一緒に帰ろう


ライトの羅針盤がスノウの元へと導いてくれた。
そんな知らせを受けたあたしはセラと共にその場所に向かった。





「スノウ!」





駆け寄り、セラが呼ぶ。

俯き立ち尽くすスノウの周りに皆がいる。
セラに気づき道を開けてくれた皆の厚意に甘え、セラはスノウの前に立った。

あたしは、少し後ろ。
ライトやヴァニラ、ファングと並び、その様子を見守った。





「セラ…。ごめんな、俺…」





スノウはセラに頭を下げた。

その様子は、さっきまでより少し落ち着いているような。
なんとなく、憑き物がとれたようにも感じる。

今までの、何も話してくれずに拒絶するようなことはなく、少し話が出そうな感じ。

一足早く合流していたライトたちが上手く話をしてくれたからかもしれない。
それならあとは、セラが一番の適任だろう。

セラは謝ったスノウに首を傾げた。





「なんのこと?いなくなって皆に心配をかけたこと?記憶を独り占めしたこと?」





セラの質問にスノウは黙ったまま首横に振った。
その謝罪の理由を口にするのを躊躇っているみたいに。





「違うの?それなら一緒に謝ってあげたのに」





セラはにこりとスノウに笑った。
その笑顔はいつも通りで、きっとスノウには眩しく映っただろう。

でも…そんなスノウの様子を見ていたら、あたしはなんとなく察した。

やっぱりスノウは…知ったんだ。
記憶を取り戻して、セラのこと…。





「セラ。俺は、お前の命を…」





スノウは恐る恐る、苦し気にそう口にした。

ああ…やっぱりそうだった…。
そこで確信に変わる。

ただ、スノウが知らないのはそれをセラ自身も知っているということ。





「時を変えて、命を削ったのは私。スノウのせいじゃないよ」

「そんな…知ってたのか…!」

「うん。ずっとね。こっちの世界では不思議なことじゃなかったから」





セラは自分がどうなったかを、もうずっと前から知っていた。
スノウはその事実に驚き、そしてまた謝罪しながら苦しそうな顔をした。





「ごめん、セラ…!辛い思いをさせたよな…。どうしてお前があんな目に遭わなきゃならないんだ…どうして…!!」

「お願い。謝らないで。全部、私が自分で決めたことなの。スノウがそうやって閉じこもってたら私…スノウのところに帰れなくなっちゃう」

「セラ…!!それも知って…」

「私ね、魂だけになっている間もスノウのこと見てたんだよ。ひとりにならないで。ずっと一緒にいるから」

「セラ…ありがとう…!」





少し、まだあたしたちの知らない未来の話も混じっていたように思う。

だから全部はわからないけど…。

でも、セラの言葉はスノウに届いた。
そこでスノウの瞳にも、光が差したのが見えた気がする。

もう、スノウは大丈夫。

そう感じたあたしたちも、傍に寄ってスノウに声を掛けた。





「ようやく聞き入れる準備が出来たか?まーた突っ走りやがって」

「すっごく心配したんだから…。もう絶対、こんなことしちゃダメだよ」

「ライトがぶん殴るんじゃねーかってヒヤヒヤしたぜ」

「セラに任せると決めたからな」

「あはっ、でも本当に良かったよー」





順に、サッズ、ヴァニラ、ファング、ライト、あたし。

ひとりひとりに声を掛けられた面目なさそうに笑う。
それはもう、ちゃんとスノウにこちらの声が届いてるって証拠だった。

そして、落ち着いたところでライトが切り出す。





「さて…記憶の断片を渡してくれ」





スノウが受け入れられたように、きっとあたしたちも受け入れられる。
どんな未来であろうと、希望は捨てないから。

あたしたちの顔を見渡すと、スノウも頷いてくれた。





「ああ、分かっ…!?」





でも、その時、スノウはその場に蹲った。
そしてその周りには何か禍々しい力が満ちていく。





「スノウ!?」

「近づくな!混沌が溢れている」





セラが慌ててその肩に触れようとしたけど、レインズさんがそれを止めた。





「でも、スノウが!」





混沌…。
こんな禍々しい力…どうしてスノウの周りに…。

するとスノウは苦しそうにしながらライトに呼びかけた。





「ライトニング…いや、解放者…!俺の頼みを聞いてくれ…!記憶の断片は俺の中に封じている…これを取り戻すには…!」





スノウは記憶の断片を自分の中に封じた。
それを取り戻すという事は、つまり…。





「まさか、君は…!」

「なるほどな…このバカ!」





事を察したミンウが苦い顔をすれば、ライトもその意味を理解した。

ううん…。
あたしたちにもわかった。





「何も…倒せとは言ってねえだろ…!いい感じにやってくれよ…」

「おそらく混沌の流出を抑えることが出来れば記憶の断片も取り戻せるだろう。ただ、そのために…」





レインズさんの見解。
つまり、この状態を何とかするには、スノウと戦わなければならない…。





「ちーっと、おとなしくなってもらう必要があるって事だな?」

「ファング!」

「こいつがちょっと戦ったくらいでくたばるわけねーだろ」





真っ先に武器を構えたのはファングだった。
ヴァニラが一瞬止めたけど、でもそれが出来るのは信じているからこそ…か。





「ああ、そうだな。底なしの体力バカだ」





続いてライトも剣を構えた。
するとその様子を見て、ミンウはふっと微笑む。





「ふふっ、そうか…。みな、彼ならばと信じているのだな。私も居合わせた者の責任として、戦いの後は全力で治療に当たるとしよう」

「わっ、それ凄く有難いかも!それなら万全だね!」

「ニコニコしながら言うんじゃねえよ、ナマエ…」





ミンウが治療してくれるならその後のケアはばっちりでしょ!

サッズに突っ込まれたけど、あたしは「へへっ」とおどけて笑った。
だって、頑丈なのは恋人であるセラのお墨付きでもあるし。

それにサッズだって「これもある意味、信頼ってことかもしれねえなあ」って頭を掻きながら言ってたし!





「世話掛けて悪い…加減できるか分かんねえからよ…みんな、思いっきり戦ってくれ!!」





そして、スノウも拳を構える。
それを見たら、少し渋ってたヴァニラなんかも覚悟を決めてた。





「もう…しょうがないな!」

「待っててね…スノウ。必ず助けてあげるから!」





セラも弓を構える。
その姿にスノウも頷く。

あたしも、いつでも魔法を発動できるように手のひらに魔力を集めた。





「スノウ、ホープの事探してくれてたんだよね。それなら早く帰ってきて、また一緒に探してよ」

「はは…おう、了解。ちゃんと、一緒に探すよ、ナマエ」





そしてそんな風に呼びかける。
スノウは笑って答えてくれた。

レインズさんから聞いた。

スノウは、ホープの手掛かりを探して沢山動いてくれてた。
混沌に触れてしまったのも、それゆえだから。





「いくぞ、みんな…私たちの記憶を取り戻す!」

「スノウ、一緒に帰ろう!」





最後はライトの掛け声と、セラの呼びかけ。
こうして、あたしたちはスノウを信じ、その戦いへと身を投じたのだった。



END
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