月を見上げる
月の浮かぶ夜が好き。
暗闇に浮かぶ、月を眺める事が好き。
《ナマエ…、あいつは生きている。あの月で、お前を導くために動いているんだ》
バラ色の髪の綺麗な人。
解放者様が…私に告げた。
うずまく寂しさを解放するため、ライトニングは月を指さした。
「…なんで、そんなとこにいるのやら」
ぽっかり浮かぶ月に呟く。
君のいない169年間。
ゆっくりゆっくり…少しずつ、私の心は壊れていった。
最初は嘆き、悲しんで。
そんな日々に…少しずつ慣れて。
でも、慣れていく自分が嫌で。
忘れたくなくて、寂しくて。
抱えるものは、壊れていった。
だけど、そんな長い時間に歪んだ心は…今という、世界の終わる間近のところで、とてもとても穏やかになった。
「そっか…生きてるのか」
まるく浮かぶ、金色の光。
それを見る私の心は穏やかだ。
まさに、魂が解放された…本当にそんな気分だった。
なんというか…単純だとは思う。
だけど、それでも…やっぱりそれは事実だった。
「…生きてるんだね、ホープ」
行方知れず、何の痕跡もなく…ふっと消えた君の姿。
生きているのか死んでいるのか、何も、何もわからない。
まるで最初からいなかったかのようにも思えた。
だから、君は此処にいた…。
そういう事実を、もう一度噛み締めたかった。
そして…君は今も存在していると…贅沢な事実を知れた。
この気持ちで世界の最期を迎えられる事…私は幸せに思えるよ。
「…ホープ…」
月の浮かぶ夜が好き。
暗闇に浮かぶ、月を眺める事が好き。
君がいる月が好き。
だから私は月を見上げる。
世界が終わる…その日まで。
END
短いですね。
書いた時間も物凄く短いです。