「ふー。今日は風の気持ち良い夜だな」





ぱちぱちと響く焚き火の音。

星が煌く空の夜。
見張りの中、吹いた心地よい風に、向かいに座るバッツは顔を綻ばせた。





「うん。今日、天気良かったもんね」

「おう。ま、それはともかく。ナマエ、寝てもいいぞ?別に俺ひとりでも見張りは十分だし」

「ううん。あんまり眠たくないんだ」

「そっか?ならいいけど」





無理するなよ、と付け加えながら…彼は焚き火に薪を投げた。

風のように気の向くままな彼。
真面目な顔をしていると思えば、子供のようにも笑う。
ふざけもするけど…こうして、他人への気遣いは忘れない。

…こういう優しいところには、なんとなく弱いな…なんて。
そんなことを思いながら、私は焚き火を見つめた。





「…ナマエ、何かあったのか?」

「え?」

「いや、気のせいだったら悪いんだけどさ」





ゆらゆら揺れる炎をぼーっと見つめていると、突然に掛けられた言葉。
私がきょとんとすると、バッツは小さく笑った。





「今日だってすげー歩いたのに、眠れないってことは…何か他に理由があるのかと思って」

「……うーん」

「お、図星?」

「やー…そんな大したことでもないんだけど」

「言ってみろよ。聞くくらいは俺にも出来るぞ」





バッツは穏やかな顔でそう言う。
私に向けた、優しい顔。

それは、気を少しでも緩ませてくれようとしてるみたいにも思える。

別に…それが、眠れない理由なのかはわからない。
だけど、思う節がないわけじゃないのも確か。

私はバッツに釣られるように笑みを零し、ゆっくりと口を開いた。





「たまにね、怖くなるんだ」

「怖い?」

「うん。こうやってね、戦いの中にいるってこと」





私達は、旅をしている。

大きな…世界の運命をも握る、そんな…広い広い旅。

そしてそれは、漠然とした感情だ。
明確に説明しろといわれると…なかなか難しいものがあるかもしれない。

でも、ふと…思うのだ。





「…旅はね、好きだよ。宛が有る無しに関わらず、色んな景色を見たりするのは好き」

「うん、俺も旅は好きだからな。それはわかる」

「ふふ。だから…うーん、まあ簡単に言えば死にたくないなあ…とか、そう言う感じかな」





世界の命運をも握るような旅なのだから…当然、危険もつき物だ。
毎日戦って、そうやって進んでいく険しい道のり。





「この旅、やめたいのか?」

「ううん。そう聞かれると、答えは絶対いいえなんだけど」





旅をして、世界を知る都度…自分に戦う力があるなら、戦っていきたいと強く思う。

だけど…そこに、恐怖も抱く。
ああ、怖いなあ…なんて。





「まあ、そりゃ、戦うのなんて誰だって怖いだろうな」

「あはは、うん、まあね」





彼の言うとおり、それは誰だって抱く感情なのだろう。

誰だって、ふっと…なんとなく果てを考えて、漠然と怖いと思うことがあるはず。

私も、今…ふと、それを思っただけ。
そして旅をしていることが、少しだけその感情の背を押した。





「だけど、うーん…、それだったら誰かに助けを求めてみたらどうだ?」

「え?」

「助けて欲しいとか、守って欲しいとか。そうやって頼んだら、力を貸してくれる奴なんて沢山いると思うけどな」





彼はそう言って、また焚き火に薪を放り投げた。
見つめていたボウッ…と炎が形を変える。

私は彼に視線を戻し、そして尋ねた。





「バッツも?」





するとバッツはニッコリと笑みを浮かべた。





「さあ、それはどうだろうな。頼んでみたらどうだ?」





相も変わらずの笑み。
なんだか悪戯してるみたい。

その顔を見てると、やっぱり私も釣られてしまう。

でも…なんだかホッとした気がした。





「じゃあ…バッツ。私のこと、守って欲しいな」





だから私は言われた通り、彼に向かってお願いをしてみた。

バッツはそれを聞くと、ちょいちょいと私を手招きしてくる。
そして、ポンポンと自分の座る丸太の隣を叩いた。

私はそれに従い腰を上げて、彼の隣に腰を下ろす。





「ああ、わかった。お安い御用さ」





わしっと、私の頭に触れた手と…耳に届いたその言葉。

髪を撫でながら少し引き寄せられて、こつん…と、額と額がくっついた。

とても近くにあった彼の顔は…。
どこか嬉しそうに、満足げに見えた気がした。



END


柊様リクエスト。

バッツで一緒に旅している時、ほのぼの…という内容で頂きました。

時期は特に考えませんでした。
多分お好みでいつでも大丈夫かとは思うのですが。

いやあ…ほのぼのって良いですよね。
なのに全然書けてないという…!!まじですみません…!!

あと私バッツ大好きなんですけどね!バッツ好きですよ、大好きなんです!
…なのですが、やっぱDFFのキャラが強くて、なんとなく掴み辛い部分がありまして。

もしもイメージと違うなあっていう感じでしたら申し訳ないです…!

このような出来ですが、少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです。
企画に参加してくださりありがとうございました!


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