油断も出来ない


「装備、これでいいかな?やっぱりこっち?」

「いや、そのままでいい。一緒に行くメンバーを考えてもそれでいいと思う。もし不都合があれば俺がフォローする」

「そう?うん、まあでもメンバー考えるとそうだよね。わかった、じゃあこのままにする!」





何人かと話を合わせ、約束していた探索の予定。
今日はクラウドと一緒だったから、行く前に少しふたりで装備の確認をしておくことにした。

これで準備は万全!

ちょうど約束の時間の頃合いでもあるだろう。





「よし!完璧!そろそろ行こっか、クラウド」

「ああ」





約束していた場所へ向かおうと、ふたりで歩き出す。
だけどその時、クラウドを呼び止める声があった。





「兄さん、待って」





足を止め、振り返る。

クラウドを兄さんと呼ぶのはこの世界にひとりしかいない。
そこにいたのはカダージュだった。





「カダージュ、俺に用か?」

「そういうわけじゃないけど、どこか行くなら連れて行ってよ。兄さんの役に立ちたいんだ」

「そう言われても…」





クラウドは困ったようにあたしに視線を向けてきた。

う…ここで意見求めちゃいます???
…まあ、これから行くのは色々計画してた探索だし…って、クラウドが言いたいことはわかる。

でもその時、あたしは若干変な汗をかいていた。

いや、カダージュの視線がですね?
またあんたは兄さんと一緒なの、みたいな…!?

この間、どうしたらクラウドと仲良くなれるかを聞かれた。
それからどうもカダージュの視線が怖い…様な気がする。

いやいや、あたしだって毎回クラウドといっしょにいるわけじゃないぞ…!

まあ…組むことは確かに多いかもだけど…。
でも別にいつも一緒ってわけじゃない。

いやいつも一緒でもあたしは大歓迎…ってそういう話じゃないわお馬鹿!!





「俺には俺の仕事がある。ずっと一緒ってわけにはいかない」

「そう…だよね。無理言ってごめん」





クラウドが諭すと、カダージュは素直にそれを聞いた。

…なんか、あたしの時とえらい態度違くないですかい…。

まあ、カダージュ的にもクラウドを困らせたくないっていう気持ちがあるんだろう。
役に立ちたいと思うけれど、それを押し付けることは正しくないって。

そしてクラウドの方も…ちょっと接し方に戸惑っているみたいだった。





「その…他の仲間とも話してみたらどうだ?みんな、あんたを気にしてる、気の合うやつもいるんじゃないか」





クラウドはそう勧めた。
前にあたしが言ったのと同じような感じだ。





「ああ、うん…考えてみるよ。だからもう行って。兄さん達を待ってる奴らがいるんだろ?」

「あ、ああ…」





カダージュは素直に頷き、そして早く行ってくれと気遣ってくれた。
…なんかやっぱ、クラウドだと妙に素直じゃないです?

でも確かにもう本当にそろそろ行かないと。





「じゃあ、ナマエ」

「あ、うん。じゃあ、またね、カダージュ」





クラウドは頷きあたしに声を掛け、あたしは軽くカダージュに手を振った。
でもそんなあたしに対しカダージュはフンッと顔を背け…。





「あんたはどうでもいい」

「酷いなお前!!?」





露骨な態度にガンッとショックを受ける。

いやわかってる!わかってるけど!
まさか手を振り返してくれるとはこれっぽっちも思ってませんけど!

でもここまで無下にされると凹むって話よ…。





「…大丈夫か」

「…ん、扱い悪いのはまあ慣れてる…」

「……。」





救いはクラウドがちょっと気遣ってくれたってことですかね…。

まあユフィとかバレットとかシドとかその辺ね。
あの辺りからも結構な扱い受けてるからね。

クラウドも心当たりがあるのか微妙に何とも言えない顔をしてた。

でも…まあね。





「……。」





カダージュと別れて、歩き出す。

カダージュ、考えてみるとは言ってたけど…。

多分、他の奴らなんて、とか。
僕は兄さんと上手くやっていきたいのに…みたいなこと思ってそうだ。

まあ、クラウドとも仲良くなれるようにそれとなく応援はしようと思ってはいるけれど…。





「クラウド、カダージュとは探索一緒に行ったりしないの?」

「まあ…今はまだあまりな。その…どう接するべきなのか、掴めなくて」

「あー…あはは、まあそんな感じしたよ」





向かう途中、話題はやっぱりカダージュのことになった。
思った通り、クラウドの方もカダージュとの接し方については色々とあぐねているらしい。





「クラウドとも上手くやれたらいいな〜って思うけど、でももっと他に色んな人とも話して、気の合う人見つけられたらいいなって思うよね」

「ああ…」

「前にふたりで話した時、あたしも同じようなこと言ってみたんだけどね…さっきクラウドも言ってたけどさ」

「…カダージュとふたりで話したのか?」

「あ、うん。ちょっとね」





なんとなく苦笑いが溢れる。
いや、話したって言うか…理不尽?キレられた?

まあクラウドと仲良くなるにはとかそんな話してたとは流石に言わない。

内容的に詳しくクラウドに話すのは気が引けるよね。





「…なんか、案外打ち解けてるよな、あんた」

「はい…?」

「さっきのアレだって、そうだろ?」

「いや、ただぞんざいに扱われてるだけでしょ、アレ」




唐突に言われた打ち解けてるに疑問符の嵐。

クラウドさんは一体何を仰ってるんでしょう…?
どう考えても扱い酷いだけでしょ。

本人に聞いても速攻で否定する未来しか見えないわ。





「いや、というか…カダージュだけの話でもなくて」

「うん?」

「………。」

「クラウド?」

「…はあ」

「え、何の溜め息!?」





何か黙ったと思ったら、急に溜め息つかれた。

ええ!?
どこに溜め息つくとこあった?あたしなんかした!?





「……油断も出来ない」

「え?なに?」

「なんでもない」

「えー…」





今度はぼそっと小さな声。
聞こえなくて聞き返しても、クラウドは教えてくれなかった。



END
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