「エアリス」
スラムの教会。
扉を開けて、白い花畑に揺れるピンクのリボン。
名前を呼べば、顔をあげて微笑んだ。
「ナマエ!」
嬉しそうに手を振って、私を迎える貴女。
私も手を振り返して、そっと彼女に近づいた。
「相変わらず綺麗ね、ここは」
「今日は特別。なんだか生き生きしてるみたい」
「そんなのわかるの?」
「なんとなく?」
「なにそれ?」
何気ない会話。
ただ、一緒に笑いあった。
ワンピースを揺らし、お花を手入れるエアリス。
私は…そんな彼女の監視役だった。
「ねえ、ナマエ。今日はまたマーケットに行かない?今日、新しいアクセサリー入荷するって聞いたの!」
「ええ?私、神羅の人間なんですけど」
「大丈夫、大丈夫!みんな、ナマエのこと、認めてくれたよ。美人だし、良い人だなって言ってたもん」
「本当かなあ?」
「本当!」
エアリスは楽しそうにそう言った。
私も、エアリスと過ごすのは好きだった。
例えそれが任務だったとしても…。
彼女は古代種。私はタークス。
彼女を見張り、危険を排除する。
それがツォンさんとともに私に与えられた任務。
「じゃあ…行ってみる?」
「ふふ、そうこなくちゃ!」
明るく笑うエアリスは、何よりも優しく、そして綺麗だった。
最初は、なんとも思っていなかった。
彼女は特別な人間。
会社の利益になりうる存在。
与えられた任務をただこなすことだけ考えていた。
…でも、エアリスの優しさに触れて、話して、笑って。
彼女は私に、かけがえない存在になった。
「私、ナマエに何か見繕ってあげる!」
「あら、それは楽しみね」
「期待しててね?」
そんな日々を過ごし続けて、私は思った。
…エアリスは、どうして縛られなければならないのか…と。
古代種ってなに。
神羅に何をもたらすの。
何が特別なの。
…自由を奪う理由はあるの?
「じゃあ、待ってて!すぐに手入れ終わらせちゃうから」
「了解」
でも…私にはそれに立ち向かう力はない…。
私は…彼女を縛りつける人間…。
縛りつけて、自由を奪って…籠の中に閉じ込めておくの。
鍵を、開けてあげられない。
「…エアリス」
「ん?なーに?」
「…私も、何か選んであげるよ。エアリスに似合うもの」
「本当!?嬉しい!」
そんな私の言葉に、彼女は笑ってくれた。
些細な時間。小さな幸せ。
ただ…出来る限り、彼女にあたたかい、ごく普通の時間を…。
私が少しでも…あげられたらいいなと思った。
To be continued