、その場にいる全員がアーロンと対峙する。
目の前にいる仲間たちを前に、アーロンは太刀を握り直した。





「俺には後悔や心残りがある。その存在を受け止めて、向き合ってみた結果だ」

「あんたの後悔は無駄じゃない。それを証明してやる!」

「父やジェクトさんを想ってくれての事だと思います。その思いやりに応える方法が戦いだなんて悲しいけど…」

「それが望みなら叶えよう!」





ティーダやユウナは自分たちの父親をこんなにも想ってくれた存在の力になりたいと、きっと強く願っている。
だから今バッツが言ったこと…それが望みなら、叶えたいと心から思う。

あたしも同じだ。

力になりたいよ。
あたしがアーロンに出来ること…アーロンの為なら、なんだってしてあげたい。





「アーロンの想い、ひとつも無駄なんかじゃないんだから。それ、ちゃんと伝えるよ。だから、ちゃんと知ってね!」





ずっと、後悔してるんだよね。
それを全て消すのは、もしかしたら無理なのかもしれない。

だけどね、それは決して無駄なモノじゃないんだ。

アーロンがいてくれたから、アーロンのおかげで出来た事、たくさんあるんだよ。

それなのに、それを本人が知らないのは勿体無いよね。

だからちゃんと、知ってください。
そんな気持ちを胸に、あたしたちは戦った。



END
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