震える怒り


「アーロン、そろそろジェクトさんたちの様子見に行ってみようよ」

「ああ…そうだな」





にこりと、アーロンに笑う。

うん、皆と話して一旦リセット。
笑って旅したいって、よく話してたよね。

様子がおかしかったジェクトさんと、それを追いかけていったティーダ。
親子で話して、少し気持ちに変化はあっただろうか。

あたしやユウナはアーロンに声を掛け、何人かでジェクトさんたちの元へと向かうことにした。





「あ、いたいた。ティーダ!ジェクトさん!」





ビサイド村の少し奥、進んだそこにふたりはいた。
あたしが手を振りながら呼ぶと、向こうもこちらに気が付いてくれた様子。





「あの、ジェクトさん…これからは一緒に旅を続けてくれますよね」





近づくと、ユウナはジェクトにこれからは一緒に来て欲しいと伝えた。
もともと今度再会出来たら一緒に行くって話はしてたけど…。

でも、それに対しジェクトさんの顔はまだ浮かない様子だった。





「ユウナちゃん…それなんだが…」





ジェクトさんはそう言いかけた。
そんな時だった。



ドカーン!!!



突如響いた轟音と地響き。
あたしはちはバッと音の方を振り返った。





「あちらですわ!」





一緒に来てくれていたシャントットの指さす方へ皆で走り出す。

今の音、普通じゃなかった…。
まるで何か、大きな魔物が暴れてるみたいな。

そうして辿り着いたそこには、とんでもない数の次元のひずみが開いていた。

その中心で微笑むのは、よーく見知ったあの男。





「これはこれは、お揃いで」





あたしたちに気が付き、振り返ったのはシーモアだった。

このひずみ、全部シーモアが開いたの…!?
いったい何のためにそんなこと…。

そう疑問を抱いたとき、その答えをいち早くくれたのはシャントットだった。





「世界に傷をつけてひずみを開き…不安定にさせたいようですわね。そうして理を乱そうとしたのではありませんこと?」

「さすがのご慧眼でいらっしゃる」





シャントットの指摘にシーモアは微笑んだ。

どうやら当たりらしい。

世界の理を乱す…。
そうすることによってシーモアが目論むのは…。





「では、あなたも気付いているのでしょう?この世界には死の救済がなく…私がもたらす他ないのだと」





やっぱり死の救済…。
どこにいっても本当に変わらないな…。

本当に嫌気がさす。

でも、その直後ユウナが放った一言でその気持ちは更に増幅した。





「だからあの時私たちを狙ったの?父さんがいる、なんて嘘をついて!」

「「「!」」」





父さんがいると、嘘をついた…?

その言葉をあたしやアーロン、ジェクトさんは見逃せなかった。

離れてる間にあった出来事。
そんな嘘でユウナを誘い、狙ったって事…!?





「なんだと…!?」

「てめえ…とんでもねえ野郎だ!」

「あんた本当…っ」





あたしたちは隠すことなく嫌悪を見せた。

そんなあたしたちにシーモアは薄く笑う。
そしてその瞳を細め、ジェクトさんを見つめた。





「ふふふ…非難されるいわれなどありません。シンと化したあなたは、同じことをしていたのですから」

「!」





ジェクトさんに向けられた、刃のような言葉。
それを聞いた瞬間、ぶわっと血が沸騰したような怒りを覚えた。





「ふざけるな!あれがジェクトの意思なものか!」





その瞬間、アーロンが弾ける様に叫んだ。





「あれしか方法がなかったんだ…俺たちはスピラを守ろうとしていた。ブラスカだって同じだったさ…その気持ちを踏みにじるな!!」





怒り。
痛いほど、苦しいほど伝わってくる。

怒りで震えるって、こういう事なんだろうと思う。





「シーモア…今の言葉は許さない。絶対に!」

「これ以上、私の大切な人たちを侮辱しないでください…。ビサイドを…この世界を壊させたりしない!」

「よろしい…では、止めてごらんなさい」





あたしとユウナもシーモアを睨んだ。
するとまたシーモアは薄く微笑み、そして目の前に新たなひずみを出現させる。

そこからまた、凶暴な魔物が喚び出された。





「あなたたちの意志がどれほどのものか、見極めて差し上げます」





シーモアがそう言った瞬間、その魔物がこちらに襲い掛かってきた。
するとアーロンはそれを瞬時に見極め、大剣を構え牙を受け止める。





「ナマエ!」

「わかってる!」





アーロンに呼ばれたあたしは既に込めていた魔力をその魔物に向けた。
重く貫く一撃、いくよ!!





「サンダガ!!!」





ピシャーン!!!
アーロンが受け止めてくれた魔物を、鋭い稲妻が貫く。

落ちたその後ろに、シーモアの笑みが見える。

その顔にユウナは悲痛に叫んだ。





「死は救済なんかじゃない…この世界を歪めないで!」

「スピラの仕組みを歪めたのはどなたですか?究極召喚の術を滅ぼしたのは?」

「そ、それは…!」





シーモアの言葉にユウナは狼狽える。

でも、そんなの聞く必要ない。
だってそんなのはまやかしだって、希望じゃないって全員がそう思ったよ。





「ユウナちゃん、耳を貸すな。世界は元の形に戻っただけだ。シンだとか究極召喚だとか…あんなものはあっちゃならねえんだよ!」





ジェクトさんがユウナに声を掛けながら、またこちらに襲い掛かってきた魔物を一体仕留めた。

ひずみの数だけ湧いてくる。
とにかく、全部倒してひずみを閉じなきゃ!

決して倒せないものじゃない。

シーモアの好きになんてさせない。





「アーロン!」

「頼む」





あたしはアーロンを呼び、それで意味を察したアーロンは剣を構えてくれた。
そこに灯すのは、いつもの真っ赤な炎。

まずは、魔物を全部片づける!

剣を構え、魔法を唱え。
あたしたちは、魔物たちに向かっていった。



END
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