あの日の大聖堂


「立派な建物だね…」





足を踏み入れた建物。
オニオンナイトはその内部を見渡し、そう呟いた。





「ルクセリオ大聖堂…。呼び出したのはブーニベルゼだろうな」





ライトはこの場所の名と、誰が召喚したのか、その心当たりを口にした。

ルクセリオ大聖堂。

それはその名の通り、ルクセリオという街にあった聖堂だ。

光都ルクセリオ。
終わりを待つだけとなった世界で、中心とも言えた都市。

そしてその街は、万能の神ブーニベルゼを崇める教団が街を治めていた。

大聖堂は…その奥深くで、神様が新たな宇宙を創造していた。
最後の日の、ブーニベルゼとの…決戦の場所でもあった。





「嫌な予感がする…ここに魂を捧げさせるつもりなのかな」

「ヴァニラ…」





ヴァニラは辛そうに俯いた。
あたしはそんなヴァニラに寄り添った。

するとヴァニラは顔を上げ、小さくだけど笑みを見せてくれた。

クリスタルから目覚めた時、死者の声を聞く力が備わり、聖女として崇められていたヴァニラ。
あの時、利用されかけたからこそ…ヴァニラは不安が募ったのだろう。





「大丈夫だ。あの時みたいに俺たちで止めてみせるからな」





そんな様子を見たスノウは明るい声で励ました。

最後の日、スノウはピンチに駆けつけてくれた。
500年ぶりのヒーロー参上。

あの時、頼もしくて、嬉しかったの覚えてるな。

うん。
でも、そうだよね。

今、あの時の皆、こうして一緒にいる。

それに、他の世界の皆だって。

あの時よりずっとずっと、頼もしい。





「そのためには、大いなる光の魂を解放する必要がある…」





ミンウが言う。

ブーニベルゼの目的。
それを果たせれば、事はきっと動き始める。





「うん。あの人のことを…。けど、どうしてだろう。あの人と繋がりがあったのかな」





大いなる光の魂の正体は、皆が忘れている彼のこと。

オニオンナイトは考える。
ブーニベルゼは何故彼の魂を解放したいのか。





「相手は神だ。個人としての価値よりも、彼の持つ特性を重んじているのかもしれない」

「…君達の話を聞く限り、相手はどうも狡猾な神のようだな」





レインズさんが今考えうる可能性を口にすれば、ミンウは少し嫌悪の反応を見せてくれる。

狡猾…。
うん、本当…。

あたしたちが願ったり、祈ったりする…そういう想像をする神とは程遠い。

あれは結局、自分の望むままに…そういう存在だから。





「だが、ナマエや私はホープを取り戻したい」

「うん。何としてでも」

「ああ。それは全員が同じ思いのはずだ。奴が企んでいるのは明らかだが…まずは要求に従う」





あたしとライトは顔を合わせて頷く。
きっと、ふたりで思い出していることは同じだってわかったから。

ヴァニラ、セラ、ホープ…。
利用される皆を救いたくて、助けたくて。

そして、自分も含め…自分の気持ちに嘘はつかず、誰かをひとりにしないように。





「うん、私たちのリーダーを…だね」

「そしたら奴をぶっ倒す!」





ヴァニラも頷き、スノウも拳を叩いて賛同してくれた。

うん。
前だって、皆で力を合わせて倒した。

だから今度だって、絶対に未来は掴み取る。





「とはいえ、大いなる光の魂について手掛かりはあるのか?異なる世界に隔離されているはずだろう」





そして、現実的な話。
レインズさんは今の時点でわかっている大いなる光の魂の手掛かりを話す。

彼は、今あたしたちがいるこの世界とは違う…そんな世界にいるという。





「…方法がわからなければ、ブーニベルゼなる者も呼びかけたりはしないだろう」





ミンウは言った。
方法があるからブーニベルゼは呼びかけた、と。

その意見にはあたしも同意だった。





「うん…きっと、何か方法はあるんだと思う。方法はあって、そのために人を駒にするの」





ブーニベルゼはそういう神。

かつては皆、駒にされていた。

解放者たるライト。
ユグドラシルを通し、力を蓄えさせられていたあたし。

…造り替えられ、神の目となり、器にされたホープ。





「ナマエ…」

「…!」





その時、ライトに手を握られた。
えっ、と見れば、ライトはそっと握りしめていたあたしの手を解いた。





「そんなに力を込めたら痛いだろう…少し、力を抜け」

「…うん」





どうやら無意識に強く手を握っていたみたい。
爪が食い込むほど…ぐっと強く。

怒りが滲む。

肉体を種子に還し、書き換え、造り直し、育て上げ…。

13年を、13回。

ブーニベルゼがホープにしたこと。
都合よく利用し、役割を終えればその魂など見向きもしない。

何度思い出しても、怒りしかない。





「手掛かりはずっと前から僕らの手の中にあるのかもしれない。前にも光の羅針盤が共鳴してあの人を映し出してくれたんだ。同じように光の羅針盤を頼りにすれば何かわかるかも。皆に呼びかけてみよう!」





オニオンナイトはそう言ってくれた。

確かに一番手掛かりに近いのは、きっと光の羅針盤だろう。
皆に呼びかけ、探ってみようと。





「うん、お願いします」

「ナマエ。ホープもあの人も、必ず助けよう」

「…ありがとう」





頭を下げると、オニオンナイトは「顔上げて」と言いながら強くそう言ってくれた。
その意見に全員頷き、あたしたちは大いなる光の魂の元へ、辿り着く方法を探し始めた。



END
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