宇宙を夢見る男


歩いている途中、クラウドがぱたりと足を止めた。
それに気が付き共に歩いていた面々も足を止めて彼に振り返る。

クラウドは俯いていた。
その顔は何処となく青白いような気がする。

そんなクラウドにヴァンが声を掛けた。





「どうしたクラウド?顔色悪いぞ?」

「なんでもない…気にするな」





心配の声にクラウドは重たそうに足を動かしながら首を横に振った。
それを見てフッと笑ったのはその原因を知るヴィンセントだ。




「ただの飛空艇酔いだ」





そう。クラウドの気分が優れない原因は飛空艇による乗り物酔いだ。

平気、とは言うけれどやっぱりまだ気持ち悪そう。
あたしはクスッと笑い、タッとクラウドに駆け寄った。





「ふふ、本当弱いよね〜。クラウド」





駈け寄って、そう笑いながら彼の背に手を当てた。
優しく触れて、ゆっくりとさすってあげる。

するとクラウドがこっちを見てくれて、だからニコッと笑えばクラウドもまた笑みを見せてくれた。

まぁ顔色は青っちろいけど。





「大丈夫かよ!お前でも酔うんだな。…つっても操縦してたのは俺だからなぁ…スマン」

「あんたのせいじゃないさ」





飛空艇の操縦をしていたサッズはクラウドの症状が乗り物酔いだと聞いて驚き、申し訳なさそうに謝った。
でもサッズの運転って凄く安定してるし、素人感覚でも上手いなあってわかる気がする。
クラウドもそれはわかっているから、サッズに気にしないでくれと言ったのだろう。





「じゃあさ、次が俺に任せてよ!サッズより上手くやるから!」





するとそこにすかさず手を挙げてヴァンがそう名乗りを上げてきた。

彼は飛空艇の操縦とあらば目を輝かせるタイプの人種だ。
けどじゃあ技術があるのかっていうと今のところそういうわけじゃなくて、勢いでやる感じ。

あたし的には操縦の心得があるだけ凄いと思うけど…。

でもそこにクラウドが乗ったら…うん、多分死ぬ。





「…勘弁してくれ。もっと大変なことになる」





クラウドはやめてくれと更に顔を青くさせた。
ヴァンの操縦する飛空艇に乗ったら…って多分想像したんだろう。

いや、多分死ぬとかあたしも思ったけどそんなに嫌なのか。
ちょっとヴァンが不憫…でもなんか可笑しくてあたしは小さく吹いてしまった。





「あはは!ヴァン、残念でした!」

「ちぇっ、やっぱりダメか……ん?」

「ヴァン?」





青ざめるクラウドと悔しがるヴァンにけらけらと笑っていれば、その時ヴァンは何かに気が付いたような反応をした。
首を傾げると、それを教える様にヴァンは指をさした。





「誰かいるな。何か漁ってるのか?」





その一言で皆の視線がヴァンの指差した方へと向く。

誰か???
振り返ってその姿を見つけたその時、あたしは思わず目を見開いた。
多分、クラウドとヴィンセントもだろう。

あたしは思わず声を上げた。





「ああ!クラウド、ヴィンセント!あれ!」

「ああ、見覚えのある後ろ姿だな?」

「間違いない…行こう」





ヴァンが指した方を、というかその後ろ姿をあたしも思わず指差してしまった。
でもふたりは頷いてくれた。

そこにあったのは、あたしたちにとってはよーく見知った背中だった。

クラウドの行こうという声で、皆でその人の元へと歩き出す。
あたしは心なしかちょっと駆け足だったかも。





「コレはだめ…コレもだめ…コレも…ケッ!なんでえ!ガラクタばっかじゃねえか!」

「シド!」





何かを漁る男の背に向かい、クラウドがその名を呼ぶ。

ゴーグルをつけた頭に青いジャケット。
名を呼ばれた男は何かを漁っていた腰を上げてこちらへと振り返った。

その顔を見て確信。いや確信っていうかもうそうでしょって思ってたけど。

こちらに気が付いた向こうも目を見開いてこちらへと走って来た。
だからあたしもふつふつと上がるテンションのまま、その人を迎える様に駆け出した。





「シドー!!」

「おう!ナマエ!それにクラウドにヴィンセント!どこ行ってやがった!」





近づいたら、ぺしぺしと頭を軽く叩かれた。
その笑顔はよーく知ってる豪快なもの。

うん、やっぱりシドだ!




「クラウドやった!本物!」

「あ、ああ」





振り向いてイエイとクラウドに親指を立てたらクラウドは頷いてくれた。
なんかちょっと困惑気味だったけど返してくれたからまあいいでしょうって事で!





「ここで何を?」

「あん?がらくた組み合わせりゃ空も飛べんだろ」





何かを漁っていたっぽいシドにヴィンセントが聞けば、シドはあっけらかんとそう答えた。
するとそれを聞いたサッズが凄いビックリしてた。





「一から作る気か!?」

「おうっ!はぐれちまった仲間を探すんだ」

「なら、もう必要ないな。こうして再会出来たわけだし」

「んぁ?確かに、それもそうか…」





クラウドにそう言われ、シドはそう後ろ頭を掻いた。

うん、そうそう。この大雑把さだよね。
シドってこんな感じ。

なんか久しぶりだなーって嬉しくなっていると、その時突然ヴァンが叫んだ。





「おい!後ろ!」





皆にもちゃんと紹介しなきゃねって思ってたところに、何事!?
そう思ってそこを見れば、シドが漁っていた瓦礫の下あたりに次元の歪みがあるのが見えた。





「ああ!歪み!」

「瓦礫の中に次元の歪みが埋もれていたようだな」

「ジゲンノヒズミぃ?なんだそりゃ?」

「詳しい話はこいつらを倒してからだ」





状況の読めていないシドはひとり首を捻ってる。
でも今はそれを説明してる余裕はない。

ほら、こうしてるうちに色々ぞろぞろ出てきてる!





「ナマエ、いけるか?」

「もっちろん!ていうかあたし的にはクラウドのが心配なんだけど?」

「……。」

「あっは!無理はしなくていいからね!」





剣を構えたあたしに調子を聞いてくれたクラウド。
でも今回はあなたの方が心配ですからってね。

クラウドも言葉が返せなさそうである。
そんな様子が可笑しくてあたしはまた笑ってしまった。





「おう!?なんだ、あいつらを蹴散らしゃいいのか?」

「そーそ!シドはいける?」

「ハッ!こんなもん朝飯前だな!」





シドは威勢良くそう言い切りぐるりと槍を大きく回していつものように構えた。
うん!シドと一緒に戦うの、久しぶりだー!

仲間との再会はやっぱり嬉しいよね。

シドとの再会、あたしは周りから見てもわかりやすくテンションが上がっているのだろうなと思う。
自分でもそう自覚できるくらいワクワクと何だか楽しくなっているのがわかった。



END
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