キーストーンを求めて


「ん?また客か。こんな、ヘンピな所に、よくもまあ。けど、ひと足遅かったな。キーストーンならもう、ねえよ」

「キーストーン?」

「なんだお前ら、あれ目当てで来たんじゃないのか?キーストーンってのは この世界のどこかにある古〜い神殿の扉を開けるカギよ。聞いて驚け、その神殿とはなんと古代種の神殿だ!!」

「古代種の神殿……」

「ははは!!本気にすんなよ。ただの言い伝えなんだからよ」





ウータイを発ち、他の皆とも合流し、セフィロスを追う旅を再開したクラウド一行。
タイニーブロンコで各地を回る中、とある武器職人の小屋にて…有益な情報を得られた。

古代種の神殿の鍵、キーストーンの存在。
彼はその鍵を、ゴールドソーサーの園長であるディオに売ったと言う。

そして、古代種の神殿には究極の破壊魔法が眠っている…という話も。

教えてくれた武器職人は、そんな話本気にするなと笑っていた。

でも、これクラウドたちにとっては、これ以上にない重要な手掛かり。

だからあたしたちは、キーストーンを求め、ゴールドソーサーに向かうことになった。





「キーストーン、かあ…」





ゴールドソーサーに向かう途中、タイニーブロンコで波に揺られながら。
あたしはぽつりとその重要アイテムの名を口にした。

遂に、来るとこまできちゃったなーって感じ。

キーストーン。
古代種の神殿の鍵。

近づいてきた、…あの、シナリオ。

ウータイの宿、布団の中でも…そのことばっかり考えてた。





「ナマエ、どうしたの?」

「あー、エアリス。いやさー、こう波に揺られて、潮風きもちーなーって」

「あっ、うん!わかる!海って、こんなに気持ちよかったんだなーって、私も旅、はじめてから凄く思うの」





隣で笑うエアリス。
それは今、当たり前にあるもので。

そこからウータイはこうだったとか、エアリスは何してたとか、話が弾み出す。

あたしも笑って、はしゃいで。
でも、頭の隅でずっとモヤが渦巻いてる。

シドに言われた言葉がこだまする。
見知った顔に何かが起こるとしても、それも見て見ぬ振りをしなかてはならない。

この旅に同行させてもらえてから、どこかではずっと思ってた。
でも、まだ先の事だって…そう考えて、逃げていた。

でも…もう、それも少しずつ、目前に迫る…か。

運命を、変える…こと。

そんなことを考えながら、あたしは陽射しに煌めく波を見ていた。





「キーストーンだ……」





クラウドが見上げて呟く。

場所は、ゴールドソーサーのバトルスクェア奥の展示室。
そこはあの海パ…園長ディオのショールームがあり、その中には武器職人が譲ったと言うキーストーンも展示されていた。





「さーて、クラウドくんのお手並み拝見〜って感じかな〜」

「お手並み?ああ…どう交渉するか、ってことか?」





あたしもクラウドの隣に立って一緒にキーストーンを見る。

アレがそうなのかー、なんて。
物語上の重要アイテムが目の前にるのはちょっとテンション上がる。

そうこうしていると、誰かが展示室に入ってきた。





「はっはははははは、久しぶりだな少年、少女よ。ん?それが、気に入ったかね?」





ちょっと特徴的な笑い方。
入ってみたのは海パ…んん、園長のディオ。

彼はあたしたちがキーストーンを眺めていたことにすぐ気が付いた。





「これを貸してもらえないか?」

「はっはははは。残念だが、貸し出しは禁止だよ。ふ〜む。しかし、話によっては譲らないこともない。君たちには、借りもあるしねぇ。時にそちらの少女、君はあの時、回復魔法を掛けてくれていたと聞く。礼を言おう」

