悪手


「セフィロス…何しに来た」

「そうだよ。僕を見捨てたくせに、どういう風の吹き回し?」





現れたセフィロスを睨むクラウドとカダージュ。
セフィロスはただ、妖しく笑った。





「クックックッ…やはりお前が最後の鍵だったのだ。母さんを呼ぶためのな」




セフィロスはカダージュに手を差し伸べる。

カダージュが、ジェノバを呼ぶための最後の鍵…?
自分に手を差し出すセフィロスを見て、カダージュは高い声で笑う。





「アハハ!間違いを求めたなら許してやる。さあ、母さんのところへ行こう」





カダージュはセフィロスの元へ戻ろうとする。

ちょっ…折角こっちに戻って来れたのに…!
あたしは慌てて止めようとした。

でもその前に、もっと早くカダージュを止める声があった。





「だめ!」





えっ…、とその声の方に振り向く。
するとそこには慌ててこちらに駆け寄ってくるエアリスの姿があった。





「行ったら利用されるだけ…きっと元に戻れなくなる!」





必死に呼び止めるエアリス。
現れた彼女の姿に、カダージュの瞳が一瞬揺れた気がした。





「セフィロス!もうカダージュを巻き込むな!それともこれがあんたの意志なのか?そんな奴じゃなかっただろ!」





ザックスもエアリスの言葉に重ねるようにセフィロスを止める。
でもそんな声を掻き消す様に声を張り上げたのは…カダージュだった。





「うるさい!どうでもいいよ!あんたたちが何してくれたって言うんだ。僕には…。あんたは、母さんじゃない」





カダージュはエアリスに背を向ける。
そしてセフィロスの元へと歩み寄っていく。

そんな姿にセフィロスはまた薄く笑った。





「クックックッ…良い子だ」

「させない…!」





エアリスはセフィロスに向かって魔法を放った。
それはいとも簡単に防がれてしまったけど、こちらが攻める一手になる。

そうだね、させない。
何としてでも止めなくちゃ!





「続け!」

「了解っ」





エアリスの魔法をセフィロスが防いだ瞬間とほぼ同時に剣を抜いていたザックス。
剣を振るった彼に合わせるようにあたしも走り出す。

クラウドも、フリオニールもガイも、その場の全員で武器をとってセフィロスに向かった。

でも、やっぱりセフィロスは強い。
生半可な攻撃じゃ、いとも簡単に弾き返されて…。

そして、こちらの隙を逃さず的確に突いてくる。





「ぐっ…」





ザックスが咄嗟に攻撃を剣で防ぐ。
でもその際、多分少し攻撃を食らった。

そうして生まれた新たな隙。
直後、セフィロスはエアリスの元に向かっていく。

嘘ッ…!





「エアリスッ!!」





あたしは手を伸ばして叫んだ。

振りかざされる正宗が、やけにスローに見える。

でも、駄目だ、間に合わない…!

無情に光る刃。
セフィロスの一撃は、エアリスを捉えてしまった。





「エアリス!!」





ザックスが慌てて駆け寄る。





「あ…」





倒れたエアリスの体。
それを見たカダージュが動揺したのが見えた。

そんな彼が気になりつつ、でも今は…!
あたしも急いでエアリスの元に駆け寄った。





「エアリス…っ!しっかりして!!」





あたしはエアリスの傍に膝をついた。
そしてすぐさま回復魔法を唱える。





「セフィロス、あんた…!」





ザックスが鋭くセフィロスを睨みつける。





「か、母さんを馬鹿にするから…バチが当たったんだ!」





セフィロスの隣にいるカダージュは酷く動揺していた。
でも、今いる自分の立ち位置を正当化しようとする。





「カダージュ!!」





その言葉にクラウドが剣を構えて怒鳴った。
それを見たカダージュは完全に悲観したように叫ぶ。





「ほら見ろ!やっぱりお前らは敵だ…仲間だなんて、嘘じゃないか!!もう、あんたたちなんて信じない…全部、めちゃくちゃにしてやる!」





そうしてカダージュはその場に機械型のモンスターを召喚した。

カダージュ…。





「それでいい。行くぞ、カダージュ」





セフィロスはカダージュを誘う。
そうしてモンスターだけ残し、ふたりはその場から姿を消した。

折角こっちに戻ってきたのに…。

それに、エアリスが負傷して…。





「俺は、そんなつもりじゃ…」





その時、クラウドが苦しそうにそう俯いたのが見えた。
剣を構える手も落ちて、刃先が地面を見る。

…クラウド…?

まるで後悔でもしているような。





「エアリス!」

「エアリス、しっかり!」





傍ではザックスと、それにガイも来てくれてエアリスに呼びかけ続けていた。

エアリスの治療をするにも、まずは残ったモンスターを何とかしないと…。
クラウドの様子も何だかおかしいし…。

あたしはどこも怪我をしていない。
まだ、全力で戦える。

ザックスはさっきちょっと負傷しただろうし、それなら一旦、エアリスは彼らに任せよう。





「ザックス、ガイ…あたし、あいつ倒してくる。エアリスのこと、お願い」

「おう、…頼む、ナマエ」

「こっち、任せて」





了承してくれたふたりに頷き、あたしは急いでモンスターの元へ走った。
対峙しているのは、フリオニールとクラウド。

でもクラウドの方は、何か気に病んでみたいに集中しきれてない。





「はあ…ッ!」

「っ…ナマエ…」





クラウドに放たれた攻撃。
あたしは剣を振るい、彼の前に立ってそれを防いだ。

そして剣を構え直しながら、彼に呼び掛ける。





「クラウド!今は集中だよ!」

「クラウド、頼む、戦ってくれ!でなきゃ、エアリスを助けられない…!」

「あ、ああ…」





フリオニールとふたりで言えば、そこでクラウドはやっと状況を思い出し、剣を構え直す。

セフィロスよりは全然厄介じゃない。
3人で戦えば、すぐに片は付けられる!





「よし、いくよ!」





3人並んで構えた剣。
あたしは声を掛け、合わせるように3人でモンスターに向かった。



END
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