眼帯


「おお…眼帯だ」





顔を合わせると、すぐにその変化に気が付いた。

いつも、右目の傷を隠すように掛けられているサングラス。
でも今はそれが黒い眼帯となっていた。





「おおー、イメチェンだね!」

「まあ…たまには気分を変えてみようと思ってな」

「うん!いい感じじゃない?いいと思うよ!」





ちょっと近づいて、へえーっと見上げた。

うん、でも、いいと思うって本当に本音。
いつものサングラスも似合ってるけど、そっちも悪くないなって思った。





「眼帯かあ、考えたね。そういうのもいいじゃん」

「そうか」

「うんうん!よっ、アーロン!かっこいいぞ!」

「…お前な」





本当にいいと思ったから、素直に褒めてた。
でもだんだんいつもの通り、おふざけも混ざっていって。

アーロンは呆れ溜め息。
あたしは「ふふふ」と笑った。

でもま、こうして見ているとなんとなく意識がその隠されている目にいった。

サングラスにしろ眼帯にしろ、身に着けるのはそこにある傷を隠すため。

あたしはもう少し近づいて、そこにそっと手を伸ばした。





「痛くはないんだよね?」

「もう痛くない」





アーロンはすぐに答える。

もう、か…。
10年前、出来た傷。

そろ…っと、触れたまま。

何だかそんな風にしていると…。
その体勢…構図でちょっと、連想される。





「あははっ、キスも、しやすそう」

「……。」





笑いながら、悪戯っぽく。
うん、これは完全にふざけてます。

そうして傷に触れた手を離すと、今度はぐっとアーロンの方に詰められた。





「試してみるか?」

「へっ…」





いつもあるサングラス。
近づくと、かつん…と、少しだけ触れるから。

顔を傾ける。
でも、その必要がない。





「…冗談だ」

「いたっ」





ぴしっと、おでこを弾かれた。

鈍い痛みにそっとさする。
いや本当、地味に痛いぞこの野郎。

まあ、おちょくってるのがバレたからだけど。

むっ…と睨みつける。
するとアーロンはフッと笑ってた。

…なんだか心なしか勝ち誇ったような…。

…なんか悔しいんですけど。
あたし、負けん気強いのかな?

それにちょっと…。
同時に、あ、しないのか…って、ちょっと残念に思ってる自分がいるのもなんか…。

それなら、もう…ええいっ…!

あたしはくっ…とアーロンの赤い衣をこちらに引いた。





「…しないの…?」

「……。」





多分、言ってることは恥ずかしい。
うん、だいぶ恥ずかしい!

でもそう聞いたら、眼帯のない片目が少し見開かれた。

ふふん…!
やったぞ、してやったり!

いやもう、自分でテンションわけわかんなくなってるんだけど…。

すると、アーロンの大きな手が頬に触れた。





「…したいのか」

「…アーロンは?」

「…さあな」





近づく。
それに合わせて、きゅっと目を閉じる。

すると、ふっ…と唇に触れた。

短い時間。
感触が離れて、そっと目を開く。

そこに映ったのは、眼帯のおかげで柔らかく細めた片眼が見える…アーロンの顔。





「フッ…確かにしやすい、かもな」

「…さいですか」




END


歌舞伎記念。
眼帯もありだね…!?と思ったので、という話。

最初は原作沿いの方の番外編を書こうかなと思ったのですが、オペオムの方で。
あとがきを設けたのは、どうしてこれをオペオム設定にしたかという事を書きたくて。

実は原作沿いの方ではキスシーンの描写は本編での1回しか書かないって決めてるんです。
私の中の謎のこだわりなんですけど…。(笑)

いや、あの瞬間以外でしててもいいんですけど…。
あの瞬間が最初、って言う方がいいかなって気持ちもあって。

その辺私の中でも曖昧なんですけど。
まあ書く気がないってのが理由ですかね。

オペオムは本編の続きの設定ですし、本編後って方が書いててしっくりくるのもあります。
こっちのほうがいちゃいちゃ出来るので。(笑)

という、クソどうでもいい話でした!
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