一筋縄ではいかない


「…ってことがあってよ、力にならなきゃ男がすたるだろ?」

「はは、張り切るのは構わないが、歳を考えないと痛い目を見るぞ」





ジェクトさんとブラスカさん。
他愛のないこと、気兼ねなく話してる。





「なんか、さ…」

「うん…」





そんなふたりの姿にそれぞれの子供たちは何か思う事があるよう。





「あははっ、意外そうな顔してるね?」

「フッ…記憶にある父親の姿とは違うか」





あたしとアーロンが声を掛けるとティーダとユウナは振り返った。

ふたりがそれぞれの父親を見て思うこと。
それは恐らく今アーロンが言った通り、自分の記憶の中の父親とはなんだか違う様に映ったからだろう。





「親父が偉そうじゃなくて…なんつーか、変なカンジ」

「父さんも…ジェクトさんをからかって、いたずらっ子みたい。ナマエやアーロンさんが知っている父やジェクトさんはこんな雰囲気だったんですか?」

「そうだな…ベベルを発った頃のようだ」

「あたしはその頃のことよく知らないけど、でも不思議って感じはないよ」





家族に見せる姿、友人に見せる姿。
そこには誰しも少なからず多少の違いはあるものだろう。

アーロンからベベルを発った時、と聞いたユウナは幼い日の事を思い出しているようだった。

確か、ユウナは発つ前にジェクトさんとも会ったことがあるんだよね。





「そういえば、私がジェクトさんと話をしたのもその頃だったんだよ。特別に、ってジェクトシュートを見せてもらったり…楽しかったなあ」

「あの時は絶対別人だと思ったけどさ、今は何となく…納得したよ」

「ふふっ、そうでしょ!」





はじめの頃、ティーダはユウナからジェクトさんに会ったという話を聞いても別人だと言って信じなかった。
その様子はあたしがガードにして貰った後もちょっと続いてたから、なんとなくわかる。

ずっと行方不明だった父親が異世界にいるなんて、まあ簡単に信じられるようなものでもなかっただろうしね。

それに、自分の前で偉そうにしている父親の印象とユウナが話す印象は、ちょっと違っているように感じてたみたいだから。

でも、今実際に目の前にいる父親の様子を見て、その違和感は繋がったようだ。





「あの頃のユウナはお転婆だったね」





するとそこに、ブラスカさんとジェクトさんも戻ってきた。

お転婆。
幼い頃の姿をばらされたユウナは頬を赤らめる。





「父さんってば…!」

「元気いっぱいってだけだよな。機敏で好奇心旺盛ないい子だったぞ」





するとジェクトさんはそんなユウナにフォローを入れてあげていた。

まあキマリからもシパーフから飛び降りたりしてたとか聞いたことあるしね。
でも今の生真面目さを見ていればそこは変わってないんだろうとかはわかるから、きっとジェクトさんの言う通りなのだろう。

褒められたユウナは少し照れながらも嬉しそうに笑う。

でもその一方で、ティーダの方は唇を尖らせていた。





「人の子は褒めるんだよなぁ」

「なんだおめえ、拗ねてんのか」

「んなわけないっつーの!」





いや拗ねてるでしょ。
ムキになって否定するティーダはちょっと面白い。

まあ確かにユウナは褒めるけどティーダには意地悪だしね、ジェクトさん。

すると、その様子に笑った人がもうひとり。





「ははっ、ふたりともそっくりだな」

「どこがッスか!」





笑ったのはブラスカさん。
そっくりだと言われたティーダはムキになったままに否定しようとする。

でもブラスカさんの方には似ていると言った根拠があるようで。





「不器用なところも、困っている人を助けようと真摯に向き合うところも。娘のガードと務めてくれたらしいね、君はかけがえのない人物だ。ありがとう」

「いや、そんな、ガードは他にもいるし…」





ブラスカさんから真っ直ぐに褒められ、今度はティーダが照れていた。

というか、大事な女の子の父親にこう言われるって点がまたちょっと大きいんだろうなと思う。
今のティーダの反応はそういう反応だ。

でも…うーん、これは…。

そしてそこに己の父親からの指摘。





「安心しろ、ワッカたちにも言ってたぞ」

「あっ、えっ!?なーんだ、期待しちゃった…」

「ははは…それはすまなかったな。だが、まごうことなき本心さ。君の事はジェクトから聞いていたからどんな子かと楽しみにしていたんだ。ガードとしても人としても申し分ない。私からも頼りにさせてもらえるかな?」

「は、はあ…もちろんッス…」





ドストレート。
眩しいくらいに褒めてくれるブラスカさんの言葉に照れて言葉が見つからない様子のティーダ。

いやー、まあブラスカさんにとってもジェクトさんの息子が自分の娘のガードを務めたっていうことには色々と感慨深いというか、ちょっと特別に思う事があるのは事実だと思う。





「…ユウナの親父さんって、一筋縄じゃいかないカンジ?」

「えっ、そ、そうかなあ…」





優しく褒めてくれるけど、掴みどころがないみたいな?
こそっと話すティーダとユウナの言葉が比較的近い位置にいるあたしやアーロンには聞こえた。

それを聞いてあたしは吹き出しそうになった。

ま、ただ優しいだけじゃないよね。
優しいからってそこに付け入られたり、流されたりはしない。

言い方ちょっとアレかもだけど、案外曲者だったり…?

ジェクトさんを旅に誘ったやり取りとかからも、それは伺えるよね。

ブラスカさんは柔和そうで、案外結構したたかだ。





「…あはは、これはティーダ案外大変かも〜?」

「…どうだかな」





あたしはこそっと、アーロンにだけ聞こえるように笑った。

そういえば前にブラスカさんは娘はやらんとか言うようなタイプかなあ…なんて、考えたりしたっけ。

あれだ。仲良さそうに話すティーダとユウナを見てジェクトさんがキャンキャンしてた時。
ガラフに孫の話までされて「だああ!!」とか騒いでたやつ。

で…今、この様子を見ていると。





「…ねえ、もしややっぱりブラスカさんも娘はやらんってタイプ?」

「…いや、そんな言い方はせんだろうが」

「…でもやっぱティーダの言う通り一筋縄ではいかない?」

「…一人娘だからな」





アーロンとこそこそと話す。

うーん、まあ反対するってことは無いと思うけど。
本人も言ってたように、今ブラスカさんがティーダに言ってたこと、全部本心のはずだし。





「ナマエ、アーロン、ふたりでこそこそどうしたんだい?」

「えっ、あ、いいえ〜!」

「ああ、なんでもない」

「そうかい?」





こそこそ話、ブラスカさんに突っ込まれた。
いや、内容は聞こえてないと思うけど。

とりあえずふたりでなんでもないと首を振った。

でもちょっと焦ってどもったから、あとでアーロンに「阿呆」って頭をはたかれた。




END
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