秘密 「いいかい?落ち着いて。焦らないで」 「落ち着いて、焦らない、焦らない…」 旅の合間、あたしはブラスカさんから回復魔法の指導を受けていた。 ブラスカさんの教え方はとても丁寧で、わかりやすい。しかも超優しいときた。 ああ…、あたし、本当にブラスカさんが神様に見えてならないわあ。 教えてもらうたび、いーっつもあたしはそんな事思ってた。 「ああ、ブラスカさんって本当に神様ですよねー!」 「神様?私が?」 「はい!これでもかっ!てくらい優しいじゃないですか!」 「ははっ、そうかい?それは光栄だな」 ああ、その笑顔すら本当神様ですー! ほわわーん、と何だか和やかな気持ちになる。 言っちゃ悪いが、アーロンやジェクトさんは和む…と言う言葉とはちょっと違うからな。 アーロン堅物だし、ジェクトさんは色々豪快だし。 やっぱこう、のほほーんと出来るのはブラスカさんと言うか。 こんなお父さんを持ったユウナちゃんは幸せ者と言うか、いやお父さんという意味ではジェクトさんも良いお父さんなんだけど…。 …なんか思考がこのまま何処にいくのか自分でもわからないから、この辺りでやめておこう。 だってもともとはブラスカさんの人柄の話だったじゃないか。 そう、ブラスカさんは優しいって話だ。 「そういえばアーロンもブラスカさんの人柄を尊敬してるって言ってましたよ」 「本当かい?それは嬉しいね」 「だからガードになったんだ〜って。あ、でも縁談がどうこうとかも言ってたっけ」 「ほう。縁談こと、アーロンから聞いたのかい?」 「はい、断ったんですよね。んで、出世の道から外れちゃったと」 にしし、と笑いながら言うと、ブラスカさんは「そうだよ」と頷いた。 「上司から勧められた縁談をね。アーロンはあの通り真面目だし、剣の腕も立つ。上にいく素質としては申し分なかったんだよ。もしも承諾していたら…副長に昇進、だったかな」 「へえ…。本当に昇進の話もあったんだ」 「もしかしたら、憧れてる子もいたかもしれないね」 「アーロンに憧れ、ですか…?」 アーロンに憧れ。か。 でも昇進の話が来るくらいだし…。 もしかして、ジェクトさんと一緒になって「堅物!堅物ー!」って騒いでるあたしは寺院の人から見たらとんでもない奴だったりして。 まあ、やめる気なんか更々ないけどね。 …いや、でも…惹かれるっていうのは、その人の性格、人柄…。 やっぱり一番は中身だよね。少なくともあたしはそう思う。 「まあ、でも」 ぽつ、と呟く。 まあ…堅物だけど、それって言い方変えれば真面目だから長所になるし。 何だかんだ優しいし、良い人だってことは…、一緒に旅してるんだもん。よく、知ってる。 「うん、理由は、なんとなくわかる気がします」 「ほう、そうかい?」 思ったことを口に出した。 すると、それを聞いたブラスカさんは優しく微笑んだ。 「ブラスカ様、宿の主人が旅に役立てて欲しいと…」 その直度だった。噂をすれば何とやら。 ブラスカさんに用事を持ったアーロンがやってきた。 うわあ。ちょっとドキリとした。 「なんだ、ナマエも一緒か」 「うん。魔法の練習してたんだー」 「そうか」 「あと、ちょっとした雑談をね」 「雑談、ですか?」 「…ふっ、あはは!」 アーロン見たら、なんとなく笑ってしまった。 自分を見ながら笑われたら誰だって気になるだろう。 凄い顔をしかめられた。 「なんだ」 「ううん!別に」 「人の顔を見て笑っておきながら別には無いだろう」 「なら秘密さ。そうだろう、ナマエ?」 「はい!」 「なっ!ブラスカ様!」 一緒になって乗ってくれたブラスカさんと笑った。 いや、うん。さっきもちょーっとドキリとしちゃったけど、本人を前に話すには少し恥ずかしい話だ。 貴方の良いところ判ってますよ、なんて照れくさいもん。 いやいや、深い意味なんてないけれども。 アーロンは何か気になってるみたいだったけど、うん。秘密ってことで。 END ブラスカとアーロンの縁談について話すの巻。 前回同様ジェクトは?と言うツッコミは心の中でお願いします。(笑) 本当はジェクトも出したいよー!!! ×
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