空に響く声


「クポ〜!魔物をたくさんやっつけたのクポ!みんな強いのクポ〜!」

「よっしゃあ!この調子でガンガンいこーぜ!」





新たにこの一行の仲間に加わったザックス。
ザックスは流石ソルジャーと言うだけあってその強さは本物だった。

それにプラスして皆を励まし、勢いをつける持ち前の明るさも何よりの武器だ。





「ナマエってすっげー強いんだな!見た目普通の女の子だし、ビックリしたぜ!」

「えっ、そ、そっかな?」

「おう!動きに無駄が無いし、周りもよく見てる。一緒に戦っててすげーやりやすいよ」

「…えへへっ、ありがとう!」





あたしにも、凄く気さくに声を掛けてくれた。
しかもたくさん褒めてくれた。嬉しくて思わず照れ笑い。





「クラウド!ザックスってめっちゃくちゃ良い人だね!」

「…あ、ああ」





あたしはいつもの勢いのまま、クラウドに話を振った。
クラウドは何だか少し戸惑う…というか、どもっていたけど。

まあやっぱり色々と思う事はあるのだろう。
それは少しずつ、これからじっくり考えていくことだから。

だからそれはそれとして、だ。
今は今で他に、こう、どうしてもちょっと気になる事があった。





「あとはこの雨がやんでくれたら視界も良くなるんだけどな…」

「雨は嫌いじゃないけどこう続くとなあ」





レムとヴァンがそう言ってため息をついた。

そう。どうしても気になる事と言うのはこの天気だ。
雨はやまない。降り続いたまま。

もうずぶ濡れだけど、やっぱこうずっと雨に当たり続けるってのは気分のいいものじゃない。

でもそんな中でも、ザックスの声は前向きだった。





「な〜に弱音吐いてんだよ、ふたりとも。おっ?ほら、見てみろよ?雲が切れてきたぜ?」





ザックスは空を見て、指をさした。
皆の視線が、ザックスの指を追い空を見る。

すると、それから程なく…辺りに白い光が差し込んできた。





「クポ〜!太陽の光が眩しいクポ!あったかいのクポ〜!」

「さっきまであんなに土砂降りだったのに…」





モーグリがくるくると嬉しそうに飛び跳ねる。
そしてティファが驚いたように目を丸くした。

さっきまでの暗さがまるで嘘。
まさに快晴という言葉が相応しい。

空は、すっかりと青々とした清々しいものへと姿を変えた。





「前を向いてさえいれば雨だっていずれ止むんだ。諦めたら何事もそれまでだぜ?だから皆!どんな時でも誇りは手放すな!夢に向かって前進あるのみ!」





ザックスはそう言って皆に笑い掛けた。
まるでザックスが晴れを呼んだみたいな…。

そんなものを見せられたら、皆ザックスに感化されたように表情を明るくさせた。





「そうだね、叶えたい夢があるから私たちは前に進めるんだ」

「ザックスってクラウドとは正反対だよな」





レムが頷き、ヴァンは前向きに感心したようにクラウドとザックスを見比べた。

言われたクラウドは溜息をつく。
その顔に書いてあるのは、多分ほっといてくれよ…って感じかな。

まあ確かにクラウドはこうワッとするのは得意じゃないだろうけど。

でも別に正反対って言うわけじゃない気がする。

するとそんなヴァンの言葉にすぐさま反応を見せたのはザックスだった。





「そんなことないんだぞ、ヴァン。クラウドだってこう見えて胸の奥にはアツ〜い思いを秘めてんだぜ?ま、ちょっと不器用と言うか、人付き合いが苦手と言うか…とにかくイイヤツには違いは無いぞ!」





