嫌なら嫌と言う


リバースロック。
それは、一度開いたゲートを閉じることが出来るアイテム。

ゲートを閉じることで、選ばなかった歴史の可能性を試すことが出来る。

わかりやすく簡単に言えば、歴史のやり直しをすることが出来るということ。





「ノエル、セラ。ちょっとコレ、試してみても良い?」





とある時代のリバースロック。
それを手にしたナマエは俺とセラに振り向きそう問いかけてきた。

その顔は、どことなく楽しそうに見える。

俺とセラは顔を合わせたが、特に止める理由は無い。

こうして俺たちはその時代…AF10年のゲートを閉じ、改めてその時代に足を下ろした。





「この手のモンスターは追い詰められると、時空渦動を起こすんですよ。有効な対策は電磁ショックですね」





時空の歪みが生んだモンスターを倒せば、そのモンスターが時空渦動を起こして俺たちはピンチに追い込まれる。

だけど、そこに現れるひとりの救世主。

この時代は俺がホープと初めて会った時代だった。
ナマエとセラからしてみれば再会出来た時代なわけだけど。

成る程。
ナマエがこの時代のリバースロックに興味を示した理由はわかった。
ホープがいるからだ。

だけど、そこでホープとの再会をやり直してどうしたいのかまではわからない。
何する気なんだって聞いてみたら「内緒」と小さく笑われたから。





「ナマエさん…!ナマエさん…!」





ホープはこちらに歩み寄るなりナマエの腕を引いてその腕の中に閉じ込めた。

聞いた話によればこの時のホープにとっては7年ぶりにナマエに会えたことになるらしい。
ずっと行方の知れなかった大切な人にやっと会えた感動は大きいのだろう。
我を忘れて、人目も気にせず抱き着ついてしまうくらいには。

と、まあ、ここまでは知っている展開。

違うのは、ナマエにとってもこれは知っている展開だと言う事だ。





「うん、ごめんね…ホープ」





経験しているとはいえ、突然抱き着かれるのは慣れないのかその瞬間は驚いた反応を見せたナマエ。

しかし、やはり知っている事に変わりないのだ。
ナマエは自分に抱き着くホープの背に手を回し、トントン…と優しく撫でながら穏やかな声でホープに囁く。





「ナマエさん…」





するとホープはナマエの声に傍に居る実感をより得たのか、ホッとしたように顔を綻ばせた。





「失礼しました…」





しばらくしてナマエから離れたホープはセラや俺に申し訳なさそうに、そして気恥ずかしそうに咳払いして頭を下げてきた。





「全然。良かったな、再会出来て」

「うん。いいよいいよ、気にしないでホープくん」

「あ、あはは…すみません」





ホープは眉を下げ、少し顔を赤くして困り顔で笑った。

本来は突然抱き着かれたナマエが慌ててホープに呼びかけるのだ。
そこでホープも我に返って…って、考えてみれば今とそんなに状況は変わらないのかもな。

そうしたところへパタパタと駆けてくる足音が一つ。
振り向けばその主がわかる。いや、まあ知ってるんだけどさ。





「もう、ホープ先輩!!!私を置いて先に行っちゃうなんて、酷いんじゃないですか?」





そこに現れたのは記憶の通りアリサだった。
ホープにつかつかと歩み寄り、ひとりで先に行ってしまったことを怒るアリサ。

ここからはアリサも交えて皆で話して、記憶とそう変わりない展開が続いていく。

で、この後どうしたんだっけな。
俺は皆で話をしながらその先にどんなことがあったかを思い出そうとしていた。

出来事を覚えている事は覚えている。
でもその詳細を隅から隅まで覚えているわけはなく、実際には、ああ…こんな話したなとか、追体験して思い出しているのが近い感じだ。

ああ、でもそう言えばこの時のナマエってどこか元気が無さそうに見えたんだよな。
まだ出会って間もない頃だったけど、第一印象に悪いイメージは無くて、ちゃんと笑い掛けてくれる子って、そんな感じだったのに。





