淀みの断片を手にした宿敵


道を進んでいると、向かいから誰かが歩いてきた。
それは肩くらいの銀髪の…ちょっとセフィロスに似た彼。





「…兄さん」

「お前は、確かカダージュか」





クラウドがその名を口にする。
そう、向かいから来たのはカダージュだった。

彼とも、皆がバラバラになったときに一緒にはぐれていた。

でも仲間…っていうわけでもなかったから、探すのもちょっと違う気がしたし。





「ついてきたのか?」

「一度はぐれたけどね。兄さんたちを見つけられた」





クラウドが尋ねるとカダージュの方はこちらを探していた様だ。
いや、積極的に探してたっていう感じではなく、目的の一つってくらいな感じだけど。





「無事でよかった…でいいのかな?」

「無事…そう、無事…ね」





エアリスが少し気遣うと、カダージュは何だか意味深に呟いた。

なんだその、ちょっと微妙な感じは…。
見たところケガとかはしてなさそうだけど、無事ではないって?

…ケアルとかしてあげた方がいいんだろうか。

ちょっと悩む。
まあ少し様子見だ。

するとカダージュは自分の腕に触れた。





「確かに身体はまだなんともないけど、今後どうなるか…」




そして、また意味深。

今後どうなるか、とは…。
どこか濁した物言いにティファが「何が言いたいの?」とストレートに聞けば、カダージュはあたしたちに告げた。





「警告に来たのさ。セフィロスが淀みの断片を取り戻した」





警告…。

って、淀みの断片…!?

それを聞いて皆の顔色が変わる。勿論あたしもだ。
クラウドは息を飲んでいた。





「セフィロスの思念が強まっている。僕もその影響を受けているのさ。今は大人しくしていられるけど、今後どうなるかわからないよ」

「淀みの断片言うんは異形の姿を秘めたもんでしたっけなあ」





ケット・シーが他の仲間達から聞いた話を踏まえてふむ…と考える。

淀みの断片の話は、オニオンナイトたちと再会した時に色々と聞いた。
その力で、もう何人も異形の姿を取り戻してるって。

だけど…。




「セフィロスの異形の姿…って、それはどーゆー…?」






記憶を辿るように呟く。
いやだって全然心当たり無くて。





「私たち、セフィロスの異形の姿を覚えてないね」

「だよね!?あたしが忘れてるだけじゃないよね!?」

「ふっ…だから難しい顔してたの?うん、私も覚えてないよ」





ティファが反応して答えてくれた。
よかった…。ちょっと安心。

いや、よかったってことはないんだけどさ。

でもやっぱり、皆も覚えてないよね?

セフィロスの異形の姿。
正直、それを聞いてもピンとこないと言うのが、今のあたしたちの本音だった。

でも、カダージュがわざわざこう言うんだから本当にあるんだろう。
ジェノバの力とセフィロスの強い意志があれば…そう言うのも可能なのかもしれない。





「ただでさえ強いあいつがモンスターになっちまうんだろ。想像しただけでゾッとするぜ」

「もーっととんでもない力引っ提げてくるの?うーわ、考えたくもない!」





シドと一緒に頭を抱えた。
ていうかあたしは嘆き叫んだ。

だってさ、この異世界に来てからも何度か戦ってるけど、その度に超厄介だったわけよ?

それがさらに強くなるってか…!!

うわ〜っ!いや〜っ!!とかあまりに騒いでたら、うるせえよってシドにチョップされた。
酷い!自分だってうんざりしてたくせに!!

でもそんな中で、エアリスだけは穏やかに、カダージュを見てニコッと微笑んでいた。





「わざわざ警告に来てくれたんだ。優しい子だね」





その優しい声にはっとする。

そうだ。
確かにわざわざ知らせてくれたんだよね。

そう思うとちょっと色々思うことはあるというか…。

でもそんなエアリスのお礼にカダージュはふっと顔を逸らす。





「…やめてよ。ただの気まぐれさ」

「気まぐれでも、私たち、準備ができるよ」





エアリスの言葉は変わらない。
優しく、厚意と捉えて包み込むように受け取る。

そんな風に接されるとカダージュの方も弱いみたいだった。

でも、エアリスの言葉選びはあたたかいよね。
掛けてくれる言葉がふっと心にしみる。

カダージュはセフィロスの思念体だというけれど…そういう思いを受け取れるというか、こちらの厚意的な思いが伝わるって言うのは、良いことだなと素直に思った。





「ふん…警告はしたからね」

「また離れるつもりか?」





背を向けたカダージュにクラウドは声を掛ける。

最初の頃より、少し気に掛けてるみたいな。
クラウドの方も、味方とまではいかなくとも、話は出来る奴だっていう印象になってきてるのかもしれない。

カダージュは足を止め、一度振り返った。





「つかず離れず、ついていくよ。僕が暴走したとき止めるのは兄さんたちだし…。逆に事情を知っているからこそ、役に立つこともあるかもしれないしね」

「やっぱり、いい子」

「よしてくれ…僕は自分の為にこうしてるんだから」

「結果的に助かってる。淀みの断片の情報だけでもな」





エアリスに褒められ、クラウドに礼を言われ。
カダージュはどうしていいかわからないみたいに、ちょっと反応に困ってた。

そんな中に言葉を挟んだら、余計に困られせるかな?

でも、本当に助かってるのは事実なんだよね。
暴走したときに止めてもらえるようにっていう考えも、こっち的にはマトモな考え方だなって思えるし。





「うん、ありがと!カダージュ」





だからあたしもお礼を言った。
するとカダージュの視線がこちらに向いた。





「ありがとう…ね。ナマエ、か。あんたも素直だよね」

「えっ?」

「兄さんは、そういうところを気に入ってるのかな」





兄さん…?って、クラウド?
気に入ってる…?

そう言ったカダージュはクラウドを見てふっと笑う。

クラウドは顔をしかめた。
なに人を見て笑ってるんだ、みたいな。

そしてそんなやり取りを最後に、カダージュはその場から離れていった。

言っていた通り、完全に離れるわけじゃなくて、つかず離れずの距離を保つのだろう。
慣れ合うとか、群れる気はないって感じなのかな。





「セフィロス…モンスターの姿を取り戻して、こちらを放っておくはずがない。いつ襲われてもいいように、準備は怠らないようにしよう」





そして、クラウドはそう言う。

確かに何か力を手にしたなら、セフィロスは確実にこちらに襲い掛かってくるはず。
そのことは他の世界の皆とも共有して、気を引き締めていこう。

セフィロスの異形の姿の記憶はないけれど、思い通りになんてさせないように。

自分の中でもそう、強く意識した。



END
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