どんどん叶う願い
「…これでよし、もう心配はいらないよ」
「父さんすごくかっこ良かった!こんなに強かったんだね!」
「はは、ユウナこそ心強かったよ。すっかり追い抜かれてしまったな」
「ううん、みんなのお陰。でも、ちょっとだけその気になっちゃいそう!」
無事に魔物を一掃し、今度こそシーモアの開けたひずみを全て閉じたあたしたち。
落ち着くと、ユウナはすぐさま父親の元へと駆け寄った。
ユウナはきっと、本格的に戦う父親の姿を初めて見たのだろう。
そしてブラスカさんも、成長して頼もしくなった娘の姿を眩しく見てる。
語らう姿はどちらも嬉しそうで、こちらもなんだかあたたかくなる。
そんな時、隣で一緒にその姿を見ていたアーロンが感極まったように目を伏せた。
「アーロン?」
「ああ…いや、本当に…再会できたんだな…!」
そっと声を掛ければ、噛み締めるようにそう口にするアーロン。
すると同じく傍でユウナたちの姿を見ていたキマリもアーロンに声を掛けた。
「アーロンがふたりを引き合わせた」
キマリ…。
その言葉にアーロンは顔を上げる。
あたしもキマリを見上げた。
キマリはまっすぐに言葉を続けていく。
「ユウナを連れ出したのはキマリだ。だが、叶ったのはアーロンが託したから。自分を許してもいい。キマリはそう思う」
「キマリ…!」
キマリのその言葉は、アーロンの胸に届く。
アーロンは目を開いたから。
キマリは口数が少ないけど、でも、いつだってその言葉は響く。
ありがとう、キマリ。
あたしもそっと笑みを浮かべ、アーロンの腕にそっと触れた。
「ナマエ…」
「あたしも、そう思うよ。今のこの目の前の景色は、ユウナとブラスカさんがああやって一緒に笑てるのは、アーロンのおかげ。ふふ、凄いね」
「……。」
「凄いよ、本当に。あははっ、また惚れ直したな〜」
「……馬鹿」
ちょっとおふざけまじり。
今回は軽くだけど、コツンと頭を叩かれた。
あたしはそこに触れて、へらっと笑う。
するとキマリも乗ってくれた。
「ナマエは見る目がある」
「あら、そーお?」
「……。」
キマリも案外ノリ良いよね。
あたしは「にひひ」と笑う。
でも、今の言葉が嬉しいな。
だって、あたしのことも、アーロンのことも褒めてくれたってことだからね。
アーロンは呆れ溜め息。
でも、その後すぐにふっと笑みを零してくれた。
「なんかさ、こういうのっていいよな」
「……。」
「なんか言えって!」
「うるせえな…。言葉が…出てこねえんだよ」
その時、また少し離れた場所でユウナたちの姿を見守るティーダとジェクトさんの声が聞こえた。
ティーダは微笑ましくその姿を見ているけれど、ジェクトさんの方は気持ちの整理が追いつかないらしい。
「あの時諦めたことが、どんどん叶っていきやがる…。なあ、夢じゃねえよな?現実なんだよな?」
あの時諦めたこと…。
それを聞いて、確かに思うことは色々あった。
この世界に来て、たくさん…本来ならありえないことが現実になった。
あたしだって、そうだ。
また、アーロンに会えた。
ティーダとジェクトさんが、肩を並べた。
アーロンとジェクトさんが、お酒を飲み交わした。
アーロンに、カモメ団のこと…2年後の自分の事を話せた。
そして、ブラスカさんがユウナに会えた。
夢じゃないかって、疑う気持ちはわかる。
「なんで俺に聞くんだよ、自分でも殴って確かめろ!」
ティーダはいつものように言い返す。
でも、そんなやり取りも、全部…夢じゃない。
すると、そんな会話を聞いていたらしいブラスカさんとユウナがふたりに近づいた。
「それはぜひ見てみたいものだが…ふふ、夢じゃないさ。また一緒に旅をしよう。今度はユウナたちに加えてもらおうか」
「うん!大歓迎!私、ずっと父さんと旅をしてみたかったの。ナマエと、アーロンさんやジェクトさんが羨ましかったんだ。暇さえあればナマエに話を聞いてたくらい!」
「そうか。待たせてしまったね。けど、そう思ってくれて嬉しいよ」
ブラスカさんはすんなり旅に同行すると頷いてくれた。
いや、拒否する理由はないだろうからこれで普通なんだろうけど。
でもその辺どうもジェクトさんが折り合い悪かったからね。
…今も、どうなんだろう。
ただブラスカさんが言うのなら、ジェクトさんも折れてくれるとは思うけど。
「実は気になる場所があってね。一緒に来てくれるかな」
旅への加入が決まったところですぐ、ブラスカさんはユウナに行きたいところがあると告げた。
そのあたりの話になったところで、あたしとアーロン、キマリも話に加わる。
アーロンはふっと笑った。
「フッ、早速だな」
「あるはずのない場所に存在するせいで本物とは思えないが…確かめてみたいんだ」
「あるはずのない…?なんだそりゃ」
ジェクトさんが首を傾げて聞く。
あたしたちも、それは何処かとブラスカさんに注目する。
視線を集めたブラスカさんは、はっきりとした声でその地名を口にした。
「ザナルカンド遺跡さ」
END