こんなに会いたい


「光の意思…。そんな大役、僕に務まるとは…」

「心配ないクポ!モグが保証するクポ!」





突然に迷い込んだ洞窟の中。
僕はそこで、喋るモーグリと共に行動する人々に今いるの場所が自分のいた世界とが違う異世界だと言う事を教えられた。





「どのみちこの世界をどうにかしなきゃ俺たちは元の世界に戻れねえらしいんだ。だから一緒に来いよ、その方が安心だろ?それに、知ってるぜ?お前も十分戦えるってな」





サッズさんはそう言って僕に手を差し伸べた。

同じ世界から来たサッズさん。
サッズさんがいた事は僕にとって幸いな事だった。

右も左もわからない状況。
そんな中で知り合いに会えたと言うのは、なにより心強かったから。





「…わかりました。僕なりに出来ることをやってみます。皆さん、よろしくお願いします」





サッズさんがいて、話の通じる人達が共に行こうと誘ってくれる。
それは素直に有り難かったし、助かった。

この世界の歪みを閉じる光の意思が彼らにはあり、そして僕自身にもある。
なんだか僕には荷が重い話に聞こえたけれど、役に立てることがあるならやってみよう。

そんな風に自分の中で色々と決意した僕は、彼らに頭を下げた。





「じゃ、行こうぜ。こんな洞窟さっさと出ちまおうや」





そう言ったサッズさんの声に皆頷き、そして出口を探して歩き出す。
お辞儀を上げた僕は、そんな彼らの背をしばし見つめた。

…見覚えがあるのは、サッズさんだけ…か。

背中を見つめて、そんなことを思った。
そんな事を思う理由は…きっと凄く単純で簡単な話。

…ナマエさん。

それは、僕が誰より一緒にいたいと思うあの人。
今ここに、彼女の姿はない。

まあ…異世界だと言うなら、当たり前なのかもしれないけど…。
サッズさんと会えたこと自体相当運が良い事だったのかもしれない。

…どうしてるのかなあ…。

今傍にいない貴女に思いを馳せる。
…どんなに探したって、この世界にはナマエさんがいない。

手を伸ばしたら、その手を取ってくれた。
…あんなに近くにいたのに、今は、届く事が無い。

なんだか、変な感じだ。
そして…結構、寂しいと思った。

でも、もしかしたら…この世界にいる可能性も、ゼロでは無いのかな…。

そう思った僕は、少し複雑な気持ちになった。

いや、ただでさえあの人は自分の世界から僕たちの世界に飛ばされて大変な目にあってる。
もしもこの世界に飛ばされたら散々ではないだろうか。

でも、僕やサッズさんがいるという事はこちらにいると言う事は…やっぱり。





「………。」





考え込んでいる自分に気が付いて、なんだかちょっと何とも言えない気持ちになった。

…こっちにいてくれたらいいな、なんて…。
多分少なからず思っているよな…僕。

いや、元の世界に戻る方法を早く見つけることが出来ればそれでもいいんだけど…。





「おーい、ホープ!なにしてんだ?」





その時、前を歩くサッズさんに呼ばれた。
そこで皆との距離が開いてしまっていたことにやっと気が付く。





「あっ、はい!すみません!」





つい立ち止まっていていた足を僕は慌てて動かし駆け出す。

ねえ…ナマエさん、僕はまた…貴女の手を握る事が出来るのだろうか。
胸に手を当てて考えたら、きっと僕は望んでいる…。

僕はこんなに、貴女に会いたい。



END
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