神羅の社長


黒い、シュッとした犬。
突然現れたそれを目にした瞬間、タークスの顔色が変わった。

社長の犬。

それは神羅の社長たるルーファウスの愛犬なのだという。

ルーファウスもこの世界に来ている。
だとしたら放っておくことは出来ない。

そう言ってタークスの面々はこの一行から離れていった。





「ルーファウスかあ…」





曖昧な記憶を手繰り寄せ、彼に関する記憶を探す。

あたしが覚えているのだと、まず、神羅ビルでの初対面。

エアリスを救出して、脱出しようって思ってたあの時。
プレジデント神羅が殺害された直後、社長室から繋がる屋上で初めてその顔を見た。

それからは、ジュノンでの新社長歓迎式典パレード。
海を渡るため、潜り込んだ運搬船にルーファウスも乗っていたんだよね。

目ぼしいのは、そんな感じ。
正直そこまで関わりがあった人物ではない。

でもなあ…。





「うーん…」

「なんだ、唸って」





胸の中にあるもや〜っとした嫌な気持ち。
それを吐き出すように唸れば、クラウドが不思議そうに声を掛けてくれた。





「いや…ルーファウス、来たんだなあって思って」

「ああ…まあ、厄介かもな」

「…うーん」

「どうした?」

「いやーねー…うわーっていうか…ひえーっていうか…」

「…意味が分からない」

「…うん」





あたしも何言ってんだとは思う。
ごめん、ととりあえず謝り、あたしはこの胸の内のモヤをクラウドに話してみた。





「いやあさ、あたしなんとなくあの坊ちゃん苦手で…」

「苦手?厄介だとは思うが、そんな意識を持つほど関わりあったか?」

「いや、関わりはそこまでなんだけど…。でもね、こう…はじめて会った時から、あっ、この人に近づいちゃいけない!って直感がね…」

「直感…」

「直感」





そう、直感。

神羅ビルの屋上であったあの時から。
こいつは多分あかん奴だっていうね…!?





「何言ってんだこいつって思ってるー…?」

「いや、まあ…それでいいと思うぞ。近づかないに越したことはない」

「でしょ!?こうさ…変な裏の読み合いとかも出来ないし…あの人そう言うの凄そう…」

「まあな」

「うう…まあ別に向こうだってわざわざあたしに関わってくるようなことも無いだろうけどさ…」





腹の探り合いとかそう言うのは苦手である。

今のところそう関わりがあるわけじゃないし、別にルーファウスにとってのあたしなどクラウド一行のうちのひとりでしかないだろう。

だから別に、そうそう問題も無いとは思うけど…。





「まあ、何かあったら話してくれ」

「う…?」

「別にひとりで焦ることもない。この間、ナマエが俺に言ってくれただろ?」

「え?」

「俺はナマエと一緒にいるよ」

「!」





優しく、そう言ってくれたクラウド。

前、カダージュのことで色々あった時。
その時にあたしが言ったこと。

ああ、本当単純だな。

でもクラウドが同じように返してくれる。
助けてくれるって、頼っていい場所になってくれるって。

そんなこと言われたら、嬉しいに決まってる。





「じゃあ、頼っちゃうよ?頼るからね、クラウド!」

「ああ」





そう言った時、クラウドも嬉しそうな顔をしてくれた気がした。

タークスは社長の記憶次第でこちらに対しての出方が変わると言っていた。

でも、仲間はいる。
なによりクラウドが味方だ。

それだけでなんとなく、心は元気になれた。



END
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