偽りの永遠で構わない

(※2周目要素あり)





人の力ではない、不思議な輝き。
どこか神秘的な光を放つ目の前のそれは、贖罪という名のクリスタル。





「時間を戻しちゃうなんて、凄いんだね、これ」

「代わりに記憶も無くしてしまう…その代償は大きいですけどね」





画面に向かい、ライトに指示を送っているホープが振り向いた。

今、私が膝を抱えて眺めているのは贖罪のクリスタル。
どうしても世界の寿命を延ばせなかった場合に時を戻す事が出来ると言う…いわば、最後の手段のようなもの。





「ライトが言ってたけど、もしかしたら何十回、何百回、使い続けられてるのかな?」

「さあ…いくら考えても僕たちには知りようがありませんからね。僕も、ナマエさんの記憶も、そのクリスタルが使われれば消えてしまいますから」

「……そうだね」





じっと、私はただ…そのクリスタルを眺めていた。
使い続ければ、今という最後の13日を…永劫に繰り返し続けるクリスタル。

それを眺めていると、私は何か…自分の中にいびつな物を感じることがあった。





「…ホープが消えたのはさ、169年前…だったよね?」

「え?ああ…はい、そうですね。地上の記憶では169年前、ホープ・エストハイムという人間は行方不明になっています」





まるで他人事。
自分の事じゃないみたいに、そんな声で君は話す。

忘れもしない…。
疑問形にしてしまったけど、本当はよく覚えている。

169年前…ホープは突然姿を消した。

人々の先頭に立つ男が消えて、世界は大騒ぎになった。

私の心も…苦しみで一杯になった。

探して探して…叫んで、泣いて。
心が壊れかけた時、私は…箱舟に佇んでいた。





《ホー…プ…?》

《ナマエさん、お久しぶりですね》





そしてそこには、いつかの…とても懐かしい姿をした君がいた。

感情が欠落していても。
私への気持ちを上手く思う事が出来なくなっていても…。

でもやっぱり、会いたくて会いたくてたまらなかった……ホープという人間はそこにいた。





「ナマエさんは贖罪のクリスタルが気になるんですか?」

「うーん…凄いなって思うだけ」

「人間が到底適わない…神が作ったものですからね」

「…うん」





全能の神…ブーニベルゼ。

ブーニベルゼはどうして、あたしの感情を奪わないのだろう。
過去を悔やむ気持ち、嘆く気持ち…。ホープの事を想う気持ちも…。

奪われてしまえば、こんなに苦しくもならないのに…。

世界の終末に備えて…皆頑張っているのに…。
こんな感情…最低なのに…。

セラを想うスノウのように…。
ユールに願うノエルのように…。

あたしは強くなんて…無いのに。

強くないから…嫌になる。
ホープのいない169年は…希望なんて何もなかった。

何も望まない…ただ、傍にいてくれさえいれば…それでよかった…。

だから…今もそう…。
このクリスタルで偽りの永遠が手に入るのなら…それでも私は構わないの。





「ねえ…ホープ…」

「なんですか?」

「…好き」

「えっ…?」

「大好きだよ…ホープ」

「………ありがとうございます」





上手く感情を返せない自分に、戸惑っているホープ。

だけどそれでも構わない…。
振りむいて、君がそこにいるのなら。


END


暗…っ!暗すぎる…!
なんかこう…病んでるというか、歪んでるというか…そう言うのが書きたかった!

…んだと思います。←

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