仲良くなる方法


「ねえ、ちょっとあんたに聞きたいんだけど」

「ん?カダージュ?」





ひとりでぽけーっとしていた時のこと。
声を掛けられ振り返れば、カダージュの姿があった。

あたしに聞きたいこと…。
そりゃまた珍しいこともあったもんだなあと思う。

でも拒否する理由も無し。
あたしは彼に向き合い、「なーに?」と微笑みかけた。





「どうやって兄さんと仲良くなったの?」

「………はい?」





聞かれた質問。
向けた微笑みは一瞬にしてハテナに消えた。





「なにその間抜け面」

「間抜け面…!?」





なんか毒吐かれた。

間抜け面…!!
いや「…はい?」って声は確かに間抜けだったかもだけど面はあんまりではないでしょうか!?ちょっと!!





「どうしたら兄さんと仲良くなれるか、それを聞いてるんだけど」





カダージュはあたしのショックなどどうでもいいのか…というか、ショック受けてるの気付いてます!?

さっさと話を戻されたその反応にもプチショック。
いや、まあ…いいけどね。

もう一度聞かれた質問。
とりあえず、うーん…と、その意味を考えてみる。

どうしたら兄さんと仲良くなれるのか…。





「ええと、兄さんってクラウドのことだよね?」

「当たり前でしょ。他に誰がいるって言うの」

「…すみません。さっきから当たり強いな…」

「何」

「な、なんでもないです…。んーと、クラウドと仲良くなる…」

「うん」

「え、それは…あたしも知りたいです」

「は?ふざけてんの?」

「ええ!?」





キレられた。
しかもちょっとマジトーンな怖いやつ!

いやでもクラウドと仲良くなれる方法とかあたしもめっちゃ知りたいぞそれ!!





「いや、思ったこと言っただけなんだけども…!?」

「は?あんたが知りたい?あれだけ構って、気にかけてもらってて?」

「い、いや、え、そんな怒る!?」

「あんたがふざけた事言ってるからでしょ。何?あんた、あれで兄さんから好かれてないと思ってるの?」

「え…」





あれでって…どれだ。
クラウドから好かれているかどうか…?

…って、自分が誰かに好かれてるとか考えるの恥ずかしいしちょっとおこがましくない?





「いや、そりゃ、まあ…仲は悪くないというか…好かれてるか嫌われてるかで言ったら、好かれてる…とは思う、けど」

「……何その消極的な解答」





話しかける。話しかけてもくれる。
信頼しているし、信頼を返してもらった。

どうかしたのかって、何かあると声を掛けてくれて。
そう…気に掛けてくれているのもわかる。

まあ、関係性としては良好…だとは思いますが。





「あんた、記憶ないんだっけ?兄さんも」

「え?ああ、うん。ヴィンセントとか、あとシェルクやタークス以外はまだ皆欠けてる状態かな」

「そう…」





カダージュは少し、何か考え始めた。

記憶…。
まあ、元の世界であたしたちとカダージュが関わったのはあたしたちの記憶より未来のことみたいだし。

カダージュが知っている未来のあたしやクラウドは、今と違うのかな?

あたしは…クラウドと、どうあれているのだろう…。





「まあいいや。仲がいいとは自分でも思ってるんでしょ?」

「え、ああ…うん、まあ、そう、だね?」

「じゃあ、どうやって仲良くなれたのか、それを教えてよ」

「ええ…」





どうやってって…どういうこっちゃ。

まあ、カダージュはクラウドと距離を縮めたいってことなんだよね?
それ自体は悪いことじゃないし、切っ掛けとか協力とかはしてあげたいなとは思うけど…。

でも、どう仲良くなったかって…。
少し考えてはみたけど、あたしの場合、切っ掛けとかの話でもない気がするんだよなあ…。





「うーん…別にこれをしたから、とかそういうんじゃないと思うんだけどな…。というかこういうの、あたしよりザックスとかに聞いた方が良いんじゃないかなあ…」

「僕はあんたに聞いてるの」

「うう…。うーん…縁があって、一緒に旅して、少しずつだよ。クラウドもカダージュの事は気にしてると思うし、カダージュがクラウドを大切に想う気持ちを持ってるなら、少しずつ距離も縮まっていくんじゃないかな」

「何それ。想ってるだけでどうにかなるわけないじゃん」

「えええ…」





答えたのに、そ、そんなバッサリ…。
いやでも時間はやっぱり大きいと思うけど…。





「ま、まあ…できる範囲の協力はするよ。あたしもふたりが良好な関係築けたらいいなとは思ってるし」

「…ほんと?」

「うん」





そこは迷う事なく頷く。
いやだって、それは本当に本心から思う事だし。





「確かに聞いたからね」

「う、うん…」





確かにって何でそこ強調すんの…。
なにそれ。こわい…。

でも…。





「あのさ、カダージュ…もう少し、周りの皆にも目を向けてみてもいいんじゃないかなと思うんだけど…」

「なにそれ。兄さんとの距離の縮め方がわからないならあんたにも用はないよ。じゃあね」

「ええー…」





カダージュはそう言って去って行ってしまった。

あたし用済み!?
なにそれ地味にショック!!





「ん−…」





カダージュがいなくなってからも、少し考えてみる。

いや、クラウドと仲良くなりたいってのはわかるし、それ自体は悪いことじゃない。

でも…他にも、カダージュのこと気にしてくれてる人はいっぱいいる。
だから、もっと色々他の人とも話すというか、友好関係広げるのもいいのではいかと…。
これだけ人数いるし、カダージュと気の合う人だってきっといると思うんだけど。

でも、口出ししすぎてもお節介かもだしなあ…。





「難しいよなあ…」





ふう…と、息をひとつ吐いた。



END
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