「えっ?ああ…いえ」





ディオはあたしに軽く頭を下げてきた。

そういえば、ここに初めて来た時、ダインに撃たれた人たちに回復魔法を掛けたっけ。

あれは、気休め程度の話。そう大きな話じゃない。
でも、あれも…あたし自身が変えた、シナリオの変化のひとつ…か。





「譲り受けるための条件は?」





クラウドはどうすればキーストーンを譲ってくれるのかを聞く。
するとディオはまた豪快に笑った。





「はっははははは!私を楽しませてくれたまえ!」





楽しませてくれ。
そのなんとも怪しげな言葉にクラウドは顔をしかめながらあたしを見てくる。

いやいや、ここであたしの顔見てもしょうがないでしょーよ。

ていうか別にそう変なことでもないし。
むしろクラウドにとっては得意分野でしょって話だし。

まあクラウドもここで渋っても仕方がないことは理解しているのでディオに詳しい話を聞く。





「どうすればいい?」

「そうこなくては!はっはははは、そうむずかしいことではないよ。ここは、闘技場だ。少年のその力、私に見せてくれたまえ。少年ひとりの力でな。期待しているぞ!」





そう言うとディオはショールームから出ていった。

クラウドも話を理解しただろう。





「闘技場でのバトル、か。お手並み拝見…そういう意味か」

「うん!ふふふー、そーゆー意味!ま、応援してるよ、頑張れー!」





一応、応援。
いやすっげーテキトーな応援だけど。

だってまあ、完走出来なくても何とかなる事は知ってるし。

でも、それに対してクラウドは…。





「ああ…、頑張る」





素直にそう返すから…。

それに、どこか嬉しそうに見えて。

なんだかちょっと、面を食らった。





「あっれ、なんか素直!んじゃま、園長さんしっかり楽しませてらっしゃいな!」





あたしは適当におどけた。
そしてバシッとクラウドの背中を叩き、タタっと先にショールームを出た。

こうして、クラウドはひとり、闘技場に挑むことになった。
ひとつ勝ち進むたび、ハンデがひとつずつ増えていく8連戦。

あたしもFF7は何度かやってるけど、これが結構難しいんだなぁ。
大きなハンデを背負えば、流石にクラウドといえど一筋縄ではいかないわけで。

このあと超究武神覇斬のために何度も挑むことになる〜とかはまた別の話どけど。

でも結果、クラウドは見事倒れることなく8連戦を勝ち抜いた。





「はっはははは!やるな、少年よ!よし、約束だ。持っていきたまえ」





ディオは快くキーストーンを渡してくれた。

これにて目的達成。
もう用はないと、息抜きもすることなくゴールドソーサーを出ることに。





「はー、やるじゃん、クラウド。まさか8連戦勝ち抜くとは。ちょっと恐れ入ったわ」

「恐れ入ったって、ナマエ、こうなること知ってたんじゃないの?」

「うん、キーストーンも貰えたし…これがナマエの知ってる未来ってことじゃないの?」

「いやまあそうとも言うんだけど、でも実際のところは勝ち抜けなくても貰えるんだよ。目的は楽しませることだからね」

「え!」

「そうなの!?」

「うん。まあその場合、こんなもんかって言われちゃうんだけどね〜」

「へ〜、その展開、ちょっと見たかったかも!」

「あはは、確かにちょっと見たいかも。でも、闘技場か。ちょっと面白そうだったよね」

「おおー?ティファ、あーゆーの興味あり?」

「ティファならやれそう!私、見たい!」

「ふふ、たまには腕試しとかも面白そうだなって」

「やだ、ティファ。カッコいい、惚れる」

「ふふふ、もう。本当ナマエはすぐそう言う」





ゴールドソーサーの出口、ロープウェイ乗り場に向かう途中。
あたしはティファとエアリスと並んで、話しながら歩いていた。

未来のものは未来のもの。
終わってしまえば話せるから、こういう小ネタは話していくスタイル。

少し前をクラウドが歩いてる。
振り返りはしないけど、多分会話は耳に入ってるだろう。

そうしてロープウェイ乗り場に着くと、そこにいた係員さんに声を掛けられた。





「あっ、お客さん。申し訳ございません。ロープウェイが故障してしまいまして」





そこに止まっているロープウェイ。
でもそこでは他の係の人が色々と慌ただしく確認している様子が見て取れる。





「…ということは?」

「申し訳ございません!修理が終わるまでここから出られないのです」





クラウドが聞くと、係員さんに深々と頭を下げられた。

ゴールドソーサーの出入り口はこのロープウェイ、ただひとつだけ。
これでは入ることも出ることも叶わない、と。

すると後ろにいたケット・シーが言う。





「しゃあないな〜。時々あるんですわ。せや!ここのホテルに泊まりましょ!ちょっと、顔利くんですわ。話つけてきます〜」





そしてケット・シーはその場からぴょんぴょんと去っていた。
係員さんからも「修理が終わり次第、連絡させていただきます」とのこと。

まあこうなれば、大人しくここのホテルで待つのが最適だよねー。





「…で、こうなることも知ってたって?」





ここでクラウトがあたしに振り返る。
あ、やっぱりさっきのガールズトーク聞いてたな?





「モチのロンよ〜」





あたしはグッと親指を立てて答える。

まあ知ってたのにわざわざロープウェイのとこまで来て、また戻ることになって。
骨折り損なのはわかってたけど、それは仕方ないからねー。

こうして、あたしたちはケット・シーの口利きのもと、ゴールドソーサーのホテル、ゴーストホテルで一泊することになったのでした。



To be continued

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