雷難の相


「なるほど、ここは最後の試練に向かう道だったのですね…」

「ああ。俺たちはこの最深部でスピラを救う手段は偽りだったと知ったわけだ」





ザナルカンド遺跡。
その景色を見ながら、アーロンがアミダテリオンにここがどういった場所であるかを説明していた。





「へへっ…懐かしいぜ」

「その10年後、ユウナたちも同じように歩いたんだよー」





会話を聞いていたジェクトさんとあたしも軽く口をはさむ。
でもその視線は綺麗な薄水色をした半球体を通して、だ。





「アーロン、もっと見栄えする動きしろよ。話してるだけじゃつまんねえぞ」

「そーそ!静止画じゃ面白くないよー」





突っ立って話してるだけでは絵的に面白くない。
ジェクトさんとあたしが注文を付けるとアーロンが面倒そうに視線を寄越す。

一方でアミダテリオンは不思議そうにこちらに近づいてきた。





「失礼、先ほどから何をされているのですか?」





アミダテリオンはジェクトさんが自分に向ける半球体を見る。

まあ、アミダテリオンにとっては謎だよね。
ジェクトさんが手にしているのはさっきブラスカさんが見つけたと言っていたアレだ。





「おう、これはスフィアってやつでな…」





ジェクトさんはアミダテリオンにスフィアの説明しようとした。
だけどそこでタイミング悪く魔物の出現を知らせる声が入ってきた。





「誰か〜!ヘルプ入って!」

「探索してたら強そうなモンスターが出てきちゃった!」

「よしきた!このジェクト様に任せとけ!おい、行くぞアーロン!ナマエちゃん!」





助けを求めたラァンとユーリィの声に威勢よく答え、アミダテリオンにスフィアを預けて走り出していくジェクトさん。
呼びかけられたアーロンもそれに続いていく。

あたしも呼ばれたけど…、アミダテリオン、急にスフィア渡されても困っちゃうよね。
現に手渡されて不思議そうに眺めてるし。

まあでもとりあえず優先順位は魔物をどうにかすること、か。





「ごめんね、後で説明するね!ちょっと預かっててもらえるかな」

「おやおや…」





あたしはそう一言アミダテリオンに声を掛けるとジェクトさんとアーロンを追いかけた。
そうしてラァンが「あいつあいつ!」と指さす先を見ると、そこにはプリン系のモンスターがうごめいていた。





「んーっと、どうする?」

「ああ。水系魔法が効きそうだな」

「へっ!あんなモン、ジェクト様にかかりゃ余裕だぜ!」





魔法単発で打つか魔法剣にするか、アーロンと様子をうかがっているとジェクトさんがタッと単身で飛び掛かっていった。





「え、あっ、ジェクトさん!」





剣を構えて大きく飛び上がったジェクトさん。
必殺技の一撃で仕留められる自信があったのだろう。

でもその瞬間、ピシャーッとジェクトさんに魔物の雷が降り注いで…。





「あ…」

「馬鹿が…」





あたしはあらら…と。
アーロンは隣で頭を抱える。

ただジェクトさんは魔法を食らいながらもそのまま何とか体制を崩さず魔物に切りかかった。

このへんは流石だ。
その一撃で見事ジェクトさんは魔物を仕留めて見せた。

…でも。





「ぐうっ…」

「ジェクトぉ〜〜〜〜!!!」





最後の決めポーズは決まらず、喰らったダメージに蹲るジェクトさんにラァンの悲痛な声が響く。
あたしたちは様子をうかがう様にジェクトさんに駆け寄った。





「ははは!大丈夫かい?」





するとブラスカさんの声もがした。

見ればブラスカさんはスフィアをこちらに向けていて、その隣にアミダテリオンもいる。
どうやらブラスカさんがアミダテリオンに説明して実際に使って見せているみたいだ。





「ふ、ふ、ふたりして笑ってんじゃねえ〜…!」





ちょっと声を震わせながら文句を言うジェクトさん。
どうやらふたりの様子を見ると、今の光景はばっちりスフィアに収まってしまっているらしい。





「あなたは頑丈ですからね。心配は無用でしょう」

「おや、よくわかってくれているな。実はその通りなんだ」

「くそっ…他人事だと思って…」





痺れる体に言われたい放題。
蹲ったまま悔しそうにブラスカさんを睨むジェクトさん。





「…回復、かけてあげた方がいい?」

「…自業自得だがな」





あたしはアーロンに回復してあげた方がいいかなと聞き、ジェクトさんにケアルを飛ばした。
まあそこまで大ダメージでもなさそうだけど、一先ずこれで安心だろう。





「人助けができたんだから、いいじゃないか。健闘したんだろう?」

「ふふ、お疲れ様でした」

「ほら、さっさと立て」





相変わらず笑ってるブラスカさんとアミダテリオン。
おまけにアーロンにも立てと急かされ本当に言われたい放題だ。

ケアルもしたから立てるとは思うけど。

そうしてようやく立ち上がったジェクトさんは真っ先にブラスカさんに詰め寄った。





「さっきのスフィア、誰かに見せやがったら承知しねえからな!」

「ははは…努力するさ」





ブラスカさんはまた笑う。
ま、アレを見られたらしばらくはネタにされちゃいそうだしね。

ティーダとかユウナに見られたら、メンツ丸潰れって感じ?
まああのふたりは雷平原でのあのスフィア見ちゃってるけど。

しかしあの時も今も、ジェクトさんはどうも雷運がない。




「ん〜、水難の相ならぬ雷難の相って感じ?ま、水は得意分野だし」

「あいつが調子に乗ってるからだろう。馬鹿なだけだ」

「聞こえてっぞオラ!!」





雷平原でのことを思い出してアーロンと話してたらジェクトさんが噛みついてきた。
いやあたしじゃなくてアーロンにだけど。

あたしは別に変なこと言ってないも−ん。

でも、そんなやり取りがおかしくて堪えることなく笑ったら「笑いすぎなんだよ!」って怒られた。



END

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