「どう、して…?」





並ぶカード。
ちょっとした、気まぐれの遊び。

テーブルに示されたタロットカードを見て、私は言葉を失った。





「どうして…どうして…っ…」





最近、気まぐれから始めた占い。
調べていくうちにその奥深さに興味を惹かれ、さらにのめり込んだ小さな趣味。

本当に…なんとなくだった。
ただなんとなく、近いうちに新しい任務が入ったっていうから…君のことを占った。

未来にめくられたのは…死神のカード。

たかが占い。
やり直せば結果なんていくらでも変わる。

そんなの反則。
でも往生際の悪い私は、やり直してみた。

なのに…何度やり直しても、死神が消えてくれない。

気味が悪くて、背筋が震えた。





「なーにしてんだ、ナマエ?」

「!」





その時、明るい声が響いてきた。
顔を上げればそこにあったいつもの笑顔。





「…ザックス」

「また占いか?お前本当、最近はまってるよなー」





屈託ない、明るい顔。

ちょっとした縁で知り合いになった彼。
話してみたら、ちょうどミッドガルに来た時期が近くて仲良くなった。

気兼ねなく話せる、そんな友達。





「今日は何占ってたんだ?」

「えっ…」





向かいに座り、尋ねられた。
その質問に私は詰まった。





「そ、れは…」

「ん?」

「……えっと、」





淀む言葉にザックスは首を傾げた。

でもそれは一瞬。

すぐに何やら楽しいことでも思いついたようにお得意の笑みを浮かべた。





「ははーん?さては俺との相性占いだろ〜?」

「なっ…」





予想していなかった返しに別の意味で言葉が詰まった。

本当に不意打ち。
びっくりして少し頬が赤くなった気がした。

だからムキになって、すぐに言い返した。





「ば、馬鹿じゃないの…!」

「ちょ、馬鹿はなくねえ?」

「馬鹿に馬鹿って言って何が悪いのかなあ…」

「ひっで!」





陽気に笑う、いつも通りのザックス。
そんな君を見ていたら、なんだか気持ちが落ち着いてきた。

ちゃんと、いつもみたく話せてた。





「まあ、ザックスのこと占ってたのは正解だけどね」

「ほーう。やっぱ相性なんだろ?ん?ん?」

「口、縫ってみる?」

「怖!ナマエちゃんってば毒舌…俺は悲しいよ」

「何とでもおっしゃいな。ザックスの運勢占ってたの」

「お。結果は?」





興味津津。
まるで犬が尻尾を振っているように。

子犬のザックスだなんて、よく言ったものだと思う。

私はにやりと笑った。





「もう最低最悪。やっぱり日頃の行いがものを言うんだね」

「なに!?俺程日頃の行いが良い奴なんて居ないだろ!?」

「どの口がそんなこと言うのー?」

「ナマエこそ、ちゃんと俺のこと見てんのかー?」

「うーん…。そんなに興味持って見たこともないかも」

「ちょちょちょ…、お前さっきから本当酷いな?」

「…っあはは!」





笑った。

いつもそうだ。
君といると、私は自然と…いつも笑う。

一緒に笑う時間が、私はきっと好きだった。





「ま、結果が悪かったってんなら気をつけるか」

「ザックスって占い信じるの?」

「うーん。良い結果は全面的に信じる」

「あー、ぽい」

「けど、悪い結果だってそれはそれでいいと思うぞ。気にしすぎてもアレだけどさ、慎重にはなれるだろ?」

「ザックスから慎重なんて言葉が出てくるなんて…」

「ナマエは俺を何だと思ってるんだよ…」





他愛ないいつもの会話。
少し雑談をしたところで、彼は「さて…」と立ちあがった。





「じゃ、そろそろ行くか。任務の説明があるんだよな」

「どこだっけ?」

「ニブルヘイムってとこ」

「ふーん…良く知らないや。でもセフィロスも行くんだよね」

「そ。ちゃっちゃと終わらせて帰ってくるよ」





英雄セフィロス…。
そうだ、そんな彼と一緒で…何を心配するのか。

それに…こんなことばっかり言ってるけど、ザックスだって強いこと…私はちゃんと知っている。





「じゃあ、またね」

「おう。またな」






また。

それはいつもの挨拶。
当たり前の言葉。

別れを惜しむことなどなく軽く手を振って、振り返されて。





「悪い結果でも慎重になれる…か」





依存はしない。
でも気に留めておく。

そうだ。それくらいでいいんだ。

その人の力になれたなら…それで。
…忠告、出来たんだもん。

気にしすぎても、しょうがないよね。





「早く、帰ってこい…」





しばらくは君のいない日々。
つまらなかった…って、きっと私は君に言うから。



END



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