君と共感しあえるなら


「あのガーランドという人が仲間になるんですのね…」





先程、対峙した敵を一掃して去って行ったガーランド。
その姿を思い出し、そう呟いたポロムだ。

少し前にこちら側に座標を渡してきたガーランド。

モグもビックリだと口にしたくらい、あれからこちら側ではちょっとした困惑を覚えることが増えた。





「仲間…とは言えない状態みたいだけど。共闘とも違うし…」

「敵が味方になるのって無くはないとは思うんだけどな」





ルールーが考え込み、そして後ろ頭を掻きながらそれに答えるザックス。

ルールーの言う通り、確かに一緒に戦ってる…って感じでは無い気がする。
そう言う言い方よりは、ただ同じ敵と戦ってるだけ…というか。





「ガーランド…利害が一致するとは思えませんね」

「ホープ?」





するとそこに息をつきながらそうホープが言う。
あたしはその溜息を聞き彼の顔に目を向けた。

なんだか凄く厄介そうなものを抱えてしまったと言うか、ちょっと憂鬱そうにも見えたから。

いや勿論、油断ならないというか、不安要素ではあるんだけどね。





「ガーランドって戦いを求めてるんだろ?強くなりたいのかな?」

「強くなりたいってなら俺もわかるぜ。そのために強いやつと戦うのもな」

「強くなることと争いを求めること…それは同じでは無いと思います。そこには色々な想いがぶつかりあい、そして淘汰されることになる。僕たちとは相容れない考えです」





ガーランドが戦いを求める理由。
ザックスやマッシュが強さを求めるなら話はわかると言えば、ホープはそれを否定した。

ホープにしては結構きっぱり言ったなあと思った。

でも確かに、ガーランドの場合は強くなりたいからというのとはちょっと違う気がした。





「うーん…ガーランドは強くなるためにと言うよりは、ただ戦うという事にこだわっているような気がする。ただただ、戦いを楽しむ…そんな感じって言えばいいのかなあ…」





あたしはそう感じた。
だから思ったことを言ってみたけれど、難しいな…。

相容れない、というより理解しづらい感情ではあるかなと思う。

強くなりたい、なら確かに分かる感情ではあるんだよね。
切磋琢磨というか、技を磨くとか…。

でもガーランドの場合はなんだろう…貪欲に、戦いそのものに意味を見出してるって言うのかな。

あたしは争いなんて、避けられるなら避けたいと思うから。
だから理解しえない感情かな、とは思う。




「争いは確かに違うな。兄貴もよくそういう中で苦労してるし」

「でも目的を持たない闘争…それ自体は純粋な想いなのかもしれないわね」





ルールーがそう口にした。

純粋な想い…。
ただただ戦いを求める。ひたすらに。曇りなど無く。

確かに、それは純粋と言うのかもしれない。





「その純粋な想いの為に失われるものがあるんですよ」





するとホープがそう言った。
咎め、とまではいかないけど…少し非難的な口調、かな。

するとルールーは小さく首を横に振った。





「肯定しているつもりではないの。ごめんなさいね。ただ、私たちはそういうストッパーが掛かるからこそ相手を想うことが出来る。自分の意志を飲み込んでもそれが大きな意味で正しいと信じているから」





自分に望む気持ちがあったとして、そこにリスクや引き換えにするものがあったなら、きっと今あたしたちの周りにいる仲間たちは悩んで、それを飲み込むことも考えるだろう。

例えば争いを好むと言うのは、周りを傷つける事だと知っている。
それは正しいことじゃないと理解して、踏みとどまる。





「我を通すことが相手を傷つけることもあるということですか?」

「どうかしらね。我を通す事も必要だと思うわ」






ポロムがルールーに聞くと、ルールーはきっと答えは無いと返した。

何かの流れがあって、我を通してその流れを変える。
確かにそう言うのが必要な時はあるだろう。

多分皆の中も、元の世界でそういう経験した人がいるはずだ。

あたしやホープだってそうだろう。
コクーンという世界で、皆聖府を信じていた。
パルスの脅威、パージの必要性。
本当は何もわからないのに、それが正しい人々は信じてた。

でも我を通して、その流れを変えた。

もしかしたらホープもそれを思ったのかもしれない。
ホープはルールーに小さく頭を下げた。





「ごめんなさい…ルールーさんの言っている事もわかります」

「そういうのって考えても難しいんだよな。結局何が最善なのかわからなくなっちまう」





こんがらがってきたと言うかのようにザックスが軽く頭を掻く。
まあ誰も自分が間違っていると思って行動はしないだろうから、立場とかで最善なんて変わっていくんだろうけど。

話が難しくなってきたところでそれに終止符を打つようにマッシュがトン…と拳と掌を軽く叩いた。





「考えがえても分からないなら体を動かそうぜ!きっとすっきりするからよ」

「おお、いいね!マッシュは話が分かるぜ!」

「考えを放棄してるだけの気もしますけど…私も賛成です。でも、無茶な特訓には気を付けてくださいね」





頭を使うのはこのくらいにして、体を動かそう。
ザックスも賛同し、少し呆れながらもポロムも頷く。

マッシュとザックスは駆け出して、ポロムとその背中をゆっくり追いかけていった。
ルールーも軽く笑い、同じように。

残ったのはあたしとホープだった。





「なんか今日やけにキッパリ否定してたじゃん」

「えっ、そうですか…?」





ちょっと顔を覗きこむように言えば、彼は少したじろいだ。
あたしは頷き、ふっと笑った。





「ふふ、いや別にいいんだけどね。あたしもホープと同じ。理解出来る気はしないよ」

「…そうですね」





そう、ガーランドの言葉に共感はしないけれど、ホープの言うことには共感出来る。
まあホープの考えにはだいたいそう思うんだけど。

ただ強く否定することってそんなに無いから、ちょっと珍しいなって思っただけ。





「我を通す、か。確かにそれが必要な時はあるよね。譲れない時はあるよ」

「ファルシの言いなりになんてなってたまるか…って我を通しましたからね、僕たち」

「あはは、やっぱりそれ思うよね!うん。我を通す事は時には必要だって思うけど、でもガーランドの我が正しいとはあたしは思わないよ」

「はい…僕も、そう思います。相容れるとは、やっぱり思えない」





ただ純粋に闘争を求めること。
その気持ちに共感することは、きっとないだろう。

それが仲間たちに向くことになるなら尚の事。

守りたい。
そう願うその気持ちとは相反するものだから。

でも、その大切にしてる気持ちを共感しあえる人がいる。
あたしにとっては…あたしは、そのことの方が大きい気がしてるんだ。





「まあ、ホープと向いてる方向が一緒なら、あたしはそれでいいや」

「えっ?」

「思ってること、流れに任せるにしても、我を通すことになっても…ホープと考えが共感できてるなら、あたしはそれでいい」

「ナマエさん…」

「ホープの考えなら信じられる。それにきっと、あたし自分も納得出来るって思ってるから」





ニコッと笑う。うん、それは本心だ。
あたしは、ホープのものの考え方が好き。だからそれを支えたい。

だから、一緒にいるって決めたんだから。

するとホープは目を丸くして、そして少し照れたように笑った。





「ありがとう、ナマエさん」





ホープは笑みを見せてくれる。
その顔は嬉しそうで、そんな風に喜んでくれるのは、なんだかこっちも満たされて。

あたし自身も、嬉しいと思った。



END
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