私の知る君、貴方の知る君
「あたしは悲しい」
真顔。
真面目な声で言う。
「…ナマエ?」
「ん?どうした?」
そんなあたしを見てふたりの優しいお兄さんが気に掛けてくれた。
クラウドとザックス。
まあ、ていうかこのふたりがいるから言ってるんだけど。
あたしはじっ、とザックスを見た。
「ザックスはさ、エアリスとはよく会ってたんだよね」
「え?ああ、まあな」
「ティファとも、会ったことあったわけじゃない?」
「ん?おう、ニブルヘイムに行ったからな」
「…で、何故かユフィとも知り合いだったんでしょ」
「あー、宝探しに付き合わされてな」
「………。」
「ど、どうかしたか?」
急に黙ったあたしにザックスが困惑する。
クラウドも同じような顔でこっちを見ている。
あたしは顔を両手で覆い、ワッと悲しんだ。
「あたしだけザックスに会ったことないのなんか凄い悲しい!!!」
心からの叫び。
そんなあたしを見たふたりは「「は?」」と声を揃えてきょとんとしていた。
「だって!!あたしミッドガルに住んでたんだよ!!なのにどゆこと!?エアリスはともかく、ニブルヘイムやらウータイやら、なんでそんな離れた土地のティファとユフィと知り合いなのにあたしスルー!?」
「いや別にスルーしたわけじゃないけど…まあでも、なんつーか確かに皆とは縁はあったよな」
「そうでしょ!すごい巡り合わせ!クラウドもだし!でもあたしとは縁がなかったと…!!」
「いやいや、でも今こうして異世界では会えたんだから縁が無かったわけじゃないだろ」
「それはそうなんだけどさぁー…」
むー、と少しばかりむくれる。
そう。
確かにこの異世界では会えた。
それは縁があった、ということになるだろう。
まあちょっと大袈裟に話してる部分はある。
ノッてきて変なテンションになってるのは認めよう。
だからあたしはふう…と息を吐き、一度落ち着きを取り戻した。
「でもさ、もともとクラウドとエアリスに共通の知り合いがいるってだけでも驚きなのに、ユフィまでってどういうことさと思ってさ」
「ああ、それは俺も思ったな。ティファは置いておくにしてもユフィはな」
「でしょー?」
クラウドもそこには共感してくれた。
ティファと会った時はクラウドもその場にいて…まあ、例の事件の時だから。
あたしも話は聞いてたし。
でもさ、そこにきてユフィよ。
あたし以外女の子みんな会ったことあるって一体…みたいなね。
「ナマエ、何番街に住んでたって言ってたっけ」
「七番街だよ」
「そっか。んー、俺は八番街とか伍番街スラムに行くことが多かったかな」
「エアリスと会ってたなら伍番街スラムはそうだよね。伍番街はあんまり行ったことないけど…でも、八番街はそこそこ行ってたよ」
「へー!そうなのか!じゃあ案外すれ違ってたりはあったかもな。俺、結構八番街でも仕事してたんだぞ。モンスター退治したり、スパイ捕まえたり。フフン、なんか噂とか聞いたことあるんじゃないか?黒髪のカッコイイソルジャー!とかさ!」
「いや、ないかな」
「…‥即答すんなよ」
いや、そりゃ冗談だけどさ…とちょっと項垂れたザックス。
それが面白くてあたしは笑った。
クラウドも少しだけふっと笑ってた。
まあでも、そんなことを思ったのは…。
「まあでも、おんなじ街にはいたんだよね。クラウドもザックスも。そう考えたらなんとなく嬉しいなって思ったから。だから、会えてたら良かったのにって思っただけ」
「ああ…」
「おう、そうだな!」
ミッドガル。
生まれた時から過ごした、都会の街。
広くて、人もいっぱいいる。
でも、そんな中でも。
同じ時間、同じ場所にいた。
そう考えるのは、嬉しくて、ちょっと楽しいよね。
「ねーね、クラウドとザックスの神羅時代の話とか聞きたいなー。田舎出身同士で気が合ったってのはクラウドから聞いたんだけど」
「お、そうそう。モデオへイムって北の土地での任務でさ、辺境の地って歩き辛いだろ?でもこう、俺とクラウドは割と場慣れしてたっていうかさ」
「アイシクルエリアの方だからな。そっちの方に行った時、ナマエは雪に足を取られてつんのめってたよな」
「…クラウド、いらん事バラさないで」
「凄い悲鳴上げてたからな。シドに助けてもらってただろ?」
「だからバラすなあー!!!」
「ははは!流石ミッドガルの都会っ子!」
クラウドのせいでザックスに笑われた。
確かに「ふぐおう!」みたいな悲鳴あげたけど!
シドが槍を差し出してくれてそれ掴んで事なきを得たけど!
「…ていうかあれクラウド見てたのか」
「ふっ…まあな」
「くっそう…後でクラウドのあーんなことやこーんなことも話してやるー…」
「いや、何を話す気だ」
「ないしょー」
「ははは!仲いいなあ、お前ら。うん、でも俺も色々聞きたいし、よっし!俺もクラウドのあーんなことやこーんなことナマエに教えてやるよ!」
「え!ほんと!?」
「な!?ちょ、ザックス!?」
クラウドが慌て出す。
あは、ちょっと珍しい展開!
でも、神羅時代のクラウドを傍で見てた人の話って貴重!
これは嬉しい!!
めっちゃ楽しみ!!
つーかとっても有難い!!!
「へへへ、昔のクラウドのあーんなことやこーんなこと、楽しみ〜!」
「…その言い方やめろ」
「えへへ!」
ふざけてたら、クラウドは「はあ…」と息をついた。
でも、すっごく楽しみなのは本当。
だって好きな人のことならいくらだって知りたいでしょ。
まあそんなことは声に出しては言えないけどね!
「ていうか、クラウドも話すんだよ!」
「え?」
「ザックスの話!教えてね!」
「ふっ…あーんなことやこーんなこと、か?」
「あは!うん!そういうこと!」
END