僕自身の為に


あたしたちはカダージュを追いかけた。
こちらが想っていること、それをカダージュにちゃんと伝えるために。





「いた!クラウド!ザックス!あそこ!セフィロスたちもいる!」





あたしは一緒に走るふたりに伝えるように、先を指さした。
ふたりも頷いてくれた。

カダージュを追いかける道中、あたしたちはモンスターに襲われた。

でも、全員で相手をする必要もない。
だからあたしとクラウド、ザックスでその役を買って出て、皆には一足先にカダージュの元に向かってもらった。

先には皆もいる。
傍ではカダージュが傷つき、膝をついていて…。

セフィロスは正宗を抜き、カダージュに斬りかかった。

クラウドは走る。
そして、その攻撃をガッと剣で受け止めた。





「カダージュ!」

「大丈夫か、カダージュ!」





あたしとザックスはその間に膝をつくカダージュに駆け寄った。

彼は傷を負っていた。
きっと、セフィロスがやったのだろう。

…お前が最後の鍵、なんて。
そんな風に手を差し伸べておいて、結局利用するだけ。

カダージュの気持ちなんて、何も考えてない。

本当に、胸糞が悪い。





「ケアルガ」





あたしは長い詠唱を唱え、最上回復魔法をカダージュに掛けた。
するとカダージュが少し驚いたようにこちらを見る。





「あんた…なんで」

「なんでって、迎えに来たんだから、当たり前じゃん」





ポンと軽く肩を叩く。
するとザックスも同じように頷いてくれた。





「あんたたち…それに、兄さん…」





そしてカダージュの視線は、今自分を庇い、セフィロスの刀を押さえているクラウドの背中へ。
クラウドは力を込め、セフィロスのことを弾いた。

そしていったん距離をとると、カダージュの傍に戻り、彼を見つめて声を掛けた。





「…悪かった。あんたの気持ちをないがしろにして」

「!」

「一緒に戦ってくれたやつが消えるのは嫌だ。ましてや、セフィロスの手でなんて…!」





クラウドは伝えた。

言葉を間違えた後悔。
そして、消えて欲しくない気持ち。

どこか、不器用な言葉。
でも、それは確かなクラウドの想いだ。





「でも、僕じゃダメだった…リユニオン出来なかったんだよ。母さんの力になれなきゃ意味がない!!」





カダージュは叫んだ。

思う結果は出せなかった…。
望みは、叶えられなかった…。

そんな悲痛な叫び。





「馬鹿っ!!!」





でもその直後、そんな叫びを打ち消すように、ひとりの声が響いた。





「意味なんてね…自分で考えるんだよっ!あんたはセフィロスの一部じゃない。セフィロスから分れたものだろ!だったら好きに生きたらいいじゃないか!思念体だからって、それだけじゃないだろ!」

「ユフィ…」





声の主はユフィ。
あたしは彼女をじっと見つめた。

ちょっと泣きそうな顔して、まっすぐに言葉をぶつけるユフィの顔。

普段は自分本位。
でも、本当は誰より誰より、誰かのためになれる子。

ああ、あたしは、ユフィのこういうところが好き。

本気で、まっすぐぶつかるから…彼女の言葉は人に響く。

きっと、カダージュにも。
そして、周りの皆にも。





「どうか無力なんて思わないで。望まれた形とは違ってしまっていても」

「あんたの全てが終わったわけじゃないわ。だから、その心を捨てる必要だってない」

「大丈夫。怖くなんかない…。世界には、沢山の味方がいるの」

「それでも絶望に追いつかれそうになったら、僕たちが一緒にいるから。だから、諦めてしまわないで」





ガーネット、リリゼット、リディア、ホープ。
ユフィに続くように、皆がカダージュに声を掛けてくれる。





「あ…」





皆の言葉は、カダージュに届く。
きっと、彼は思い出している。

此処に至るまでも、沢山、皆が自分に声を掛けてくれたこと。

思念体。
ジェノバの為に生まれた自分の存在意義。

でも、それがカダージュのすべてじゃない。

それ以外にも、カダージュを形作るものはいっぱいあって。
そんな部分に触れていた、皆の言葉。

カダージュは皆を見渡した。

すると、誰もが自分を見て、頷いてくれる。

あたしも、カダージュと目が合った。
だからその瞬間、微笑んで頷いた。





「カダージュの気持ち、聞かせてくれ。お前はどうありたい?」





ザックスが優しく尋ねる。
するとカダージュは目を閉じて、ゆっくりと考え出す。

そして、ぽつりぽつりと呟く。





「僕は、僕なんだ…。生まれた意味を叶えられないなら…もう、僕自身の為に、生きてもいいのかな…?」






そう問いかけるカダージュ。
それに対する、あたしたちの言葉など決まっている。

勿論、と。

見渡す全員が、そうカダージュを肯定する。





「カダージュ殿…」

「ふっふっふっ…見るがいい、傀儡が目覚めたぞ。さて、次は何をする。夢破れたその足で、俺を道ずれにするつもりではあるまいな」





シーモアは、どこかカダージュに同情的にも見えた。
多分、シーモアの目的はセフィロスとはイコールじゃないだろうから…カダージュに何か思う事があった…?

一方でヴァイスはセフィロスを少し煽るように笑う。

セフィロスは何も答えなかったけど。





「…傀儡って…」

「…ナマエ」





ヴァイスの傀儡という言葉に苛立ちを覚えた。

小さな声だったけど、聞こえたらしいクラウドが振り向く。
ぎりっと拳を握ると、カダージュもそれに気が付いた。





「…なんであんたが苛立ってるのさ」

「そりゃ苛立つでしょ」

「…変な奴」





普通のことだと返したら、変だと言われた。失礼な。

でも、傀儡とか人形とか。
そういう人を人とも思わない言葉、あたしは嫌いだ。





「世界はこれより主を変え、お前たちはことごとく、蹂躙されるというのに」

「いいえ、たとえあなたでも、ネロの力なくして以前の戦いを超えることなどできません」

「ならば俺の意志で補えばいい。あの時から、ネロの想いは俺と共にある」





ヴァイスとシェルクが言い合う。

その直後、ヴァイスに力が溢れた。
それは大きく大きく…まるで大きなマシーンを操るかのような、そんな強大な形となって目の前に現れる。

これを、倒さなきゃならない…。

そう思ったその時、誰よりも早くそいつに剣を差し向けた姿があった。





「それこそ、諦めてもらおうか。僕はオリジナルを超えてやる。あんた達の計画は、これで終わりだ!」





それはカダージュだった。
その姿に突き動かされるように、その場の全員が武器を構える。

さあ、行こう。

こうしてあたしたちは、目の前の敵に向かていった。



END
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