ピピピピ、枕元に響く電子音。
あたしはその音に身をよじり、重たい瞼を擦りながら目覚まし時計へと手を伸ばす。
パチ、ボタンを押せば音が止まる。
体を起こして、今止めたばかりの時計をぼやけた瞳で確認する。
少しずつはっきりしてくる視界。うん、ばっちり。針が示すのは、いつも起きるより、30分早い時間。
「……いい、天気だ…」
ちらりとカーテンを開き、朝の空を見ればそこには綺麗な青空が広がっていた。
太陽が輝く、申し分ない快晴だ。
幸先が良い。
あたしはその天気を見てそう思った。
いつもと同じ朝。いつもと同じ平日。ただ、30分早いだけ。
そんな今日は、あたしにとっては特別な日だった。
特別な、戦いの日。
とある決意をした、大きな大きな日。
「よしっ」
あたしは気合を入れる様にパチンと軽く自分の両頬を叩き、ベットから足を下ろした。
顔をあらって、いつもの制服に手を伸ばして。
ただ、ブラッシングは念入りに。寝癖なんて絶対無しだ。
この間買ったばかりのグロスもつけよう。
いつもより早い30分は、いつもより長く鏡を睨みつけるため。
「よーし…」
念には念を。
色んな角度から自分の姿を見つめ直す。
乱れは無いか、それはもうしつこいくらいに。
そして最後に見つめたのは、机の上に飾ってあるひとつのフォトフレーム。
幼い頃に撮った、自分を含む3人の子供が笑顔を浮かべている写真だ。
ひとりは自分の仕えるべきこの国の王子様。
そしてもうひとりはその王子のお側付きの男の子。
「何年越しだっての…ってね」
指でなぞったのは、お側付きの男の子。
私と王子様より、ふたつ年上のお兄ちゃん。
私の家は、代々ルシス王家に仕える家系だ。
彼の家もまた同じように。
その為に幼い事から王子と共に育てられた私と彼。
同じような境遇にいた歳の近い子。
しかし年上からくるものか…いや、もともとしっかりしている性格の彼は私にとって本当に頼りの存在で、彼に抱く感情が恋心と変わるのにそう時間は掛からなかった。
そう、私にはずっとずっと昔から大好きな人がいます。
「イグニス…」
今日は決意の日。
私は今日、イグニスに告白をする。
To be continued