それだけの話


ずっと行方知れずだったラムザとアグリアスが見つかった。

突然入ってきた喜ばしいニュース。
その話を聞いた途端、あたしの隣にいる彼はなんだかそわそわとし始めた。





「あの、ナマエ、僕ちょっと行ってくるよ」

「ラムザたちのとこ?」

「うん…」





ホープはすぐに頷いた。
それは多分、ホープの中でずっと気に掛かっていたことだから。





「ん、じゃああたしも一緒に行く!あたしもふたりに会いたいし」

「それも…そうだね。じゃあ、行こうか」





久しぶりの再会。
それを心待ちにしていたのも本音。

だけど、もしふたりと再会出来る日が来たならば。

きっとホープはふたりに謝りに行くだろうって、そんな予想はついていた。

だからその時、あたしも一緒について行こう。
それもまた、ずっと前から決めていたことだった。





「…そんなことが。それで、今は君が新たなリーダーなのか」

「まだまだ力不足だけどね。気になる事はいくらでも聞いて!」





ラムザとアグリアスの周りは賑わっていた。

まあでも、それはそうだよね。

皆、ふたりのことをずっと心配していた。
ふたりがいない間に旅に加わった人たちも、話を聞いて気になっていたはず。

そんな輪の中で、今はオニオンナイトが新しくリーダーを務めているという話をしていた。
そうなった理由、そこに至るまでの経緯とか。

他にも、伝えなきゃならないこと、話したいことは山ほどある。

リーダーたる彼はなんでも聞いて欲しいとラムザとアグリアスに笑いかけた。

でもその時、ホープは「あの…」と、静かに切り出した。





「その前に…本当に申し訳ないことを。おふたりの合流が遅れたのは、僕のせいなんです」

「「?」」





突然謝ったホープにふたりは不思議そうな顔をした。
まあそんな反応にはなるよね。





「僕は、元の世界の神に意識を乗っ取られ、光の羅針盤を奪ってしまいました…」





そう申し訳なさそうに言う。

自分のせい。
そう…。きっと、そんな風に謝るとは思ってた。

あたしはホープの後ろに回った。
そして、自分より少し小さなその両肩に、ぽすっと手を置いた。





「元の世界でもホープのこと利用した神様でねー、もうほんっと最悪なの!」





そして、背中越しからそう言った。
ホープはこちらに振り向いて「えっ…」と、少しビックリした顔。





「そうそう、ホープからしたらたまったもんじゃないよなあ。それに…いやあ、それを言ったら俺のせいでもあるよ。勝手に自分のもんにしちまったわけだしさ」





すると、なんとなく意図を察したのかラグナが合わせてくれた。
この人は結構、こういう察しがいいのである。





「込み入った事情があったのだな。気にしないでいい」

「こうして会えただけで充分だ」





アグリアスとラムザもそう言ってくれる。
ふたりとも優しい人だから、まあ別にどうなるとも思ってはいなかったけどね。

この話はこれで終わり。

ラムザは「それより、新しい仲間に挨拶しても?」と、話題を変え、自分たちが不在の間に加わった仲間たちとの交流を希望した。

まずは、この場に居合わせているヴァンのお兄さん、レックス。
ヴァンが互いを紹介しつつ、穏やかに話し始める。

ホープもその様子を、ホッとしたような顔で眺めていた。




「ナマエ、だから一緒に行くって言ったんだね」

「ん?」





まずは新しい仲間たちとの顔合わせをってことで、馴染みのあるあたしやホープは一度飛空艇に戻ることにした。
もちろん、「またあとでゆっくり話そうね」ってのは忘れずに。

そうして戻る道すがら、ホープはそう言ってあたしを見上げる。

あたしは首を傾げて返した。





「だからって?」

「そこ、とぼける?」

「べっつにー、あたしもラムザとアグリアスに会いたかっただけだもん。んで、思ったこと言っただけだよ」

「ふふ、…うん、そうだね!」





そう、本当にそれだけの話だ。
あたしは自分のしたいように、自分の思うように言っただけ。

別に、大したことも言ってないしね。

すると、ホープも楽しそうに笑う。

そして手を取られ、繋いだ。





「ナマエ、好きだよ」

「なに急に」

「別に、僕も思ったことを言っただけ」





隣で笑うホープ。
その顔を見て、あたしもクスッと笑う。

なんだそれ、って並んだ肩で軽く小突いて。

まあでも、いつでも君の味方でいたいなって。
そう思った、それだけの話。



END
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