仲間だから


「ライトニングに、ナマエ…君たちがそうなのか」

「えっ?」

「何を知っている?」

「声が、君たちを呼んでいた。こちらへと導くように…と」





フリオニールたちの元の世界での仲間…。
白魔導士ミンウはあたしとライトを見てそう言った。





「辿っていくと良い。私には運命が見えるのだ」





この世界に新たに現れた地形…ミシディアの塔。

そこはかつてフリオニールたちが大切な仲間を失った場所だった。

しかし、ここは似て非なる異世界。
この場所でフリオニールたちは、失った仲間であるミンウとの再会を果たした。

運命が見えるというミンウは言う。

声が聞こえたと。
そしてその声は、あたしとライトを呼んでいる、と。





「ライト、心当たりある?」

「…あると思うか?」

「デスヨネー…」

「お前だって無いんだろう?私もないよ。だが…」

「何であっても無視は出来ない、よね」





あたしにもライトにもその声は聞こえない。
心当たりだってなかった。

だけど、もしもそれがあたしたちの記憶やホープやスノウに繋がっているのなら。

何にだって食らいついてやる。

あたしたちにはミンウに頼み、彼に導かれてその声を追っていくことになった。





「ミンウ…だったな。声はまだ続いているのか?」





しばらく塔を進むと、ぴたりとミンウが足を止めた。

どうしたんだろう。
そんな疑問を抱き、ライトが声を掛ける。

するとミンウはこちらに振り返り、ゆっくりと首を振った。





「いや、それがはたと止んでしまった。もしや、すでに…?」





どうやら声は止まってしまったらしい。

ああ、だから足を止めたのかな。
そう納得したけど、ミンウ自身も何か気になっている様子。

彼が腕を組み、ふむ…と考える仕草を見せたその時。

突然、周りの景色がぶあっと変化した。





「な、なんだ今のは!」





サッズが驚いて声を上げる。

いや、あたしも驚いた。

な、なに…!?

突然禍々しくなった景色。
いや、今のって景色が変わったっていうよりかは、足元からひずみに吸い込まれたみたいな。

現に辺りを見渡すとそこはひずみの中みたいだった。





「見ろ!!」





その時、同じように辺りを見渡していたファングが何かを指さした。

その場にいた全員が振り向く。
するとそこには倒れたひとつの人影があった。





「スノウ!!」





ライトがその名を叫び、走り出す。
あたしたちも弾けたみたいに一緒に駆け寄った。

スノウ…!
やっと見つけた…!

今までずっと手掛かりがなかったその姿を前に胸の奥がぎゅっとした。

でも、スノウは倒れたまま動かない。





「無事なのか…?」

「しっかりしろ!!」





レインズさんが覗き込み、ライトが傍にしゃがんで肩を揺らす。
すると、閉じられていたスノウの瞼がぴくりと動いた。





「ぐっ…」

「あっ、スノウ…!」





スノウはゆっくり立ち上がった。

よかった…!
動けるみたい…!

立つ体力はあるようで、あたしも声を掛けながらホッとする。

でもその時、スノウの傍に何やら輝きが落ちていることに気が付いた。





「それは…?光の羅針盤ではないな」





レインズさんが尋ねる。
でもスノウは何も言わない。

確かに光の羅針盤とはちょっと違うみたいだった。

となると、もうひとつある輝きの手掛かりといえば。





「そんじゃ記憶の断片か!お前まさか取り戻したのか!?やるじゃねーかよ!」





その輝きが記憶の断片だと気づいたファングがスノウを褒めながら喜ぶ。
でもそうして近づこうとしたその時…スノウはそれを止めるように怒鳴った。





「触るな!!」





その瞬間、スノウの足元からぶわっと禍々しい力が溢れ出す。
それはまるで記憶の断片に触れさせないようにしているみたいだった。





「誰も…触るんじゃねえ…」





スノウはしゃがみ、記憶の断片を拾い上げる。

今の、スノウの力なの…?

今の力、あたしたちの記憶にはなかった。
あたしたちが知らない未来の、スノウの力…?





「何だ、その力は…!どうしたんだ、スノウ!突然いなくなったのも、そのせいなのか!?」





ライトはスノウを問いただす。
ファングに「落ち着け」となだめられるくらい、ちょっと焦ってた。

でも、その気持ちはわかる。

今の力、普通じゃなかった。
とんでもなく禍々しい…歪んだような力…。





「ホープを探すと言ったそうだな。なぜ、ひとりでいる。私たちに言えないことを増やしただけじゃないか…!」

「悪いな、ライトニング…。こんな記憶は戻してやれねえよ…」





ライトが詰め寄っても、スノウは何も語らない。

こんな記憶は戻してやれない…。
スノウはそう言って記憶の断片を離さない。

なんで、そんな…。

あたしたちの未来、一体どんなことになってるって言うのさ…。





「スノウ、ちょっと待ってよ。それでもスノウがひとりで抱えるのはおかしいよ。スノウだってホープが何も話してくれなかった時、同じこと思ったよね?」

「…悪ィな、ナマエ。ホープも記憶が戻っていたのなら、今の俺は…その気持ちがわかる。何よりあいつは、お前を苦しめたくないんだ、きっと…」





どうして…。

一緒に抱えればいいじゃないか。
一緒に考えればいいじゃないか。

アカデミアでホープが消えた時、スノウだってそう思ってたよね?

苦しめたくないって…そんなのこっちだって同じなのに。





「おい、どうしちまったんだよ。俺たちゃ、仲間だろ…?」

「…だからだよ。仲間だから…こんな思い、させられねえんだ」





サッズが優しく声を掛ける。
でも、スノウはそれも聞かない。

そしてその瞬間、ふっ…とまた景色が変わった。

元の場所。
あたしたちは再び、ミシディアの塔内部へと戻されてしまった。





「くそっ…締め出しやがって」

「どうすんだ、これから」





ファングが舌打ちし、サッズも頭を抱える。

ミンウが聞いた声が止まった。
そこにいたのは、スノウ…?

だったら声はスノウに関連していた?

そんな疑問を抱いたとき、同じように考えたらしいレインズさんがミンウに聞いてくれた。





「君の聞いたという声は、彼のものだったろうか?」

「いいや、違うと断言できる」





ミンウは聞こえていた声はスノウのものではなかったと否定した。

スノウの声じゃない…。
じゃあ、それに関連する誰か?

それともスノウに会えたのは偶然で、声とは関係ないんだろうか。

…ホープ?





「だったらスノウの説得が先だ。そして記憶の断片を手に入れる。思い出せなければ話にならないからな」





ライトは今すべき優先順位を決めた。

まずはもう一度スノウを探す。
そして記憶の断片を手に入れ、あたしたちも記憶を取り戻すと。

でもそれが一番いいルートだとあたしも思う。





「うん、そうしよう。どんなに辛い未来だとして、それをスノウやホープだけが背負ってるのはおかしいよ。一緒に持たなきゃ。それが仲間だよ」





そう言えば、皆も頷いてくれた。

記憶を取り戻せば、今起きてることの解決の糸口にもなるはず。

ミンウも声は止まったというし、一旦目的変更。
まずはスノウと記憶の断片を何とかする。

こうしてあたしたちは再びスノウを会うべく、彼を探しに歩き出したのだった。



END
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -