君がいる

ほんの少しだけ肌寒い。
その寒さに気づき、ふっと目が覚めた。

多分、薄暗い。
瞼を閉じていてもなんとなくわかる。

開いてみてもやっぱり眩しいなんてことは無くて、寝起きの眼には優しいものだ。





「あれ、ごめん。起こしたかい?」





すると、声がした。男の子の声。

まだ少し視界がぼんやりしてる。
声の方に顔を上げて、わかったのは金の色だ。

少しずつはっきりしてくる。





「ラムザ…」





名前を呼ぶ。

私が寝そべる並んだ木箱。
そのすぐ傍に彼はひざをついていた。





「布、掛け直したんだけど…」

「ああ、平気。ありがと」





私に掛かる布を掛け直した。
だから起こしたかと気にする彼に私は首を横に振った。

私はゆっくり上半身を起こした。
口元に手を当てて、ふわっとひとつ欠伸をする。

まだ暗い。
はっきりとした時間はわからないけど、恐らくまだ朝は遠いのだろう。

ラムザは天井を見た。





「今日は屋根がある。空き家が見つかってよかったね。雨風が凌げるのはやっぱり大きい」

「隙間風は気になるけど?」

「はは、それは贅沢だね」





布ですっぽり体を包んで言えば、ラムザは笑った。
でもその笑みはすぐに消える。

そして軽く目を伏せた。





「ごめん…ナマエ」

「なにが?」

「こんなことに、巻き込んでしまっているから」





突然謝ってきたラムザ。
理由を尋ねれば彼はそう言った。

本来なら屋根がある日々が当たり前だって?
彼が言いたいのはそういう事か。

こんなこと、それは戦いの日々だ。

続く人々の戦い。
そしてそれを煽る者。

彼はそれを止めたいと願う。

私は、そんな彼と旅をしている。
そのきっかけは、そう…成り行きだった。

ラムザとは幼馴染みと言えるだろうか。
士官アカデミーでも共に過ごし、今こうしているのもその延長線上だ。

でも、私は首を横に振った。





「別に、巻き込まれたなんて思ってない」

「え…?」

「私は、自分がラムザについて行きたいとからついて行ってるだけ」

「ナマエ…」





戦いには、色んな人々の想いが渦巻いている。

私利私欲。野望。思惑。
ただ大切なものを守りたいと願う気持ちまで、様々。

ラムザの想いは、純粋だ。
真っ直ぐすぎるところはあるかもしれないけど、理想を掴もうとあがく彼の姿は見ていて気分がいい。

だから、ラムザの傍にいようと選んだのは自分自身だ。

そう伝えれば、置いていた手に被さるように手が重ねられた。
それは勿論、他でも無いラムザの手だった。





「ラムザ?」

「…最近、すごく実感するんだ。君がいてくれて…ナマエが傍にいてくれること、それがどんなに有り難いことなのかって」

「…有り難い?」





少しだけ、か細い声。
ぎゅっと重なる手を包む力が強まった。





「ここまで歪んだものをいくつも見た。そうじゃない人もたくさんいる。僕はちゃんとそれを知ってる。だけど、息苦しくなるから。だからナマエが僕の味方でいてくれるのが、心強くてたまらないんだ」

「ラムザ…」





此処に至るまで、いくつ裏切りを見ただろう。
信じてくれる人だっている。でも、怖くなる。

私はそっと、重なっていない方の手でラムザの髪に触れた。





「だって信頼してるもの」





軽く金色を撫でながら、当たり前のように言う。

だってきっと、君は想いは想いで返してくれる。
信頼すれば、信頼を返してくれると知っているから。

するとラムザは私の目を見つめて、ふわっと安心したように微笑んだ。





「…布を掛け直した、は口実なんだ」

「え?」

「本当は顔が見たくて」





まるでに白状するように、そう言った彼。

すると、くっと距離が近づいた。
そして優しく、優しすぎるくらいの手で抱き寄せられた。

それは傍にいることを噛みしめるかのような抱擁。





「僕も、君を信頼している」

「……。」

「だから僕は、君を守る」




優しい声が耳元でした。
そして最後にふっと嬉しそうに微笑んだ音。





「…ありがと」





私は頷く。

私も返すよ。思いをちゃんと。
そう伝えるように、ラムザの背に手を回して強く強く抱きしめ返した。



END

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