相性
最近、ちょっと思うこと。
「クラウド、少し、君の意見が聞きたいんだけど…」
「ああ、なんだ?」
クラウドとは少し違う金髪。
しかしとても美しいそれを一つに束ねた彼。
声を掛けられたクラウドは振り向き、彼と話す。
その空気は穏やかで、いい雰囲気だ。
最近、思うこと。
どうやらクラウドは、ラムザとなかなか相性が良いらしい。
「ああ、ナマエ。今クラウドと話していたんだけど、少しこの辺りの散策に行きたいんだ。良かったら君も来てくれないか?」
「うん、あたしで良ければ付き合うよー」
「ありがとう、助かるよ」
ラムザは近くにいたあたしにも気がつき、そう声を掛けてくれた。
優しく、真面目。
人当たりも良く、物腰も丁寧。
うん、ラムザはいい人だよね。
うん、すごくいい人。
たぶん、接した大多数の人がいい人って答えると思う。
それくらいいい人。
クラウドも当たりの良い人には穏やかに接するし、ラムザの方もわりと気兼ねない。
ちょっと意外そうにも思えたけど、実は悪くない組み合わせみたいだ。
「それじゃ、行こうか」
ラムザが先を歩き出す。
私とクラウドもそれに続いた。
「ナマエ、疲れてないか?」
「ん、今のところは。でもちょっと厄介なんだね、このへん」
「ああ、敵が多いな」
しばらく歩いた頃。
クラウドが気遣ってくれた。
探索に出た道は、かなり多くの魔物がいた。
今はまだ平気だけど、近くの敵倒したら一度引き返した方がいいかもー…なんて思うくらいには?
提案しようか考えたその時。
その前に、ラムザがクラウドを見て言った。
「クラウド、あれ、使おうか」
「そうだな」
「あれ?」
クラウドは意図を理解し頷いていた。
あたしは首を傾げる。
するとラムザはこちらを見て笑った。
「ナマエ。ここは僕とクラウドに任せて。すぐこの一帯を片付けるから、そうしたら戻ろう」
「え、あ、うん。戻ろ〜はあたしも提案しようとしてたとこだけど…。え、お任せするの?ふたりに?」
「ああ、すぐに済む。あんたは見ててくれ」
「そ、そう?まあ、ふたりがそう言うなら見てるけど」
クラウドからも何もしなくていいと言われる。
まあ、それならお言葉に甘えて?
あたしは一歩、後ろに下がる。
それを見たふたりは頷き、前に向き直った。
ラムザは手に光を集め始める。
「この手で、守るんだ!」
「ああ、俺たちなら出来る」
ラムザが集めている光は高濃度の魔力だ。
あれは、アルテマ?
その間、クラウドは気を集めるようにぐるりと大剣を片手で回す。
「全てを断ち切る!」
「天空の光よ!」
そしてクラウドが大剣を前に突き出したその時、ラムザが集めた光を大剣に纏わせた。
大剣に光が帯びる。
クラウドは勢いを乗せるよう、体を捻った。
あれは、画龍点睛…。
ただ、今回の竜巻は、高濃度の魔力を纏っている。
「終わりだ」
クラウドは竜巻を放った。
その瞬間、辺りと魔物達が巻き込まれていく。
「必ず勝てる!」
そしてそのタイミングを見計らい、ラムザは魔法を発動させた。
竜巻の中で、激しく輝くアルテマ。
その名は、アルテマストーム。
ふたりの合体技は、見事辺りの魔物を一瞬で一掃してしまった。
「お、おおー…!」
あたしは思わずパチパチパチと拍手した。
いや、圧巻。
今のは凄い。マジで凄い。
「じゃあ、戻るか」
「ああ、戻ろう」
拍手を受けながら、ふたりはこちらに振り返る。
褒められて悪い気はしてなさそうである。
「そっか、アルテマと画龍点睛を合わせるとか!凄いねふたりとも!」
3人並んで、帰り道を歩く。
あたしは真ん中で交互にふたりの顔を見てた。
「あはは、ありがとう。最近、クラウドと行動する時はよく手伝って貰ってるんだ」
「そーなの?」
「ああ。ナマエとは行動しても、その時ラムザも一緒になる機会がなかなか無かったからな。見せるタイミングが無かった」
「あ、言われてみればそうだね?」
クラウドに言われて納得した。
クラウドとは、結構一緒に行動してる。
でも勿論ずーっと一緒ってわけじゃない。
そう言う時、クラウドはラムザと組むことが多かったらしい。
ラムザとアグリアスは長いこと合流出来てなかった…って言うのもあるけど。
あたしとラムザは一緒に出掛けるの久々なんだよね。
「クラウドとラムザは結構相性がいいんだね。息ぴったりだったし」
思ってたことを口にする。
すると、ラムザが小さく笑う。
「そうかい?僕は、ナマエとクラウドの方が相性ピッタリに見えるよ」
「え?」
「……。」
「前から思ってはいたけれど…再会してからは、より一層。なかなか合流出来なくて、離れていたから余計に感じるのかな。前よりももっと、息があってる気がする。互いを大切に思っていると言うか…。信頼しているの、凄くわかるよ」
にこやかに言うラムザ。
ぶわっ…と体が熱くなった。
え、えええええ…!
いや、だって、そんななんか…。
確かにラムザとアグリアスと離れていた期間は長くて、その間にも色んなことはあったけど。
いやそんなこと言われるとは思ってなかったから!
「…そうだな」
「へ!」
その時、クラウドが頷いた。
あたしは思わずぎゅんっと振り返る。
「…俺は、元の世界にいた時から、ナマエのことは信頼してる。この世界に来てからもその気持ちは増えたし、あんたと離れていた期間も、そう言う瞬間はあったと思う」
「…クラウド」
ちょっと、視線を逸らした。
…なんとなく、気恥ずかしくなって。
でも、嬉しくて。
確かにラムザたちと離れてる期間も、色んなことがあった。
クラウドは、たくさん助けてくれた。
戦闘中も、そうじゃない時も。
たくさんたくさん、気に掛けてくれた。
それが大切に思われている、信頼という証なのなら。
こちらもちゃんと伝えたいと思う。
…だって今、俺は、って少し控えめな言い方だったから。
「…あたしも、クラウドのこと、すっごく信頼してるよ!」
「ナマエ…」
えへへ、と笑いながら。
クラウドは少し驚いたみたいにあたしの名を呼ぶ。
でもすぐ「ああ…」と微笑んでくれる。
あたしも、クラウドを助けたい、力になりたいって思った場面、たくさんあった。
お互い様。
…でも、信頼していると。その気持ちが増えたと。
そんな風に言って貰える。
もう嬉しいを通り越して、こんな贅沢、あっていいの。
「そうか。本当にいい関係を築いてるんだね。羨ましいくらいだ」
ラムザはそう言って、また穏やかに笑った。
END