「ノエルが言ったんだよ」

「え?」





どうして元気が無かったんだっけ。
その理由を思い出そうとしたとき、隣から小さく声を掛けられた。

目を向ければそこにいたナマエ。

声は本当に小さく、多分俺にしか聞こえてないくらい。
ナマエはニッコリ笑い、その声のまま続けた。





「だから、ちゃんと言ってみようかなって思って」

「言うって…」





俺がナマエに何を言ったって?
…何を、言ったんだろう。






「皆さんに見せたいものがあるんです。お話しは歩きながらでも」





俺がそう記憶を辿ろうとしたその時、ホープがそう俺たちにそう笑い掛けた。

ホープは俺たちを案内するように背を向ける。
するとその時、アリサがそんなホープの腕を引き、そのままぎゅっと絡むように抱きついた。





「ご案内します!」





そして抱き着いたまま俺たちに明るい笑顔を向けてくれる。

ちょっと驚いた。
いや、でもこんなことあったなって思い出した。

そうだ。それを見たナマエは何故だかピシリと固まって、セラが戸惑ったようにナマエに声を掛けて…。

そんな二人の様子を見て思ったんだった。
もしかして、ナマエがしてる指輪の相手って…なんて。

ああ、だからナマエがどことなく大人しく見えたんだっけ。
離れた年月で、ホープの隣にいる相手が変わってはいないか、心は離れていないか…って。

出会いがしら抱きつかれておいて、何を気にする?
そもそも俺から見れば、初めて会ったホープはかなりナマエのこと気にしてるように見えてた。

ま、俺がそんな風に思ったとしても、当の本人からしてみれば不安なる気持ちもわからなくはないんだけど。

だけど、そうなってくると気になるのは今のナマエの様子だった。

だってもう不安が解消されてるとは言え、ゲートを閉じてわざわざ見に来る必要なんてないだろう?
どうしてナマエは今ここを訪れたのだろう。

俺がそうナマエを見たその時、ナマエは既に動き出していた。





「ごめんね、アリサ」





向かった先はホープとアリサ。

ナマエはすっと手を伸ばした。
その手はそっとホープの腕に絡むアリサの腕をスルリと解いた。

そして、ホープの腕に触れたまま、一言。





「あんまりべったりとかしないで欲しいな」





きゅっとホープの腕を握り、そう牽制したナマエ。
顔は、凄くすっきりしたような笑顔だった。





「あ…ご、ごめんなさい…」

「うん!」





あまりにしゃんと言う物だから、アリサも素直に謝ってた。
それにくすくすと笑いながら頷いたナマエは、そのままホープを見上げた。





「ホープ?」

「へっ…!?」





声を掛けられたホープは驚いた顔でナマエを見る。
…本当、物っ凄い驚いた顔だな。

ナマエはそんなホープに尋ねる。





「重い?」

「えっ!?あ、いや、えっと…い、いえ、ぜ、全然…」





さっきから驚きっぱなしのホープ。
言葉、どもってるし。

ホープが否定を口に首を横に振ればナマエは「そっか」と微笑みかける。
それを見たホープはナマエをぽーっと見つめてた。

でも、その顔は次第にだんだんと綻んでいく。





《…嫌なら嫌って言えば?》





…納得。
その時、俺は自分がナマエに言った言葉を思い出した。

あの時はそう言ってもナマエはごにょごにょとしてたけど、リバースロックを手に入れた事で言いたくなったのか。





「…先輩、デレデレしすぎじゃないですか?」

「な…っ!?」

「あーあ…、変な悪戯しなきゃよかったー」





ナマエが嫌と口にした結果、その後のホープの顔はずっと緩みっぱなしだった。
うん、まさにデレデレって言葉が相応しい。

あまりの緩みっぷりにアリサがホープに指摘する。

ホープは口元をパッと手の甲で隠し、その反応にアリサはどっと息をついた。





「で、言ってみた感想は?」

「ん?」





その間に、俺はナマエにこっそりと尋ねてみた。
ナマエは俺に振り向くと、同じようにこっそりと教えてくれた。





「うん。ちょっとスッキリしたかも。あと、結構楽しかったかな」





そんな風に言うナマエは、悪戯が成功したように笑っていた。



END


リバースロックのお話。まあIFと捉えて貰った方がいいかも。
ずーっとリバースロック使ったお話が書きたくて!

あとノエル視点!ノエル大好きだけどわっかんない…!

ていうかセラも空気でごめんねえええ!!
もっとセラも出したかったんですけどあんまりたくさんのキャラ動かせないんだ…私。

本当はギャグギャグしたお話だったんですけどいざ書いてみたらそうでなかった。いやシリアスでもないけど。

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