この世界で見たもの


あたしたちは、新たな地形に辿り着いた。

そこは人工的な場所。
そしてあたしたちの星を語るおいて、避けては通れない…あの重要な施設だった。




「おいおい!魔晄炉じゃねえか!いったい誰が呼び出しやがった!ここでも神羅みたいに世界の力を汲み上げてんなら止めねえと!」





バレットが叫んだ。
そう。そこは魔晄炉だった。

確かに、星のエネルギーを汲み取っているのなら、不安定なこの世界に置いては一分一秒を争うような状況かもしれない。

だけど…。





「落ち着いて、バレット。こんなに静かなんだから、動いてないよ」





エアリスがバレットをなだめた。

人工的な機械施設。
でも、不気味なほど静か。

確かにこの感じなら、稼働しているってわけではなさそうだった。





「この施設について、詳しいのかい?」

「ああ。動力を汲み上げる施設だ。でも、俺たちの知ってるものとは違うな…」





エドガーに聞かれ、クラウドが説明する。





「動力に関する施設なら幾つもあるんだろう。ここは別の場所にあるものなんじゃないか?」

「その通りです」





パパリモの問い。
それに答えたのはシェルク。

視線はシェルクに集まり、彼女は詳細を語る。





「ここは零番魔晄炉。皆は知らないはずですから」

「零番?まさか…」

「ヴァイスや私たちの押し込められていた…ディープグラウンド。その場所です」





尋ねたクラウドを見て頷き、そう言ったシェルク。

ミッドガルは、壱番から八番までの魔晄炉が稼働し、その電力を補っている。
一般的に知らされていない、零番魔晄炉…。

そこが、シェルクたちのいた場所…か。





「呼び出したのはヴァイスでしょうね。今の彼なら魔晄炉から世界の中枢にアクセスし、世界を乗っ取る事すら出来るはず」





シェルクはヴァイスの思惑を予想する。

初め、ヴァイスは記憶を失っていたらしい。
でも戦いの最中、それを取り戻すに至った。

その予想が正解であることを、カダージュは教えてくれる。





「そうだよ。セフィロスはそのつもりであいつを引き入れたんだ。僕なんて、もう用済みさ。抜け駆けされるに決まってる」

「ですが、ヴァイスがあなたを残して行った理由は…」





カダージュの口調はどこか卑屈だ。
いやま、無理もないかなって思うけど…。

シェルクはそんなカダージュを慰めるように言葉を探す。

その様子にバレットがじれったそうに後ろ頭をガシガシ掻きながら大声を出した。




「ったく、いつまでも拗ねてんじゃねえ!母ちゃんに会えたとこで、どうなるかわかんねえんだぞ!」

「わかってるよ。リユニオンして、ひとつになるんだ。そうしたら、僕らは永遠に母さんと一緒だ」





ジェノバに会えたところで、どうなるかなんてわからない。
でもカダージュ自身は、わかっていると言う。

それを聞き、パパリモとバレットは驚いたように目を丸くする。





「ひとつって…まさか概念の話じゃなく、本当に一体化するもりなのか?」

「おいおい…本気か?そういう話だったのかよ?」

「あんたたちには関係ない。受け入れないなら、ほっといて」





ふん、と顔を背けたカダージュ。

ただ会いたいじゃなくて、一体化する…。

それって、なんか…い、いいのかなあ…。
だって一体化した時、カダージュ自身はどうなっちゃうのって思うんだけど…。

いや、難しいことよくわかんないけどさ。

でも、今こうして、自分の意思を持って話せているのに。





「連れて行けばいさ。いずれ決着をつけるんだ。目の届くところにいてもらおう」

「ああ。近くにいれば、有事の際も手が打てる。このまま進むぞ」





エドガーとアーロンが冷静にそう言ってくれる。

まあ確かに進むしかないわけで。

カダージュがどうしたいか、あたしたちがどうするべきか。
それを考えるにも、一緒に行くが吉、か。





「では、こちらへ…」





唯一、この場所について知るシェルクに案内を任せる。
こうしてあたしたちは、零番魔晄炉の内部を進んでいく事にした。

その際、あたしは少し辺りを見渡しながら歩いた。





「ナマエ、どうした?」





すると、そんな様子を気に掛けてくれたクラウドに声を掛けられる。
あたしはくるりと振り向いて答えた。





「ミッドガルの魔晄炉の中って、こんな感じなんだなあって思って」

「魔晄炉の中?」

「うん。あたし、ミッドガルの魔晄炉は入ったことないから」

「ああ…言われてみれば、そうだったな」

