いつかきっと
真夜中のパドラ遺跡。
昼は研究を重ねるアカデミーの人間で溢れるこの場所も…、今はすっかり静まり返っている。
物音を立てない様にゆっくりテントを出た僕は…ひとり、予言の書を見つめていた。
「……ナマエ、さん…」
小さく…本当に小さく呟いた貴女の名前。
それは僕だけの耳に届いて、静かに夜の闇の中に消えていく。
その静寂を感じながら、予言の書に手をかざした。
すると…目の前に広がった映像。
決死に武器を振るうライトさんと…、その背中を守る様に魔法を放つ…ナマエさんの姿だった。
初めて見た時は…心臓が止まるかと思った。
そして…何度見ても、胸が酷く締め付けられる。
今も、そうだ。
ぐっ…と、例えがたい気持ちで一杯になって、僕はネクタイごと服の胸部をぎゅうっと握りしめた。
ルシにされたあの日…。
あの日からずっと隣にいたナマエさん。
歳が一番近かったから、考え方も似てて…よく一緒に笑ってた。
…気付くと僕は、あの時から確かに…貴女が好きだった。
言葉にすることはなかったけど…。
ただ…貴女が笑っているだけで…幸せだったから。
なのに…オーファンを倒して全てが終わった時…貴女は隣にいなかった。
僕の記憶では、ヴァニラさんとファングさんとライトさんと…コクーンを支えるクリスタルの柱の中で眠ってる。
だけどセラさんの記憶では…貴女は僕の隣にいたと。
隣で…楽しそうに笑っていたと。
「…どこにいるんですか?」
映像の中の貴女に向けて尋ねた。
…もちろん、返事が返ってくることは無い…。
緊迫感に包まれた顔で、魔法を放ち続けるだけ。
予言の書に映る場所は、見たこともない風景。
いつの時代なのか、どこなのかもわからない。
なにも、なにもわからないんだ…。
「…ナマエさん…」
また呟く、大切な名前。
…僕はまだ…こんなに…貴女のことが。
それなのに…どうしてこんなに遠いのだろう。
「…会いたいです…、ナマエさん…」
こんな姿、誰にも見せられない。
情けない声で…ただ、想いを呟いて…。
行き場の無い想いが、ただ…漂う。
「…僕は…貴女に会いたい…」
予言の書を見る度、思う。
見る度、思いが強くなる。
だから僕は…貴女を探している。
貴女に会う方法を。
…それに、もう…戦わせたくないんだ。
僕と同じで戦いとは無縁の生活をしていたナマエさんは、戦うことに抵抗を持っていたから。
戦いなんて、望んでないから。
「必ず…探し出します…」
いつか、必ず…。
また…次に貴女に会えたら…。
そうしたら…僕は…。
その時は…貴女にちゃんと…。
END
まだノエルとセラに会ってない時のつもりの大人ホープ。
あと、ライトさんと一緒にヴァルハラに誘拐(違)されたヒロイン。