確信犯か天然か

「ホープー!ケアルしてー」

「はーい」





先ほどの戦闘で軽い傷を負った手の甲。
癒しの光を貰おうと回復魔法を得意とする彼を呼べば、にこっと微笑みながらホープは走ってきてくれた。





「大丈夫ですか?」

「うん。ちょっと引っ掻かれただけ」

「そんな、凄く痛そうじゃないですか。綺麗な手なのに傷でも残ったら大変ですよ。すぐに治しますね」





そう言いながらホープはあたしの傷に手を当て、優しい光で包んでくれた。

あたたかい光が傷を消し、癒す。
綺麗になった手を見て、あたしは彼にお礼を言った。





「ありがと、ホープ」

「はい!」





ホープは嬉しそうに頷き顔を綻ばせた。
でもすぐ「あれ?」と何かを思い出したかのようにその顔をきょとんとさせた。





「でもナマエさん、ポーション持ってませんでしたか?」





ホープが言うように、あたしのポーチの中にはポーションが入っていた。

というより、ヒーラーの能力に長けていないあたしは常にポーションを持ち歩くことにしている。
彼はそのことを覚えていたのだろう。

あたしは軽くポーチを叩きながら頷いた。





「うん。持ってるよ」

「ですよね?使えばよかったのに」

「うーん、まあ節約?補充するのも面倒だし。こういうのはいざって時にとっとかないと」

「まあ、それもそうですね」

「ああ、でも他にも理由はあるけどね」

「え?」





「そうなんですか?」と首を傾げるホープ。
あたしは少し低い彼の目線に視線を合わせ、にんまり笑ってこう言った。





「うん。だって、ホープに回復してもらいたいじゃない?」

「えっ?」





ふふふー、と陽気に笑えばホープの頬は少しだけ赤く染まった気がする。

なんだかちょっとしてやったり。
かわいらしい反応が見られて非常に満足だ。

だって彼はたまにびっくりするくらいドキッとさせることを言ってくる。
さっきだって「綺麗な手」とか、ね。

これは…わざとなのか、天然なのか…両方なのか。

だからこれはほんの小さな悪戯の仕返し。
成功を収めた悪戯に、あたしはすっかり満足してた。





「じゃあ…、」

「…!」





だけどその時、くいっと惹かれた腕。
満足してたあたしは、そこですっかり油断してた。





「離れたらダメですよ?」

「え…」





引かれた手と、優しい笑顔に固まった。

自分で仕掛けた悪戯だ。
でも、なんか…またやられた感が凄い。





「ねえ…もしかしてさ、やっぱりわざとやってんの…?」

「なにがです?」

「…その顔もわざとか、おいちょっと」

「だって傍にいてもらわないと、すぐに回復出来ないじゃないですか」





どっちなんだかわかりゃしない。
ニコニコとした可愛い笑顔。

そう、まだ格好いいというよりは可愛い彼だけど…。

まったく、最初の頃の泣きそうな顔はどこへやら。
こんなこと言えちゃうくらい、たくましくなっちゃってさ。

……そうなればもう、こっちとしても開き直るしかない、かな。





「…よし、だったらお言葉に甘えちゃうよ。離れてやんない!」

「あははっ、了解です!」





もうヤケクソだ。
ホープはそれに笑ってたから、今回は確信犯かも知れない。

でもまあ…本心しか言ってない。
それは事実だから。それはそれでいいけどね。



END

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