焦がれた再会


「どうだ!てめえの悪だくみもここまでだ!」





シーモアが喚び出したひずみの魔物たち。
その最後の一体を仕留めたジェクトさんがシーモアに言う。

シーモアはふむ…と軽く頷いた。





「さすが、と認めざるを得ませんね。しかし…」





さすがと言いながら、その顔には何の焦りもない。

シーモアはそこで杖を一振りした。
その瞬間、少し後方にいたユウナの背後に新たなひずみがふたつ浮かび上がる。





「えっ…!」


「ユウナ!!」

「ユウナッ!」





ティーダは走り出し、あたしも手を伸ばした。
でも、これじゃダメ…!間に合わない…!

ジェクトさんもアーロンも、同様。

魔物の鋭い牙が、ユウナに向かい、光る。

ダメッ…!!!!

そう思った、その時だった。





カッ…!





眩い一線の光。

それはユウナに襲い掛かろうとした魔物を貫いた。

え…今の光って…。
それは見たことのある光だった。

そしてそこにふわりと飛ぶ、一体の召喚獣。
それはヴァルファーレだった。





「なんだと…!?」





予想外の出来事にシーモアの戸惑う声がした。

でも、それはあたしたちも同じだった。

ヴァルファーレが助けてくれた…。
だけど今、ユウナはヴァルファーレを召喚していなかった。

ユウナの他に、ヴァルファーレを召喚出来る人なんて…。

そう困惑していた時、こちらに近づいてくるひとつの足音を聞いた。





「危ういところだったな…、もう大丈夫だ」

「あ…」





聞こえた男の人の声。
振り向いたユウナは現れたその人に震えた声を零す。

いや、ユウナだけじゃない。

この、声…は…。

そして、歩いてきた、今、ここに現れたその人は…。





「…まさか」





シーモアの声も震える。
その声は、あたしの心ともリンクした。

…う、そ…。





「ブラスカ!!」





ジェクトさんがその名を口を叫ぶ。
それを聞いた瞬間、あたしとアーロンも魔法が解けたみたいに走り出した。

そこにいた人。
しっかりと、こちらを見ているその人。

ずっとずっと、もう一度…会って話をしたかった人。





「君たちの姿が見えたので駆け付けたが、間違いなかったようだ。ジェクトにナマエに…もしやアーロンか?ははっ、様変わりしたな」





記憶の中にあるまま。
その姿と、穏やかで優しい話し方。

胸の中、溢れてくる。いっぱいになる。





「本当に…ブラスカなんだな…!またお前に会える日が来るとは…」





絞りだされるように、震えたアーロンの声。
あたしは、うまく言葉が出てこなかった。





「この状況がどういったものなのか、まだ理解は出来ていないが…こうして言葉を交わせるなら、少なくとも…夢ではないのだな」





確認する。夢じゃない。
そこにいるのは、確かにブラスカさんだった。





「ああ、夢じゃねえよ…」

「ブラスカさん…っ」





夢じゃないと頷くジェクトさんに、あたしもやっと声が出た。
想いが溢れすぎて、名前を口するだけで精一杯だったけど。





「そうだ、ブラスカ…ユウナちゃんだ、あの子はユウナちゃんだぞ!」





ジェクトさんはユウナを指さした。

そうだ、まずはユウナだよ。
もうなにから伝えたらいいかわからないくらい、頭が真っ白。

でも、そう。
一番い伝えたいのはユウナの事だ。

ブラスカさんはジェクトさんが示した先に視線を向ける。

自分の元に向いた視線にユウナはおずっ…と口を開いた。





「あの…、私…ユウナだよ。大召喚士ブラスカの…あなたの娘のユウナです…!」

「…やはり、そうか。ずっとお前に…会いたかった…!」

「…っ、父さん!!」





互いに感極まった声。

ユウナはバッと父親の元へ走り出す。
ブラスカさんは手を広げ、そんな娘を受け止めた。





「…大きくなったな。出会った頃の母さんにそっくりだ。素敵な女性に成長したね」

「そんなこと…ううん、ありがとう…!父さん、本当に来ちゃったんだね…だけど…どうしよう、嬉しい」

「私もだ、ユウナ。後悔なんて…なかったはずなのにな」





再会を喜ぶ親子。
その姿に、目の奥が熱くなってくる。

会えたんだ…ブラスカさんとユウナが、本当に…!





「良かったなあ…ユウナ…ホントに…よかった…!」

「なんだおめえ…泣いてやがんのか」

「あ、あんただって…!」





涙が出そうと思った時、もう片方の親子のそんな会話が聞こえてつい引っ込んだ。
見ればふたりともぐしゃぐしゃの顔してる。

それはちょっとおかしくて、あたしは思わずふっと笑ってしまった。

するとそれを同じように、「フッ」と笑った声がもう一つ。

あたしは隣にいるアーロンの赤い袖をくっと引いた。





「アーロン…本当に、夢じゃないよね?」

「ああ…っ、俺も確認したいくらいだが」

「うんっ!」





ダメだ。こっちもこっちで声が震えちゃう。

でも、嬉しくて、嬉しくて。

あたしは頷くと、アーロンと一緒にまたユウナとブラスカさんに目を向ける。
それはもう一度、ううん、何度でも、ちゃんとふたりが会えたことを確かめたくて。





「父さん、私ね、スピラを解放したんだよ。もう二度とシンは蘇らないし、誰も犠牲にならなくていいの。父さんたちのお陰で、ナギ節を永遠にすることが出来たんだ…!」

「そうか…!そうだったのか…あんなに小さかった子が…!よくやったな、ユウナ。お前は父さんと母さんの自慢の娘だ!」

「ふふっ…うん!」





ユウナはブラスカさんに永遠のナギ節が叶ったことと伝えていた。
きっとそれはユウナが真っ先に伝えたかったことだろうから。

それはブラスカさんの夢でもあって。

褒められたユウナはただ純粋に、本当に嬉しそうに笑っていた。



END
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