うかつな彼女


特に探索の予定もなく待機していた時、ガイがこちらに走ってきた。

またこの世界に新しく人がやってきたかもしれない。
だから一緒に来て欲しい、と。

そう聞いて、断る理由などない。

クラウド、バレット、ティファ。
それとレノにルード。

声が聞こえる範囲に居合わせたのは、偶然にも全員、あの星の出身者。

あたしたちはガイに連れられ、今マリアとリノアと共に待っているというその人の元へと向かうことにした。





「新しい人、どんな人だろ?」

「うん、気になるね。マリアとリノアが一緒にいるって聞いてるけど」

「…ガイは俺たちに話しかけに来たからな」

「ん?じゃあ、あたしたちの星の仲間ってこと?」

「あ、そういうことなのかな?」





向かいながら、クラウドとティファと話す。

待機しているとき、あたしは今と同じようにクラウドとティファと一緒に雑談していた。

飛空艇の近くだったけど、ガイは真っ直ぐにあたしたちのところにやってきた。
それはつまり、あたしたちの方が都合がいいと判断したからじゃないかと。

もし心当たりがあるなら、飛空艇の中に呼びに行くかもしれないしね。

ガイはちょっとだけ口下手だ。
それに急いでるみたいだったから、なんとなく聞きそびれちゃって。

そうこうしていると、何やら前方が騒がしくなってきた。
これって…戦闘してる音?

そう気が付いた瞬間、クラウドが一足先にタッと駆け出した。





「え!あ、クラウド!?早!!」

「ナマエ、私たちも行こう」

「うん!」





あたしとティファもクラウドを追って走り出す。
後ろを見ると、バレットやタークスのふたりも音に気づいたらしく、同じように走り出していた。





「あっ!」





走った先には、神羅の兵器みたいな機械型モンスターがわんさかいた。

そのうちの一体がその場にいた人影を狙おうとしたその時、いち早く駆け付けたクラウドが剣を振りかざして一撃で仕留めた。

おお、クラウド格好いいー!!
いつもながら惚れ直すね!!