真っ先に擁護…というより、それはきっとザックスのクラウドへ対する本音。

欠片の迷いなくそう言い切ってくれるザックスの言葉は、クラウドにどう響くのだろう。
今の言葉で、ふたりが信頼しあっているのが凄く良くわかった気がする。





「ふふっ…何でも言い合える仲なんですね」

「…ザックスはこれでいいんだ」





レムに言われ、クラウドは頷きながら小さく微笑んだ。
なんだか嬉しそう。やっぱり、ザックスを前にしたクラウドの雰囲気はいつもより柔らかいような、そんな気がする。





「前向きで明るいザックスには是非みんなを引っ張って欲しいのクポ〜!」

「言われるまでも無いさ。勿論、そのつもりだよ。夢を邪魔する奴らを倒してこの世界を守るんだ!みんなでやり遂げたら、俺たちは英雄だ!」





モグに言われ、ザックスは任せろと言うようにドンと胸を叩く。

英雄。
あたしたちの世界のそれは過去のセフィロス。

ザックスの言うそれは、なんだか眩しく思える。





「ザックス…いいのか?」

「当たり前だ!力を合わせればきっと達成できる!」

「ああ…そうだったな」





共にこの世界で歩いていく。
それを確かめる様に尋ねたクラウドにザックスは笑顔を見せる。
そしてそんなクラウドの顔を覗きこむようにして指摘した。





「だからクラウド〜。そんなシケた返事するなよな〜。こういう時は声を張り上げて、行くぜ!くらい言わなきゃダメだって!はい!やり直し!」

「…わかった。ザックスがそう言うなら」





軽いダメ出し。
ザックスはニッと笑ってそう言って、クラウドはコクリと頷いた。

ん?わかった?
そう思ったのもつかの間。

クラウドはガッとその拳を突き上げ叫んだ。





「行くぜ!みんな!」





大きな声。前向きで強い強いその言葉。
らしからぬそのクラウドの姿に皆がぎょっと目を見開いて驚いた。

あたしも思わず目をぱちくり。
ティファも目を見開いてすっごく驚いてた。

いやだって、なんというか物凄く思い切りよくて。

言うなれば、ど、どうした!?見たいな感じ。





「うーん。なんか、ザックスと会ってからのクラウド、やっぱ雰囲気ちょっと違うよね」





雨が止んだから、雨宿りできる場所を探すのではなく皆の歩くペースも軽やかになった。
多分ザックスの前向きさも手伝ってっていうのもあるのかな。

そんな中、あたしはクラウドと肩を並べて歩いてた。
話題は勿論、ザックスとクラウドのこと。





「え…そう、か?」

「うん。だいぶ。あ、でも別に悪い意味じゃないよ」

「ああ…」

「うん!知らない表情、いっぱい見れた感じ」





えへへ〜と笑ってみる。
うん、あたしはなかなか上機嫌だ。

ひとつずつ、少しずつ、クラウドを知れていくのは嬉しいのだ。

ザックスの言ってた通り、クラウドは人付き合いが苦手でとっても不器用だと思う。
でも優しくて、あったかくて、そう言う部分をあたしは確かに知っている。





「話には聞いてたけどね、実際会ってみて、やっぱり感じたことっていっぱいあったよ。クラウドが大切に思う理由も、なんとなくわかった気がする」

「…そうか」





話してて、やっぱり思う。

特別だという感じ。表情ひとつとっても。
そういう感じが伝わってくる。

だからこそ、あたしも色々思うのだ。





「ね、クラウド。あたしもザックスと仲良くなれるかな」

「…もう既に仲良さそうに話してなかったか?」

「ん−。もっと!ていうかあれはコンニチハ〜みたいなもんだし」

「…こんにちは?」

「こんにちは」





確かにちょっとは一緒にはしゃいだけど、でもあんなの全然だ。

まだ交わした会話と言えば数える程。お互い手探りで話してるような感じだし。
それだけでいい人だなってのはわかったんだけど。

でもそういう雰囲気とかを知って、もっと話してみたいとか思うものじゃない?

すると、そんな意欲的なあたしを見てクラウドは小さく頷いた。





「でも…そうだな。色々話してみるといい」

「ん?」

「ザックスは良い奴だ。本当に…贔屓の目なんか無しに」

「うん」





贔屓の目無しに良い奴、か。
そう素直に言えるのは、きっと凄い事だ。

クラウドにとってザックスは本当に自慢の友人なんだろうと思う。

そんな風にクラウドが言うから、あたしも話してみたいってなるのだけど。





「仲良く、なれるといいな」

「クラウド?」





そして、クラウドはそう言って微笑んだ。
あたしを見て、なんだかとても嬉しそうに。

ちょっぴりきょとんとした。

いやなんだか、本当に嬉しそうだったから。





「…俺は、ナマエにザックスの良さをもっと知って欲しい。それで、その逆も。ザックスがナマエの良いところを知ってくれたら、俺は嬉しい」





優しくて、あたたかい言葉。
彼はそんなことを口にして微笑むのだ。

ああ、なんだかちょっと自惚れていいのかな。

ふたりとも、俺にとってかけがえない。
クラウドがそう教えてくれる気がして。

なんだか、少し照れた。

でも、嬉しい。
だから頷いた。自然と零れた笑みを浮かべて。

するとそれを見たクラウドもまた柔らかく笑ってた。



END
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