「零番を知ってるのはシェルクだけだけど、雰囲気は似てるんだよね?海底魔晄炉とかならあたしも行ったことあるけど、でも、海底魔晄炉はまたちょっと違う感じだよね」

「そうだな。じゃあ、感想でも聞いておこうか?」

「んー、なんか凄い」

「適当だな」





クラウドはふっと笑った。
うん、いい顔。

でも適当なのはお互い様さー。
クラウドだって感想聞いてきたのは適当だろう。

だから結局ふたりでくすりと笑ってた。

あたしはミッドガルに住んでいたけど…。
まあ住んでいても神羅勤めの魔晄炉整備担当でもない限り、魔晄炉に近づくような機会はないだろう。

クラウドやバレットやティファは、魔晄炉の爆破ミッションで内部に潜入したことがあるからね。

だからまあ、見たことのないあたしとしては、物珍しいなあと、ちょっと眺めて見たくなったわけだ。





「ねえ、皆、カダージュのこと気に掛けてくれてるね」

「…ああ」





話を変える。
やっぱり今は、カダージュのことを考える。





「…カダージュの目的は、受け入れがたい」

「うん」

「ジェノバは世界に災厄をもたらす…。記憶が曖昧でも、そこは…わかる」

「そうだね。ジェノバとカダージュを会わせるのは、止めなきゃならないことだと思う」

「ああ…。でも、ナマエが言ってたように…カダージュとの、元の世界でのことは俺もわからない…。敵対したような記憶はないから」

「うん。元の世界でも色々あったかもしれないけど、でも、こっちの世界でも色々あったから。元の世界のことだけがすべてじゃない。この世界であったことも本物だから、そこからも考えたらいいんじゃないかな」

「…そうだな」

「案外さ、記憶戻ってもクジャとかカイアスみたいになれたりしてね」

「…どうだろうな」





戦ったこと、あるのかもしれない。
失っている記憶がどんなものかはわからないけど…。

この世界で見たことだって本当のこと。

今、こうしてそこにいるカダージュを見ていて…。
あたしは上手くやれたらいいのになって、そう感じてる。

初めて会った時は、なんだかよくわからなくて、危険かもなんて思ったりもしたけど。

色々見てて、そんなに悪い奴でもないのかもって。





「あ、こっちであったと事と言えばさ、そういう意味で言うと、あたし、クラウドに対しての気持ちとかもこの世界に来てから変わったり、新しく思ったことあると思うんだ」

「…俺に対しての、気持ち?」

「うん。この世界で色々気付いたことあるよ。ほうほう、こーゆー面もあるのかぁ〜みたいな?」

「ちょっと待て…なんだそれは」

「あはは!別に悪い意味じゃないよー?」





ちょっと微妙そうな顔をしたクラウド。
それを見てあたしは笑う。

そう、例えば色んな世界の色んなタイプの人がいて。
そういう人たちと接してる姿とか。

あと、ザックスとかと話してる姿とか。

そういうの、色々。

うんうん。
本当、悪い意味ではないですからーって。

この世界で一緒に過ごして、話して、抱いた…ここで得た気持ちも全部大切なものだ。

思い出せない記憶。
未来の事はわからないけど。

今、知っている元の世界での記憶の自分よりもっと…あたしはクラウドを好きになっている。

ふふ、と笑う。
だってなんとなく、楽しくて、嬉しくて。

まあそこまでは口に出来ませんけど。





「…でも、そうだな。俺も、ナマエに対する気持ち、きっとこの世界で変わった部分あるかもしれないな」

「それは、いい意味で?」

「ふっ…さあ?どうだろうな?」

「ちょ、ええ!?変な意味なの!?」

「ははっ、まあ、悪い意味なら、こんな風に話したりしないだろうな」

「………そう?」





からかわれた。
でも、クラウドがちょっと楽しそうに笑ってくれたから、まあ良しとする。

こんな風に話したりしないって、それも素直に嬉しいし。

……本当単純だな、自分。

だけど、クラウドもきっと…良い意味で、変化したって言ってくれてる。





「もし、元の世界ではカダージュと敵対するしかなかったとしても、この世界ではそうならなかったなら、それは喜べることなんじゃないかなって思うよ」

「そう、かもな」





クラウドはまた少し色々考えてるみたいだ。
でもゆっくり、頷いてくれる。

状況が違う、この世界だからこそ得られたもの。

きっとそれって、色んなことがあると思う。





「どうしたらあいつを受け入れられるか…少し、考えるよ」

「うん」





そう言ったクラウドに、あたしは頷いた。



END
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