仲間って心強い


「あっれ、ナマエとクラウド、何してんのー?」

「あ、ユフィとケット・シー」





カダージュのことについてクラウドと話していた時、たまたまそこを通りかかったらしいユフィとケット・シーに声を掛けられた。





「ううん、ちょっと見回りしてただけ」

「ふーん?」





聞きたかったことは聞いた。
クラウドも、抱えていたことはだいたい話せたのではないだろうか。

それなら、もうそろそろ戻るのもいい頃合いだろう。





「クラウド、そろそろ戻ろっか?」

「ああ…」





声を掛ければクラウドも頷いてくれる。
こうしてあたしたちは、ユフィとケット・シーとも一緒に、皆のいるところへ戻ることにした。





「わかったぞ!そういうことなんだな!」

「び、びっくりした。なんなの、いきなり…!」

「いや、俺はな、こっちには悪い母さんでもあいつにとってはいい母さんなのかもって悩んでたんだけどよ、大事なのはそこじゃねえ。そもそも誰だろうとあいつのことを利用する身内なんてよくねえんだ」

「た、確かにそうかも…」

「あいつにはあいつの人生が、自由があるはずだ。そうだろ、エアリス!」

「うん…!そういうこと!」

「となりゃ話は簡単だ!このまま真っ直ぐセフィロスたちを止めりゃいいって事だな!」





来た道を戻ると、何人かが話している輪を見つけた。

バレットにティファ、それにエアリス。
他にも数人、話し合っている。

近づくと、会話が少しずつ聞こえてきた。

皆、カダージュのことを話しているみたいだった。





「それは、あいつを助けるって事か」





話を聞いたクラウドがその輪に声を掛け、あたしたちは皆の元に近づいた。





「クラウド、ナマエ…」





振り向いたエアリス。
あたしはニコリと微笑み、軽く手を振った。

まあ、ニコニコしてする話でもないんだけど。

ただま、空気が重くなり過ぎないようにね。





「カダージュを助けることかって…そりゃそうに決まってんだろ。そもそもなんだ?お前は反対なのか?」

「…違う」





バレットに聞かれたクラウドは首を横に振った。





「でも俺は、あいつに剣を向けてしまった。そのせいで、あいつは…」

「そう、だったんだ…」





俯くクラウド。
ティファがそっと、寄り添うような返事を返す。





「後悔してはるんですか?」





後ろからケット・シーが聞いてきた。

後悔。
確かに、今の言い方ならその気持ちは汲み取れる。

でも、クラウドの後悔は剣を向けたことだけじゃない。

あたしはじっとクラウドの横顔を見つめていた。
意味的には見守るって感じだったけど、クラウドはその視線に気が付てくれた。

だからあたしはそっと微笑む。
それは、ひとりで抱えなくていいよって意味。

多分、吐き出すにはちょっと勇気がいる。
だけど、支えの手はちゃんとあるからって。

すると、クラウドは頷いてくれた。
そして少し俯いた顔を上げ、カダージュとの間にあったことを話し始めた。





「…俺は、選ばせようとしたんだ。カダージュを受け入れる代わりに、ジェノバを諦めろと」





そう言った時、皆の顔色が驚いたものに変わった。
まあ、そんな反応になるだろうな〜とは思っていたけどね。





「それはまた…急すぎたな」





シェルロッタが言葉を選びながら言う。

急すぎた。
うん、それがまさになのだろうな。

クラウドは俯く。





「俺たちは何も諦めてなんかいないのに…あいつにだけ求めてしまった」

「でも、クラウドは…!」





エアリスはフォローの言葉を掛けようとした。
それは勿論、クラウドだってたくさん考えて向き合おうとしたことをわかっているから。

でもその時。

そこにきっぱり言った声がひとつ。





「そりゃ確かにちょ〜っとムカつくかもね」

「ユフィはん!?」





ムカつくかも。
誰よりはっきり言ったユフィに隣にいたケット・シーがぎょっとする。

あたしも、ちょっと驚いた。

でも、くすっと笑った。
いや流石ユフィだわなんて思ったりして。





「ふふ、おお、ユフィちゃん、流石はっきりモノ申すなあ」

「だってそうじゃん。ナマエだって思うでしょ!なんで自分だけ我慢しなきゃならないのさ。お母さんに会いたいだけなんでしょ?」

「それは、彼ら思念体の本能って話でしたけど…」





あくまでケット・シーは理性的に意見してくれる。
冷静に、思念体だからゆえと、忘れてはならない側面からも考えてくれる。





「確かに本能なのかもしれねえけどよ!子供が親を求める気持ちだって本能だろう!」





そこにバレットの大声。

子供が親を求める気持ちも本能、か。
確かにそれは一理ある話で。

お父さんであるバレットが言うからこその言葉でもある気がする。





「こ、これだからお人よしは…もう〜!」





ケット・シーはううう…と頭を抱えた。





「わかってます?ボクらの記憶は万全やないんです!だから、過ちを犯す可能性だって考えとかなあきまへんのや!」

「うるせえ!そんときゃそんときだ!」

「どうにかすればいいんでしょ!」

「こうなったら梃子でも動かないんですから…」





バレットとユフィ。
ふたりに詰められたケット・シーは更に頭を抱える。

でもそれは諦めというか、折れてくれるというか。

隣をちらりと見れば、クラウドはちょっとたじたじしてるように見えた。

皆カダージュと向き合おうと、懸命に話し合ってる。
あたしはこそっとクラウドに小さく声を掛けた。





「仲間って、心強いよね」





にこっと笑いながら。
するとこちらを向いてくれたクラウドも、少し表情を和らげて頷く。





「ああ、そうだな…」





確かに、クラウドがカダージュに掛けた言葉は失敗だったのかもしれない。

でもそこから、どうすればいいかって皆で考える。
こんなにも心強いことってないよね。

あたしとクラウドがそう話してる中、シェルロッタが悩むケット・シーを見て笑いながら焚きつけていた。





「ふふっ!お前の負けだな。ほら、作戦を出せ。そういうの得意だろう?」

「ううむ…利害が一致せえへんなら、せめて対話し続けるしかないですわ。現状、解決法はそれくらいしかないんと違いますか。ここは根気勝負でっせ。いけますか?」

「おう!根気なら負けやしねえぜ!」



「短気代表のくせに〜?」





威勢よく答えたバレットに突っ込んだ声。
それはちょうど偵察から戻ってきたジェシーのものだった。





「偵察隊、戻ったわ。魔晄炉の動作を確認したの。ゲートのセキュリティは外しておいたから、いつでも突撃できるわよ〜!」

「僕たちも一緒に行きます」

「カダージュの叫びを受け止めるわ。今度こそ、安心できるように」





ジェシーと一緒に偵察に出てくれていたホープやリリゼットもそう言ってくれる。

皆、色んな世界の仲間がこんなにも気に掛けてくれている。

まったく。
カダージュ幸せものじゃない、なんてね。





「…助かる。俺の言葉じゃ、届かないかもしれないんだ。皆、力を貸してくれ」





クラウドは皆の顔を見渡し、そう言ったのだった。



END
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