優しい陽射しが窓から溢れる。
いつもの賑やかな空気は無いけれど、だけどその場所はあたしたちを迎えてくれたような気がした。
「ううーん…やっぱりアジトは落ち着くね、ジタン」
宝箱の上。
いつもの自分の定位置に腰掛けて、尻尾を揺らす彼に笑う。
すると彼も笑みを返してくれた。
「ああ、そうだな。帰ってきたなーって感じがするよな」
リンドブルムの劇場街。
その一角にあるタンタラスのアジト。
ダガーはお姫様だし、目的だったリンドブルムに来られてシド大公様と話すことが沢山あるみたいだ。
…王様、ブリ虫だったけど…。まあそれは言うまい。
スタイナーのおじさんはもちろん姫様から離れるつもりは無さそうだし。
ビビはひとりで街を回ってみるそうだ。
だからそれぞれ別行動。
あたしはジタンと一緒に一度アジトに戻って来た。
「本当ただいま〜って感じ。んーっ、落ち着くなー」
うーん、と体を伸ばしてくつろいだ。
お日様の光がぽかぽかして、なんだかとっても気持ちが良い。
正直、リンドブルムまでの道のりは楽なものじゃなかった。
プリマビスタが墜落しなかったらとっくに着いていたはずだしね。
魔の森に始まり、氷の洞窟を抜けて、ダリからカーゴシップを飛ばして。
本当、結構長い道のりだった。
あたしでさえそんなことを思うのだ。
戦いにも旅にも慣れていないダガーとビビは本当に大変だったと思う。
「ジタンはさ、凄いよね」
「ん?どうした急に?」
だから、あたしはそんなことを言ってみたくなった。
「いや、行動力あるなって思っただけなんだけど」
「なんだそれ?今更言うことなのか?」
「だよね。あたしもそう思う。でも、ボスの反対押し切ってさ」
「ナマエも同じだろ?」
「…でも、ジタンが助けに行くって言わなかったら、あたしはどうしてたかわからない」
魔の森で、森の主に捕らえられてしまったダガー。
助けなきゃってずっと思ってたけど、いざひとりで行動出来たかっていうと…正直、わからない。
ジタンが迷わず「助けに行く」って言ってくれたから、あたしは行動出来たのだと思う。
「俺は、俺がいなくてもナマエは助けに行ったと思うけどな?」
でもジタンはあたしのそんな本音を明るい笑顔で吹き飛ばした。
何も疑うことなく、ただ真っ直ぐな顔をして。
「どうして?」
「ナマエだから」
「なにそれ?」
「ナマエは困ってる誰かを放っておける性格じゃないからな」
「……。」
ふざけることも無く、当たり前のことを言うかのようにジタンは言った。
そんなの認めたらまるで自惚れ。
だけど…こんな風に言ってくれたなら、なんだか少し自惚れてもいい気がした。
「…でも、ジタンがいてくれて良かったって本当に思ったから」
君がいたから、安心できた。
前を見て迷うことなくここまで進むことが出来た。
それは本当に事実だから。
「へー。なんか今日は素直だなあ?」
「べっつにー」
「ひひっ、惚れたか?」
悪戯っぽくジタンは笑う。
だからあたしも真似して返した。
「さあて、どうかなあ」
でも、こんな風に返したのは初めてだ。
いつもは絶対否定する。
舌を出して「べーっ」なんて。
「お、進展あり?」
ジタンは楽しそうに笑った。
END