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★ またひとつ、積もる

初めて会ったのは、神羅ビルだった。
エアリスを助けに乗り込んで、やっと彼女を見つけた時…あいつが、息を切らして現れた。




《エアリス!!》





エアリスを救うにはどうしたらいいか…そんな緊迫した状況に響いた声。

その声に振り向いて、瞳に映った…ナマエ。

この時は…この子がどういう存在とか、自分達にどういう影響をもたらすのかとか、全然考えてなかった。

そして…こんなにも守りたいと、どんなに強く思うのかさえも。





「ごめんね、クラウド」

「…また、ごめんか」

「う…」

「癖なのか、謝るの」

「いやあ…癖ではないと、思うんだけど」





一緒に旅をすることになって、彼女についてまず気にかかった事。

それは、ナマエの口から零れる謝罪の言葉だった。
彼女は俺が何かするたびに、ごめんの言葉を口にする。

別にそれは悪いことじゃない。
そういう言葉を言えるのは、律儀である証拠なのだから。

…けど、そこまで気にすることもないと思うくらいではあるわけで。





「…そんなに負担に思ってないってあとどれくらい言えばいいんだ」

「うーん…だってやっぱり有り難いなあ、悪いなあって気持ちがどうしてもね」

「…調合、結構まとめてるんだろ?それでプラマイゼロな気がするけどな」

「ご冗談を」

「…冗談言ってどうするんだよ」





確かにナマエの戦闘能力は皆無だった。

どれだけ平和な場所で育ったのだろう。
それとも、箱入り娘か何かなのかと思うほど。

でも本人もそれを自覚していて、それを良しとも思っていない。

だから…そんな彼女が見つけた貢献の方法が調合だ。
アイテムの組み合わせ次第で本来とは違った効果を発揮させる…そんな特技。

ナマエは調合の組み合わせを色々試しては、その効果をノートに小まめにまとめていた。
宿屋についたら、まずノートを開くくらいの勢いで…。

実際、その効果はこの旅においてかなり頼りになる力だった。
もともと気の利くナマエの性格から、そこにあるサポートは絶大だ。

だけど、勿論…それは努力をしていたからこその部分もあるのだろう。





「…頑張ってるの、わかってる」

「え?」

「…少なくとも、俺の目にはそう映ってる」

「…クラウド」

「その努力に見合う結果も出てると思う。…それは、ちゃんと理解してくれ」





…今思えば、俺は…ナマエを見て、ちょっと昔のことを思いだしてたんだ。

ソルジャーになりたかった俺。
大きな成果を上げて、誰かに頼られたくて。

…足を引っ張ってしまうのが、死ぬほど嫌だった。





《クラウド、ありがとな!》





ザックスは笑ってくれた。

ザックスが仕留め損ねて悪あがきに起き上がろうとしたモンスター。
そいつに気づいて、俺は銃を放った。

…嬉しかったよ。
役に立てて良かったって…心からそう思った。

だから、ナマエにも…。

足手まといなんかじゃない。
本当に頼りにしているのに…それを知らないなんて、あんまりだろ?

だから、ちゃんと…気づいて、知っていて欲しいって。





「…ナマエ。だから、その…」





…とは言うものの、俺は表現力に乏しいと言うか。
なかなか…上手く自分の気持ちを伝えるのが得意じゃない。

感情に言葉を選んで…結局、ふさわしい言葉が見つからない。

だけど…。





「クラウド」

「…、なに」

「…あたしはさ、戦うってことは出来ないから。だから体を張ってる皆に比べれば、あたしなんて全然だと思ってる」

「だから、別に…」

「でも、そう言ってくれるのは嬉しいよ」

「…え」

「…ありがとう」





ナマエは微笑んだ。

少しは…伝わったのだろうか。

最も…俺自身が、この気持ちを押し隠していたから…なんとなく気に掛かかるのに…どうしてここまでわかって欲しいなんて思うのかわからなくて。

だから、余計にどう伝えたらいいのかわからなかったのかもしれない。
…心の奥底に眠るちっぽけな俺が、そう…思ってただけだから。

だけど…ナマエが、笑ってくれた。
その時…この笑みを見られて良かったと思った。

またひとつ、胸に欠片が積もった。



END



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