願いはひとつだけ
「あれが落ちてきたらみーんな死ぬんだなあ。星がぶっこわれて、ぜんぶぜーんぶ終わるのかー」
「…確かに事実だが、そんなに淡々と言わないでくれ…」
空にぽっかりと浮かぶでっかい隕石。
メテオを見上げてひょうひょうと言えば、隣でそれを聞いていたクラウドは頭を抱えていた。
だけど、そんなの無視して私は続ける。
「ホーリーだって、それが一縷の望みだけど実際はどうなるのかわからないし」
「…………。」
「それに…もし戦いに勝てたとしても、全員で帰ってこられるとは限らないんだよね」
最後は、ひょうひょうとしてない。
我ながらぼそっと…小さく呟くような声だった。
「ナマエ…怖いのか?」
最後の私の声を聞いた彼は、何を思ったのだろう?
気遣うように…、割れものに触るかのように、そっとした声だった。
「怖いって言うか、嫌?」
私は振りかえり、彼に向き合いそう答えた。
青色の不思議な瞳と視線が交わる。
彼は私に尋ね返してきた。
「嫌?」
「うん。セフィロスを倒してね、ホーリーが星を守ってくれたとしても。その先の未来にクラウドがいなかったら、あたしには意味がないの」
「…………。」
手を伸ばして、そっと…彼の胸を触れる。
そのまま耳を寄せて、澄ませると…とん、とん…と優しいリズムが聞こえてきた。
生きてるって言う、そういう音だ。
「だから、クラウド…絶対生きてね。そうじゃなかったら、後追ってやる」
「……脅しか、それ」
「うん…そう…」
音を聞いたまま、私は頷いた。
それが貴方の気力に変わるなら、いくらだって脅してやる。
「…わかった。生きるよ…。俺の命がナマエの気力になるなら…あがいて見せるさ」
背に大きな手の感触。
優しく優しく、抱きすくめられる。
聞こえた彼の言葉は、出会った頃なら聞けなかった。
「……クラウド、本当、変わったよね」
「嫌か…?」
「まさか」
どうかどうか、この先も…。
この音を聞いていられますように。
今願うのは、それだけだ。
END