でも、襲われかけたのは誰だろう?大丈夫だったかな。
あたしはその人に目を向ける。

するとそこにサラッ…と茶色いポニーテールがなびいたのが見えた。

えっ…。

一瞬言葉を失った。
だけどまだ、気を抜いていい場面じゃない。





「うおおおおっ!!」

「はあッ!」





バレットが銃撃し、ティファが回し蹴りを決める。

まだまだ、モンスターはたくさんいる。
あたしもチャキ…と剣を構えた。

すると、すぐ後ろから声がした。





「おい、ナマエ。タークス様ふたりでフォローしてやるぞ、と!」

「うむ」

「っ了解!」





レノとルード。

ハイハイ、じゃあお言葉に甘えまして!
ふたりの援護を受け、あたしは思いっきり前に踏み込んだ。

タークスのふたりとも連携とか、今更ながら、ちょっと慣れてる自分が不思議。
これぞまさにこの世界だからこそって感じだよね。

そうして全員で総攻撃を仕掛け、辺り一帯のモンスターは制圧することが出来た。





「みんな、ありがとう!」

「おう!無事で安心したぜ!」





戦闘が終わり、お礼をくれたリノアにバレットが笑っていた。

そしてやっと、新しく来たという人物と正面から向き合うことが叶う。

見覚えのあるポニーテールの女性。
その顔を見た瞬間、ティファが目を見開いた。





「あなた…ジェシー!?どうしてここにいるの!?」





そう。ジェシー。
そこにいたのは、アバランチのひとりであるジェシーだった。

さっきポニーテールを見た時、まさかって思った。
…そこではモンスターが多すぎてちゃんと確認出来なかったけど。

でも、やっぱり…やっぱりジェシーだった。





「えっ?そんなに驚くこと?それより…いつからタークスと組んでるの?神羅は私たちの敵じゃなかった?」





ジェシーはタークスのふたりに警戒を見せた。
まあ、そりゃそうだよなあ…。

そしてその様子にマリアが「ああ、やっぱり…」とちょっと肩を落としていた。

多分、ジェシーと出会ったマリア、リノア、ガイはその話の流れからレノとルードと先に会わせたらややこしくなるかもと心配してくれたのだろう。

ああ、だからガイがひとりであたしたちを呼びに来てくれたのか。
そこで色々繋がって、成る程なあと納得した。





「…事態は複雑だ」

「あー、その、なんだ…ここは違う世界だからなぁ…」

「え?今、なんて言ったの?」





ルードとバレットが口を開く。
その言葉にジェシーはきょとん。

いや、まあ違う世界てなんだそりゃって話だもんね。
しかも神羅と共闘て…。

ジェシーにとっては無茶苦茶すぎるわ、この状況。
…いやあたしたちにとっても無茶苦茶は無茶苦茶だけどさ。

すると口下手、説明下手のふたりに代わるように、ティファが簡潔な説明をしてくれた。





「あのね、ジェシー。信じられないかもしれないけど、ここはミッドガルのある星とは違う世界なの。彼らは組織じゃなくて個人の考えで世界を救うために戦ってくれてるのよ」





必要な情報を上手くまとめてくれるティファは流石だ。
でもその説明を聞きながら、レノはやれやれと息をつく。





「…別に仲良しこよししろ、なんて言ってないぞ、と」

「そんな言い方しなくても…!」

「こっちだって仲良くする気なんかないよーだっ!」





折角ティファがちょっと好意的に説明してくれたのにひねくれた返しをするレノ。
あたしはティファの肩に手を置き、その背中越しからレノにベーッと舌を出した。





「ジェシー。こいつらのことはひとまず後回しにしてくれ」





そこでクラウドが口を開いた。

あたしはティファの肩から手を離し、隣に立っているクラウドに振り返る。
クラウドはタークスとの話を一度置き、今この異世界の状況をジェシーに説明し始めた。





「この世界も俺たちの世界と同じく滅びの危機にある。ここを大切に想う仲間の為にも…あんたの手を借りたい」





そうだ、ジェシーにも一緒に来てって、そう言う話もしなくちゃね。

ジェシーは敵じゃないし、そもそも友達だし。
こんなところでひとりにするわけにはいかない。

それに色々と技術を持ってる人だから、来てくれたら絶対色々助かることも多いはず。

あたしはタッとジェシーに駆け寄ってその腕に抱き着いた。





「ねっ、ジェシー!一緒にいこ!」

「あら、ナマエ。抱き着いて来て随分熱烈な勧誘じゃない?」

「まあね!優秀な人材は逃さずスカウトしないと!」

「へーえ?ふふ、嬉しいこと言ってくれるじゃない」

「えへへっ!あのね、ジェシー。ここにいるマリアやガイ、リノアも違う世界から来た人たちなんだけど、そういう仲間が他にもいっぱいいるんだ。だから紹介するよ」





そういえば、違う世界の仲間も勿論だけど、ユフィとか同じ世界の仲間でもジェシーにははじめしての人多いよね。
その辺のことも紹介したいし。

そう考えてたらワクワクしてきた!

そうしてジェシーを見つめると、ジェシーはクラウドの顔をじっと見ていた。

多分、まだジェシーにとってはにわかに信じ難いことばかりだろう。
戸惑い、困惑、きっと色々あるはず。





「正直、ひとつも信じられないけど、クラウドが冗談言うわけないわよね。…バレットとティファ、それにナマエもいるんだもの。喜んで協力するわ」





ジェシーは頷いてくれた。
その言葉にあたしたちは勿論歓迎を示す。





「やった!」

「ジェシー…ありがとう」

「助かる」

「ああ!こっちでも頼んだぜ!」





歓迎の言葉にジェシーは笑う。
その辺りであたしはジェシーの腕から手を離し、元のクラウドの隣の方へと戻ってきた。

すると、ジェシーは再びクラウドに視線を向け、そしてお礼を伝えた。





「ねえ、クラウド。さっき助けてくれてありがとう。これって…きっと偶然じゃないわよね」

「さあな。とにかく、無事でよかった」

「ふふ、これからもよろしくね!」





こうして、新たな仲間ジェシーが加わった。

久々のジェシーとの再会。
あたしは嬉しくて、歩きながら結構上機嫌だった。





「ふっふっふーん♪」

「御機嫌だな」

「へへへ、わかるー?」

「そりゃ、鼻歌歌ってればな」





飛空艇に戻る道、クラウドが声を掛けてくれる。
まあ確かにふんふん♪してりゃ楽しいのは丸わかりだろう。





「にしてもさっきのうじゃうじゃ数多かったねー。どんだけ湧いてくんだっての!」

「まあな。こちらの数が多かったのは幸いだったか」

「あっ、そういえばさ、さっきレノとルードに手伝ってもらいながら一個試したことがあって、あとでクラウドともやりたいんだけど」

「ああ、少し見えた。俺も試してみたい」

「やった!ほら、あのルードの地走りでやったのをさ」

「破晄撃を代わりにするんだろ?」

「そうそう!やっぱそれ考えるよね!クラウドならわかってくれると思ってた!レノの方はあたしが何か応用できる魔法でやれるかなって考えてるんだけど…」

「俺が二役やるのもありじゃないか?まあ、どっちも試してみればいい」

「うん!じゃあ後でまた探索行こっか!」

「ふっ…、ああ、わかった」





クラウドが軽く笑ってくれた。

うっ、好き…!

その一瞬でそう思うあたしは本当だいぶキてる。
はい、自覚はあります。





「ねえ、なんかナマエとクラウド、ずいぶん仲良くなってない?」

「「え?」」





その時、そんな会話の様子を後ろから見ていたジェシーに言われ、ふたりで振り返る。

ずいぶん仲良く…。

そんな風に見えたのかな。
今は別にいつも通りに話してただけだったから。





「うーん、まあ、旅とかもしてきたし、かなあ?」

「……。」





あたしは少し考えながら言う。

まあ、自分でも結構仲良くなれたよね…とは思う。
じゃなきゃ探索一緒に行こうとかそんなこと言わないし。

…というかあたしはジェシーと一緒にいた頃より確実にクラウドに向けての感情増えてるけど。
…そこはとりあえず置いておこう。

クラウドの方もちらりと見てみる。
すると、向こうもこちらを見ていて目があった。

クラウドは何も言わないけど、だけど否定もない。
もし何か不満があったとしたら、それは絶対言うだろうから、クラウドも関係が良好だと思ってくれているのはわかる。

まあ、信頼して、それを返してもらえていると言う自覚は持てていると思う。

うん、今それを再確認できたから、これはかなり嬉しいぞ。





「ふーん?そうなの」





ジェシーは何か考えるような顔をし、ひとり納得したように頷いた。

ふーん?とは…一体。

ちょっと困惑。
でもすぐ、「さ!早く行きましょ、飛空艇!」って肩を叩かれたから、まあいいけど。

うん、まあ早く皆にジェシーの紹介はしたいよね。
それはあたしもすごく楽しみ。

こうしてこの旅に、新たな仲間…ジェシーが加わったのでした。



END
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