揃った星の仲間たち


あの星からの仲間で、まだ唯一再会することが出来ていなかったヴィンセント。
そのヴィンセントが見つかったという知らせを受け、あたしはクラウドとユフィと一緒にヴィンセントの元へ向かった。





「ヴィンセンと〜!!」

「ヴィンセントー!!心配してたんだよー!!」





ニブルヘイムにあったあの洋館に似た場所。
その一角に見慣れた赤マントを見つけ、あたしとユフィはダダッと駆け寄った。

結構な勢いで目の前まで行ったからか、ヴィンセントはちょっとびくっとしてた。ごめん。

でもやっぱり、見つかって、会えて嬉しかったから。

本物だ〜!いえ〜い!
とノリノリでユフィとハイタッチ。

するとそこに少し遅れてクラウドも歩いてきた。





「記憶が戻ったと聞いた。本当か?」





クラウドはヴィンセントの無事を確認すると、すぐにそう尋ねていた。

おおっと、そうだった。
見つけた嬉しさでぶっ飛んじゃってたけど、ヴィンセントについては発見と同時にもうひとつ情報があったんだよね。

それは、ヴィンセントは失った記憶を取り戻していたのだということ。

クラウドの言葉にあたしとユフィもヴィンセントを見上げる。
すると彼はこくりと頷いた。





「ああ、全て思い出せる。シェルクと共に戦ったこともな。お前たちはどうだ?バレットは変わらないと言っていたが…」





ヴィンセントの記憶は確かに戻っているという。
そしてあたしたちはどうかと聞き返してきた。

あたしとクラウドとユフィは顔を合わせる。

シェルク…。
それはシスネ同様、最近になってから新たに仲間に加わってくれたあの星からの人物だ。

見た目は小柄な、可愛らしい女の子。
ちょっとクールな感じだけど。

彼女はなんでも、ディープグラウンドのソルジャー…とか言うのらしい。

シェルクも今、この場に居合わせている。
でも、顔を見て思い返してもやっぱり記憶はそんなもの。

クラウドとユフィも同様らしく、あたしたちは首を横に振った。





「ぜ〜んぜん、変わりなし」

「その子の事も…悪いな」

「うん…。ごめんね、シェルク。やっぱり何にもわからないや…」

「いえ、構いません。ただ、ヴィンセント・ヴァレンタインだけが思い出せたのは…何故でしょうね」





シェルクは冷静だ。
彼女はあたしたちに気にするなといい、そして今、最も不可解な点を指摘する。

ヴィンセントだけが記憶を取り戻せた理由、か…。

あたしたちの前に先にヴィンセントに会っているバレットやケット・シーも思い出せていないらしいから、取り戻せたのは本当にヴィンセントだけみたいだ。





「うーん…記憶の断片がヴィンセントの分しかなかったとか?」





ユフィが思いついた考えをひとつ挙げる。

まあ、すっごくシンプルに考えるとそういう考え方になるよね。
だけどあたしはその例えにはちょっと引っかかりがあった。





「うーん…あたしもパッと思いついたのはそれなんだけどさ…でも聞いた話だと今までってそう言う感じじゃなかったんでしょ?」

「ああ、どうだろうな。これまではひとりが記憶を取り戻したら仲間の記憶も戻っていたはずだ」

「あ、でしょー?そうそう、そういう風に言ってたよなあって思ってさ」

「俺なんて飛空艇にいたら記憶が戻ってきたんだ。断片なんて触れた覚えもないぜ」

「え、あっ、そっか!そういう事もありえるわけか。セッツァーそれわかりやすい!」

「だろ?」





カインとセッツァーが今までの事、自分たちが記憶を取り戻した経緯も踏まえて話してくれた。

でもそう考えるとやっぱり、ヴィンセントだけが記憶を取り戻したっていうのはおかしいんだよね。
セッツァーの例を見ても、ヴィンセントが記憶の断片に触れたなら、あたしたちの記憶も戻っているはずだから。





「なるほど…それは不可解だ」

「ちょっと〜!もう少し真剣に考えろよ〜!」

「ですが、情報が少なすぎます。仮説を立てるにも、これでは…」





不可解でまとめたヴィンセントの腕の辺りをユフィが殴り、でもこれだけじゃどうしようもないとシェルクも頭を悩ませる。

するとユフィもまた「うーん」考え出し、そしてもうひとつ例えを挙げた。





「じゃあさ、記憶の断片が壊れてたっていうのはどう?」

「壊れるってなあ…そんなことありえるのか?」

「少なくとも自然に…というこはないだろうな」

「わかんないよ〜?誰か悪い奴が壊したかもしれないじゃん!」





セッツァーやカインから意見を貰いつつ、記憶の断片破損説をユフィは推す。

悪い奴が壊した…。
誰かが意図的に、記憶の断片を破壊した…とすると。





「悪い奴かどうかはともかく…あなたたちの記憶が戻るのをよしとしない人物、ですね…」





その考えで仮説を立てるとするなら。
それをするのはどういう人物かをシェルクは例えてくれる。

そんなことを言われれば、真っ先に浮かんでくるのはひとりだ。

あたしはクラウドを見た。





「クラウド。それって」

「ああ。だとしたらそれは…セフィロスだ」





クラウドと顔を合わせて頷いた。

やっぱりそうだよね。
あたしたちの記憶が戻って面白くないのは、この世界ではセフィロスだけだもん。

それを聞けば皆もはっとして、納得したようだった。





「ああ、合点がいった。奴にとってのお前は脅威だからな」





ヴィンセントもクラウドを見て頷く。
うん、多分あたしたちのって言うよりは、主にはクラウドに記憶を取り戻させたくないんだろうな。





「だからって…あ〜もう!こんなの黙ってらんないよ!」

「いたたたた!ちょちょちょ、ユフィ!揺らすな!」

「別にこんなんじゃナマエ酔わないだろ!」

「そういう問題じゃない!」





肩の部分を掴まれてユフィにぐわんぐわんされた。
頭揺れるわ!馬鹿!

ぺしっと振りほどくとセッツァーに「お前ら緊張感持たねえのか…」とかちょっと呆れられた。
いやいや今のユフィのせいだから!

でもまあ、こんな好き放題されて、黙ってられないってのはその通りだ。





「ここで終わるつもりはない。絶対に…取り戻してやる」





クラウドはぐっと、拳を握り締めてそう言う。

あたしたちも頷いた。

記憶が戻らなかったのが誰かのせいなら、十中八九セフィロス絡みのはず。
またひとつ、追いかける理由が増えたね。

ここまでされたら一発喰らわせなきゃ気が済まないもん。

だけど、まあ。
悪いことばかりじゃなくて、良いことがあったのは素直に喜びたい。





「ヴィンセント〜、本当会えて良かったよ〜!」

「ああ。私で最後だったか」

「そうそう。ていうか他はわりとすぐ再会出来てたんだよね。なのにヴィンセントひとりだけまったく見つからなかったからどうしたかと思った」

「そうか。それは世話を掛けたな。ナマエ、お前も無事で良かった」

「うん!」





これで、あたしたちの世界の旅の仲間は全員が揃った。

まだ問題は色々ある。
でも、うん。すごくホッとしてる。

それは間違いなく、確かな安心で、あたしたちにとってのプラスだった。




END
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