懐かしい戦いのテンポ


ブラスカさんとジェクトさんとアーロン。
懐かしい面子で話をしていると、少し離れたところから戦闘の音がした。

どうやらシーモアが開いたひずみがまだ残っていた様子。

きっとそれに先に気が付き戦ってくれているユウナたちの元へ、あたしたちも急いだ。





「父さん!」

「待たせたね、すぐに加勢しよう」





合流すると、ユウナはすぐに父を呼んだ。
ブラスカさんもそんな娘の肩を叩き、その期待に応える。

ああ、やっぱいいなあ、これ。

ユウナとブラスカさんの姿が同じ視界に映る感覚は、まだしばらくじわりときちゃいそう。

それと同時にワッカなんかは「ブラスカ様も一緒に戦ってくれるんすか!?俺、感激ッす!」とかブラスカさんの存在そのものに感動してた。
まあ伝説のガードたるアーロンと、あたしも…?初めて会った頃は同じような反応されたしね。





「おい、あれ!」

「やっぱりシーモア老師の開けたひずみから出てきたんだ…!」





その時、ティーダとユウナが背後にも魔物が湧いてきたことに気が付く。
正面もまだ倒し終わっていないのに、これじゃ囲まれた状態になってしまうとふたりは焦る。

でもきっと、その辺は心配ご無用だ。

だからあたしはふたりに声を掛けた。





「あ、ティーダ、ユウナ、それは大丈夫だと思う。今まで通り、目の前の奴だけ倒すことに集中して」

「えっ、ナマエ?」

「どーゆー意味っスか?」





ふたりは不思議そうな顔をした。

でも、その疑問はすぐに解ける。
なぜなら、きっとふたりの目にも武器を構える親世代の姿が映ったはずだから。





「では、我々に任せてもらおうか」

「こういうのはな、正面からドカーンとぶつかってきゃいいんだよ!」

「立ち回りを考えろ、馬鹿」

「いいじゃないか、アーロン。好きなようにさせてみよう」

「おっ!やっぱブラスカは分かってんな」

「どうせ我々がフォローすることになると決まっているんだからな」

「フッ…違いない」

「って、おい!」





あたしにとっては、懐かしいやりとり。
後ろでくすっと思わず笑う。

でも、いまのそのやりとりにはティーダとユウナも思うものがあったみたいだ。





「ったく、恥ずかしい奴…」

「だけど、皆楽しそうだよ。こんな父さん…初めて見た!」





やれやれと頭を振るティーダと、どこか嬉しそうなユウナ。
でもきっと、ふたりとも共通してその背中を頼もしく思ったと思う。





「呆けてる暇はないぞ。ブラスカがいる以上、手柄を譲るわけにはいかないからな」

「アーロンさん、気合充分だな…!俺たちもやってやろうぜ!」





ワッカの言う通り、アーロンからもいつもとは少し違う気合を感じた。

きっと今のこの感覚は、きっと少し特別。
どこからか湧き上がってくるような、少し楽しささえ覚える、そういうの。

だってそれは、あたしも感じていたから。





「ナマエ。今回は親父たちの方見てもらっていいッスよ」

「えっ?」

「うん。ナマエもきっと懐かしいよね?私も、父さんたちと戦うナマエ見てみたい」

「あっちのほうが多いし。親父に貸してやるッスよ」





ティーダにトン、と背中を押された。

あたしは、色んな戦いのテンポを知ってる。
ブラスカさんのガードとして、ユウナのガードとして、カモメ団として。

でも、うん、じゃあ今回は、ブラスカさんのガードとして。





「ナマエ、来い」

「うん!」





アーロンに呼ばれ、頷き駆け寄る。

ジェクトさんと、アーロンが前に出る背中。
そして隣にはブラスカさんがいて…ああ、この景色、知ってるなあって蘇る。





「っしゃ!ジェクト様のとっておきをぶちかましてやるぜ!」

「アーロン、ジェクトのサポートを頼む。私とナマエはこちらから援護しよう」

「はい!ブラスカさん」

「ああ。タイミングは…」

「わかるだろう?いつも通り、だ」

「フッ…何もかもが懐かしいな」

「えへへっ、はい!いつも通りで!アーロン、ジェクトさんが突っ込んだらあれ、いくよ?」

「了解だ」





少しの確認だけすると、アーロンは既に走り出しているジェクトさんの元へと向かった。

いつものは、いつもの。
ユウナのガードの時もこの世界でも、アーロンとは戦いなれてるけど、なんだか新鮮で、でも懐かしい。

ブラスカさんがふたりをアシストするよう魔法を放つ。
その隣で、あたしは手のひらに炎の魔力を込めた。

この呼吸…本当に懐かしいな。

あたしにとっては、3年前かな。
アーロンにとっては、10年か。

でも、不思議と覚えてる。

手間取ることなどひとつもなく、あたしたちは目の前の敵を一掃したのだった。



END
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