光の輪
私たちは決めている。
定期的に、この場を訪れる事を。
コクーンを支える柱の下。
人々を守るため、自らクリスタルの柱となり…世界を守ったふたりの元へ。
「ヴァニラ〜、ファング〜!」
「ナマエさん!待ってください!」
「ほらほら、ホープ早く!」
「走らなくても、二人も待ってくれますって!」
駆け出して、一足早くついた柱の下。
私は振り返り、手招きして彼に早く来いと促す。
彼は小走りで私の元に駆け寄ってくる。
そして隣に来てくれたところで、私は再び柱と向き合うのだ。
「きたよ!ヴァニラ!ファング!」
かつての仲間へと。
あの時と…きっと同じ。
話しては自然と浮かべた、満面の笑顔で。
「ねえ、聞いてよ。こないだちょっと測って見たらさ、ホープってば身長180センチになってたんだよ。あの時はあんなに小さかったのに、信じられない!」
「信じられないって…なんですか、その報告」
「いや、ヴァニラは絶対わかってくれるよ。ええ〜!あのホープが!?って」
「……なんかちょっと想像出来るような気もしますけど」
「ってことは、やっぱそういうことになるわけだよ」
なにも、特別な事はない。
ただ、他愛の無い話をして…ちょっとした近況の出来事を伝える。
なんだか不思議と懐かしい気持ちになって、きっと、あたしもホープも、この時間が好きだったと思う。
だけど今回は特別…。
いつもとは少し違う、そんな心境があった。
「今日はね、ちょっといつものお話とは違うの。すっごい大きな事件があったんだよ〜っていう報告に来たんだ」
「事件って…なんか物騒なニュアンスじゃないですか?」
「そう?あたしにとって超特大な出来事だったんだけど」
「そりゃ僕にとってもそうですが」
「ふふふ。ならいいじゃん!」
「はあ…。まあ…ナマエさんが楽しそうなら僕は何も言いません」
「んふふ!よろしいです。でもね、その内容は今は言わない。伝えるのは、ふたりが戻ってきたらのお楽しみです!」
見上げると、クリスタルに陽の光が反射して…きらっと優しく光る。
それを見たまま、私は小さく微笑んだ。
「ビックリするでしょうね、きっと」
「うん、ビックリするよ。だから楽しみにしててね!」
ふたりに言いながら、思いを過去に向ける。
あの旅をしていた時だったら、きっと想像もしなかった。
だからきっと、ふたりも驚く。
「ファングさんとかは、勿体ぶるなって怒るかもしれませんが」
「んー。それでもコレは直接きちんと言いたいからねえ」
「そうですね。それは僕も思いますよ」
そういって顔を合わせ、ホープと笑いあう。
うん、やっぱりこういうのは…ちゃんと顔を見て言いたい。
それに、きっと驚いた顔は、すっごく見物だと思うんだ。
「じゃあ、ちょっと慌しいけど戻ろうか。アリサに怒られるね。この忙しいときに長い時間抜けるな、って」
「はは、そうですね。本音では、もう少しゆっくりしたいところですけど…箱舟の計画が遅れると、お二人に報告も出来ませんからね」
「そういうこと。じゃあ、ヴァニラ、ファング」
「今日はこのくらいで、失礼しますね」
ばいばい、と手を振って、私たちは来た道を歩いていく。
ただ、私は隣で揺れる彼の腕に、そっと手を伸ばして腕を絡めた。
「…ナマエさん?」
「んー?早く報告したいなあって」
そうやって笑いかければ、彼もまた微笑んでくれる。
「そうですね」
左手の薬指。
互いの指に、揃いの輝き。
END