聖晄乱舞


現れた魔物は少し厄介だった。
だいぶ削ったはずだけど、なかなかしぶとい。





「ナマエ、魔力は?」

「ごめん、多分もうあんまり…」





クラウドに聞かれ、ちょっと申し訳なく答える。

一応、戻りのことなんかも考えて、魔力切れには注意をしてる。
だからまだ少しは残ってるけど、でも撃ててあと3…いや2発かも。

そしてそれを叩き込んだところで、多分まだ足りない。

あたしはチャキ…と剣を構え直す。
もう、体力の方も結構きてるんですけどね…!

するとその時、横からスッ…とひとつ前に出た人物がいた。





「クラウド、あれをやってみないか?」





前に出て、そうクラウドに振り返ったのはセシルだった。

あれ…とは?
あたしがそう頭にハテナを浮かべる一方。

ちらっと隣のクラウドを見上げれば、その顔はセシルの意図を察したようにコクリと頷いていた。





「ああ。試す価値はあるな」

「そう言うと思ったよ。それじゃあ、行こうか」

「任せてくれ」





なんだかふたりだけで話が進んでく。

了承を得たセシルはひとり、魔物の方に向かっていった。
クラウドの方はその場で剣を構える。

一体全体、これはどういう作戦で…?

そう困惑しているあたしに気が付いて、クラウドがこちらを見てくれた。
すると彼は、ふっと小さく笑って見せる。





「まあ、見ててくれ」





そんな風に言われたもんだから、うん、と思わず頷いた。

まあ、クラウドとセシルが無茶をするとも思えないし。

見ててくれと言われたなら。
信じて大人しく見てましょうか。

すると、クラウドは掲げた剣に魔力を込め始めた。





「守るための力を、ここに!」





剣に高められていく力。

あ…、この技は。
クラウドが使おうとしている技はわかった。

桜華狂咲。

発動に時間が掛かるけど、決まればかなり強力な技だ。





「光よ集え!」





そして前に出たセシルは先にモンスターに斬りかかる。

素早い攻撃。
あれは、パラディンフォース?





「聖なる力で、永久に刻め!」





舞う様に何度も斬りかかるから、魔物の動きをしばらくは止められる。





「解き放つ…!消し飛べっ!」





そしてクラウドの力が高まった。
クラウドは躍らせるように大きな剣を回し、その魔力を一気に魔物へと解放する。

そのタイミングで、セシルはタンッ…と軽くクラウドの隣に着地した。

並び立った瞬間、最後の仕上げ。





「トドメだ」

「じゃあな」





ふたりは動けない魔物に向かい、同時に技を放った。
それは、魔物を吹き飛ばす威力。

吹き飛んだ魔物は、そのままガクンッ…と崩れ落ちた。





「ふう…、実戦ははじめてだったけど、綺麗に決まったんじゃないか?」

「ああ。いい手応えだった」





綺麗に技を決めたふたりは顔を合わせて喜んでいた。

いやでも今のは見事だった。
そりゃあれだけバッチリ決まれば本人たちも満足だろう。

ていうか…ていうかっ!!





「ナマエ、大丈夫か?」





その時、クラウドが気遣う様に傍に来て声を掛けてくれた。

目の前に来た彼を見上げる。
すると甦るさっきの勇姿。





「か…っ!」

「か…?」

「っ!な、なんでもない!」





かっこいい!!!
って口から出かけたわ!!!

いやだってなにあれ!なにあれ今の!!
めっちゃくちゃ格好良かったんだけど!!

ていうか何!
いつの間に!いつの間にあんな技を…!!





「ナマエ、よければ回復しようか」

「あ、ああ…ウン、ありがとセシル…」





セシルも来てくれて、ケアルを唱えてくれた。
癒しの力で傷と、それとなんだか心も穏やかになってくる。

うん…。そうそう、ちょっと落ち着きましょ。

いやでもマジで。





「ふたりとも凄いね!あんな…!あんな合わせ技!びっくりした!」

「はははっ、少し前から考えててね。そう言ってもらえると嬉しいね」

「ああ、上手くいって良かった」

「うん!超…っ格好良かった!!」





結局は落ち着けていなかった。
握り拳作って、超…って溜めて思わず零す。

するとクラウドは目を丸くして、セシルはいつものように穏やかに笑った。





「はは、良かったじゃないか、クラウド」

「…別に」





クラウドはそう言って、ふいっとそっぽを向いた。



END
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