時に間違えたとしても


エアリスの治療の為、あたしたちは一度、仲間が大勢いる場所まで戻った。

一時はどうなるかと思ったけど、回復が得意な人たちのおかげで大事には至らなかった。

ああ…本当に良かった…。

さて…じゃあ、一安心したところで、もうひとつ気になってること。
あたしはクラウドに声を掛けた。





「クラウドー」

「…うん?」





ちょいちょいっと突いて、ちょっと辺りに見に行きませんかって誘う。
クラウドはすぐに頷いてくれて、ふたりで歩き出した。





「ナマエ…さっき、助かった…。ありがとう」

「うん!どういたしまして」





さっき、とは。
言わずもがな、モンスターの攻撃を防いだことだろう。

いえいえ〜と笑ってお礼を受け取る。

…この辺までくれば、もう大丈夫かな?





「ねえ、クラウド。カダージュと何かあった?」

「…っ…」





皆と少し距離を置いたところで、あたしはクラウドに尋ねた。

すると、クラウドの瞳は揺れた。

…いや、まあ…何かあったんだろうなーってのはわかってるんだけど。
多分、あたしたちが来る前、何か話したんだろうなーって言うのは。





「いやさ、さっきなんかちょっとクラウド変だったから。何かあったのかなって」

「……ナマエ」

「うん?」

「…俺が剣を向けたから、カダージュは向こうに行ったんだろうな…」

「えっ?」

「いや…それだけじゃなくて…」

「クラウド?」





零れ出る、クラウドの言葉。

さっき、確かにクラウドはカダージュに剣を向けた。
それを見た瞬間、カダージュが自棄になったように見えたのは、あるかもしれない。

だけどそれだけじゃなくて、と…クラウドの言葉は続く。





「…俺、余計なことを言ったのかもしれない」

「余計なこと?」





そりゃ一体…?

よくわからなくて首を傾げる。
するとクラウドはちょっと言いにくそうな顔。





「クラウドもしかして、自分のせいでとか、自分のこと責めてる?」

「……。」





クラウドは何も言わなかった。
それはつまり、肯定…なのかな。

余計なこと…。
なにか失言があったってこと?

聞いてないからそれが本当に余計なことかの判断は出来ないけど…。

でも、どっちにしろあたしがしたいことは変わらない。





「ねえ、クラウド。言ったよね。あたし、クラウドの心配とか不安とか、いっぱい聞きたいって。それで一緒に考えたいって。…もしかして、話したばっかなのに忘れちゃった?えー!それはナマエちゃんショックなんですけど!」

「い、いや…忘れてない。ちゃんと覚えてる…でも」

「お、そっか!よかった!まあ、もしクラウドが何かやらかしちゃってたとして」

「やらかして…」

「あはっ、でももしそうだとしたら、あたしはそっからどうするか一緒に考えるだけ」

「…ナマエ」





少しだけ、おどけつつ。
重い空気になりすぎないように。

するとクラウドはその言ってしまった余計なことについて教えてくれた。





「…俺、カダージュと少し話したんだ」

「うん。それで?」

「それで…あいつに、選ばせようとして…」

「選ばせる?」

「…お前を受け入れる代わりに、ジェノバを諦めろって…そう、言った」

「…おお…、そりゃまたなかなかドストレートに言ったね」





ジェノバを諦めろ。

なーる。
カダージュが言ってた諦めろってそういうことか。

意味がここでやっとわかった。





「ふーむ…そっか。まあ、諦めるって言うのは、ちょっと強い言葉だったかもしれないね」

「そう、思うか…?」

「まあねー。諦めるって、結構強い気持ちがいると思うから。それが大切なものであればあるほど」

「…そんなつもりじゃなかった…。…でも、言い訳だな…」

「ううん、それはわかってるよ。別に傷つけようとしたわけでもない。クラウドだって、どうやって向き合うか、カダージュのこといっぱい考えたんだよね。その事実は、カダージュにとっても嬉しいことなんじゃないかな」

「…あんたは優しいな」

「別に普通だよーと言いたいところだけど、あはは、まあ、そうかもね。いや、別に皆も怒ったりとかはしないと思うけど。でも、やっぱりあたしはクラウドのことは贔屓しちゃってるかもね」

「え…?」

「クラウドの優しいところ、たくさん知ってるから。いいなって思う事の比率、きっと周りの人よりちょっと多くて。味方したいなって思っちゃう」

「…ナマエ」





へへへっ、と笑う。
するとクラウドの表情も、少しだけ和らいだ。

事態を悪くさせようとしたわけじゃない。
そんなのは百も承知。

時に間違えても、一緒に考えたいと思う。

力になりたいと、心から思う。





「大切なものであるほど、諦めるのに強い気持ちがいる…か。そうだな…。俺たちは何も諦めていないのに、あいつにだけそれを求めるのは…酷な話、だよな」

「まあ実際問題、ジェノバに会わせてあげるって難しいしね…。でも、ここから出来ることあるとは思うんだ。カダージュ、エアリスがやられた時、ちょっと動揺してた。こっちを気に掛ける気持ち、多分持ってるんだよ」

「…でも俺はその時、あいつに剣を向けた。そのせいであいつは向こうに…。あいつがいなくなった切っ掛けは、やっぱり俺が作ったから…」

「じゃあ、どうする?あたしは、クラウドの気持ち、誤解させたままなの嫌だな。フリオニールたち、母さんだけとの繋がりじゃなくて、自分たちがカダージュの力になりたいって思ってること伝えたいって言ってたよ。クラウドが向き合おうと思ったことも、きっとそれと一緒にプラスになると思うんだ」

「ああ…とりあえず、皆とも話さないとな」

「うん。まあ、あたしはクラウドと一緒にいるよ」

「ああ…」





微笑めば、クラウドも頷く。
じゃあそろそろ戻ろうかと、あたしは来た道を戻る。

でもその時、もう一度だけクラウドに呼び止められた。





「ナマエ」

「ん?」

「…ありがとう」





おずっと。
少しだけ照れくさそうに、クラウドはそう言った。



END
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