君が笑えばそれでいい


ソルジャー服。
目を引く金色のツンツン頭。

それは良く知る、大好きな後ろ姿だ。





「「クラウド!」」





あたしはティファと駆け出し、その背中に向かって名前を呼んだ。

すると届いたその声に彼はゆっくり振り返る。
そして不思議な輝きの青い瞳があたしたちの姿を確かに映した。





「ナマエ、ティファ?」





目が合って、あたしたちの名前を口にした彼。

あたしはティファと顔を合わせる。
きっとふたりで同じ顔をしてた。やったねっていうそんな顔。

あたしたちはクラウドの前まで歩み寄った。





「よかった、やっぱりクラウドだ!もう、探したんだからね!」

「クラウド!会いたかったよ〜!!クラウド〜!!」





普通に再会を喜ぶティファと、両手を挙げて万歳なあたし。
いやでもだって嬉しいもの。その辺の感情は抑えることなく。

すると、そんなあたしたちの様子を見ていた皆もクラウドの元へ集まってきた。





「ナマエとティファの仲間クポ?それなら話が早いクポ!」

「…なんだ、このモーグリ喋るのか?」





ふよふよと自分の目の前に飛んできたモグに少なからずクラウドも驚いた様子。
まああたしたちの世界からしたらこんなのだいぶ珍しいし。

見たところ、クラウドはこの世界の事情には詳しくなさそうだった。
あたしたちもモグに会う前は右も左もわからなかったし、当然と言えば当然なんだけど。





「あのね、クラウド。今私たちがいるこの世界は…」





ティファがクラウドの簡単に今の状況を説明しようとした。
でもそこにWOLが静止の声を掛けた。





「話は後にしてもらおう。魔物がいる」





話しを止めた彼の見据える先には魔物の姿があった。
それに気が付いき、辺りに緊張が走る。

するとクラウドはいつも振り回す大剣をいつものように構えた。





「…下がってろ、俺一人で十分だ」





そしてそう言ってひとりで魔物と対峙しようとする。
その姿を見たティファは呆れたようにため息をついた。





「もう!またそうやってひとりで抱え込む!」





その一方で、あたしと言えば…だ。





「それっ、と!」





ザンッ…!

うん、今のは綺麗に入ったな。
あたしはと言えば、誰よりも早く先に踏み込み、目の前に現れた魔物の一匹に切りかかった。

だって、多分そうした方が動きやすいと思ったから。

一匹仕留め、そうして残りがいた方に振り返る。
するとそこには剣を背に収めるクラウドの姿があった。

それを見てあたしはにんまり。
クラウドに笑いかけた。





「ふふっ、さっすがクラウド〜!」

「…ナマエ」





討伐完了〜。
さっさとケリがついて良かったね。

すると他の皆がこちらに駆け寄ってくる。

そうしてクラウドに感心の目を向けた。





「退けたか。腕の立つ戦士のようだな。ナマエ、君も見事な連携だった。彼の癖をよく知っているのだな」

「へへへ〜」





WOLに褒められ照れ笑いした。
いや、彼こそ腕が立つから彼に褒められるのは純粋に嬉しいのだ。

そうして落ち着いたところでやっとクラウドと話すことが出来る。
ティファは文句を言うように腰に手を当てクラウドを見た。




「クラウド、やっと見つけたんだから!…ねえ、一緒に行こう?知らない世界でひとりきりなんて無謀すぎるよ」

「そうクポ!それにクラウドも光の意思を持つ世界を救える仲間…」

「興味ないね」

「世界の危機なのにクポ!?」





ティファに便乗するようにクラウドを誘ったモグ。
だけどクラウドはその言葉を一刀両断。





「よその世界にも背負い込んで突っ走る奴がいるもんだな」





そんなクラウドの様子にサッズのおじさんが苦笑いする。
そして大人の余裕を持ち、クラウドに言い分を尋ねた。





「お前、クラウドだったな。ひとりで何する気だ?」

「俺はある敵を追っている。決着をつけるべき相手だ」





クラウドの追う敵…となれば心当たりはひとつしかないだろう。
それは元の世界で一緒に旅をしていた仲間なら誰でもわかる話だ。

でも、そこまで聞いてふと違和感。





「一緒に、行かないの?」





あたしはきょとんと、首を傾げてクラウドに聞いた。
すると目が合い、クラウドも目を丸くした。

いやでもそうでしょ。だって絶対一緒に行くもんだと思ってたし。





「クラウドにしたいことがあるってなら、あたし手伝う気満々だったけど…」

「ナマエ…。俺は…」





元の世界だってそうだった。
クラウドがしたいという目的ならば、その力になりたいと自然に思っていた。

手伝うよ、ってあまりに当たり前の事。

すると、そんな様子を見ていたサッズがクラウドの意見を汲みながら説得に入った。





「その敵とやらの居場所のあては?道案内が必要なんじゃねえか?今のところこの世界に詳しいのはこのモーグリだけだ。一緒にいて損はないと思うぜ」





この世界のことに関して、あたしたちは知識に乏しい。
一番事情に詳しいのはモグだ。

それを聞いたクラウドもその言葉に納得したようだった。





「…そうかもしれないな。あてもなく探すよりは…いいか。わかった同行する。ただし、俺の目的の邪魔はするな」

「ああ、邪魔なんてしねえよ。お前の敵なら俺たちの敵なんだろ」





頷いたクラウドにサッズはそうおおらかに笑ってみせた。
なんか本当、大人だって感じ。

まあともかく、これでクラウドも一緒に旅をしてくれることになった。
その決定にあたしはテンションがぐいーんと上がっていくのを感じた。





「やったー!クラウドー!めっちゃくちゃ心強いよ〜!ねえねえクラウド、ここの敵って元の世界じゃ見た事無い奴もすっごく多いよ!だからあとで一緒にマテリアの組み合わせとか考えて欲しいんだけどいいかな!」

「あ、ああ」

「やった!じゃあよろしく〜!ふふ!クラウド!会えて本っ当に良かったよ〜!」





あたしはいつも通り…いや、ちょっと興奮気味ではあったかもしれない。
だってクラウドと再会とかやっぱ嬉しいだろ!

いいんだよ、クラウドだって頷いてくれたんだから!





「おい…俺ぁ、ナマエの尻に千切れんばかりに振り回される尻尾が見える気がするんだが気のせいか?」

「ふふ、あんなのいつもよ」





すると後ろの方でサッズのそんな言葉とそれに頷いてクスクス笑うティファの声が聞こえた。

ええい。千切れんばかりの尻尾だと?
うん、否定はしないさ!

アホ丸出しっぽいけど、そんなもん気にすることなくあたしはクラウドにニッコニコだ。





「ナマエ…」

「うん?」

「…無事で、良かったな」

「うん!」





まあ、クラウドもそう言って少し笑ってくれたから、あたしはそれでいいのです。



END
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