「ねえ、ユウナ。ユウナは未来に何を見る?」

「え?」





飛空艇の甲板の上。
ユウナの私の二人きり。

ある日突然スピラに飛ばされて。
ひょんなことからガードになって。

今、親友と呼べるようになった召喚士の女の子。

あたしは彼女に問いかけた。





「シンを倒した未来に、ユウナの未来はあるんだよ?ねえ、ユウナは何がしたい?」

「うーん…なかなか上手く想像できないんだ。色々考えては見るんだけど、ずっと無いって思ってたから」

「欲がないなあ、ユウナは」

「そうかな?」





そよぐ優しい風に髪を押さえながら、ユウナは小さく微笑んだ。

本来、召喚士はシンと戦い命を落とす。
短いナギ節と引き換えに…その命を散らしていく。

でも今あたしたちは、ユウナを生かせたままの未来を掴もうとしている。
しかもシンを二度と復活させないようにして。

そう。いわば…永遠のナギ節。





「うーん…難しいっす」

「それ、ティーダの真似?」

「ふふ…、なんだか真似したくなっちゃうんだ」

「ユウナってば悪趣味ー。ティーダなんてどこがいいんだかー」

「え、ええっ」





うろたえるユウナが可愛くて、あたしは大笑いしてしまった。

ティーダ。彼はあたしの幼馴染みであり、今はユウナの大事な人。

あたし的にはありえない彼。
だから悪趣味なんて笑ったけれど、本当はちゃんとわかってる。

眩しい太陽のように明るい彼は、本当にいい奴だ。

純粋に、ふたりのことは応援したいと思った。

それにあたしはユウナの未来を望み続けてた。
だから、皆はどこか…喜ぶ事に、少し抵抗があったみたいだけど…あたしは喜んだ。
想いが届いた時…一番にユウナに「やったね、よかったね」と笑ったのはあたしだった。

…なのに、運命はやっぱりどこか残酷だ。

永遠のナギ節は、召喚士の犠牲を伴わない。

消えるのは…シンの中にいる彼の夢。
1000年見続けた、長い長い…煌びやかな夢の街。

消えるのは…あたしと、ティーダ。

…どうしてなんだろう。

あたしだって消えたくない。
でももう覚悟は決めた。これが最善だとわかったから。

ただ気がかりなのは…今隣にいる彼女の事。

ユウナが恋した彼は消える。
共に歩きたいと願った彼は、彼女を残して消えてしまう。





《ねえ、ナマエ。言葉で確認することじゃないと思うから言わなかったけど、…大好きだよ。私の初めての…大事な親友》





そして…あたしも。

自惚れるわけじゃない。
でも彼女は、遺書の代わりにしようとしたのだろうスフィアに…そんな言葉を残してくれた。

恋人と親友。
ふたつを失いユウナは生きる…。





「ねえ、ナマエは?」

「え?」

「ナマエは…何したい?」

「…あたしは、」





聞き返された言葉を、その時のユウナの顔を…あたしは見る事が出来なかった。

だって…何だか少し、見透かれていそうで。
消えないで…っていう、そんな意味にも聞こえた気がして。

だからあたしは空を見た。
そのままそっと、答えを言った。





「あたしは…まず、ユウナが幸せになれるか気になる…かな」

「え…?」

「なんか、ユウナと一緒だわ…。ここんとこユウナを死なせない死なせないって考えてたから、他の事が思いつかない…」

「嘘」

「嘘じゃないって。ていうかユウナ!わかってる??ちゃんと幸せ掴みなよ!他人に事気にするのも悪くないけど、ちゃんと自分の事も考えること!」

「え、う、うん…?!」





凄い剣幕。勢い任せ。

ユウナも今日一番の困惑顔だった。

でも、言って思った。
そうだよ、絶対に掴まなきゃいけない。

そう、幸せなんて掴み取ればいい。





「ユウナ、絶対掴みなよ。手を伸ばして、幸せは自分で捕まえるの」

「自分で?」

「そう。どんなに困難でもね。信じれば絶対に掴めるはずだから。アーロンが言ってたでしょ、無限の可能性ってね」

「無限の可能性…幸せは自分で掴む、か…」

「うん」





夢は、自分で掴むもの。
だから…もしもユウナが望むなら、きっと夢は掴まえられる。

あたしたちは夢だから。
貴女が望んでくれるなら…きっと、また。

そんな予感が、する気がした。



END



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