それはむしろ好都合


タークスの面々がセフィロスと遭遇したらしい。

仲間たちと情報の共有をしていた時、そんな話を耳にした。

遭遇したセフィロスは、明らかに今までと様子が違っていたという。
逃げる事すらままならなかったその時、カダージュの助太刀により何とかその場から離脱する事が出来たとか。

淀みの断片…真の力を取り戻したセフィロス、か。

記憶の中にないから何とも言えないけど、やっぱりとんでもないことになってるというのはわかった。





「ナマエ、聞いたか。セフィロスの話」

「あ、クラウド」





ふーむ、と無い記憶を考えていると、クラウドが声を掛けに来てくれた。

やっぱり気になるのはセフィロスのことだよね。
あたしはこくんと頷いた。





「うん。聞いたよー。スピードもパワーも桁がおかしかったってね」

「ああ…」

「あたしエッジに聞いたんだ。エッジもセフィロスに遭遇したって言ってたから」





タークスと一緒に、セフィロスと遭遇した場に居合わせたというエッジ。
あたしは彼に直接話を聞いた。

エッジが早いと感じる動き。
それだけで並みじゃないのはわかるよね。

きっと、何もかもが増強されてるような状態…ってことなのだろう。

…いや、どんだけだよってハナシだけど。






「…セフィロスはタークスたちのことを外れだと言っていたらしい」

「外れ?」

「ああ…多分、光の羅針盤を持っている奴が当たりってことなんじゃないかって」

「あー、なるほど!」






ぽん、と手を叩く。言われて納得した。
確かに今思いつく中だと光の羅針盤を持っているか否かっていうのが一番当てはまることなのかもしれない。





「…意味、わかってるか?」

「へ?」





するとクラウドはじっとこちらを見てくる。

意味?セフィロスは羅針盤を狙ってるかもって話でしょ?
うん?と首を傾げると、クラウドは「はあ…」と溜め息をついた。

え。なにゆえ。





「…セフィロスは、他の羅針盤も狙うかもしれない。つまり、あんたも狙われるかもしれない」

「え?ああ、うん、だね。ザックスも。あと他に持ってる人たちも。気を付けようって情報共有した方がいいね」

「なんかあっけらかんとしてるな…」

「へ?そ、そう…?そんなことないけど…セフィロスがわざわざ襲ってくるとか冗談じゃないし。皆にも話して回ろうよ」





光の羅針盤を持ってる人、何人いたかな。

フリオニールとオニオンナイトとセシルと…まあ、両手でも足りない人数はいるよね。
それにまだ合流出来てない組…スコールとかラムザとかも持ってるかも。万一そっちとか狙われたら大変だ!

ほら別に、あっけらかんとなんてしてないじゃないか!

でも、クラウドはやっぱりため息をついた。
だからなんで!?





「なんでそんなため息つくの!幸せ逃げるよ!」

「なんか、自分のことは無頓着だよな…」

「自分?え?あたし?」

「他にいないだろ」

「ええー?」

「あんたも狙われる可能性があるってわかってるよな?」

「わかってるよー。もちろん気を付ける!」

「…心配だ」

「なんで!?」





ガーン!と頭に文字が落ちてきた気分。
そんなマジトーンで心配とか言われましても!

別に普通に気を付けますよ!?

いつもよりやっべえ力持ったセフィロスとかやっべえのわかってますから!
語彙力はないけど!!





「心配するに決まってるだろ…」

「え?」

「自分の羅針盤が奪われた挙句、あんたが狙われるなんて冗談じゃない…。だから、必ず守る。…だから、傍にいてくれ」

「クラウド…」





じっと、見つめて。
まっすぐに。

クラウドがそんな風に言ってくれる。
それは物凄く嬉しいことで。

だからあたしはにこりと笑って頷いた。





「うん。ありがと、クラウド。一緒にいてくれると心強いよ!」





そう伝えれば、クラウドの顔も少し綻ぶ。
そして「ああ」と優しい顔で頷き返してくれた。





「でもさあ、もしあたしが狙われたらチャンスだよ?」

「え?」

「向こうからクラウドの羅針盤持ってきてくれるなんて有難い限りだね!あたしも手伝えるし!そしたら、絶対取り戻す!!」

「…どこまでも前向きだな」

「むしろ好都合ってなもんよ!!」





ふふーん、と笑う。
するとクラウドはまた小さな溜め息。

でもその表情は、少しずつ前向き。
俯くことは減って、軽くなってきていると思えた。



END
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