パラダイムチェンジ
(※ふたりの門出ED前提)
今、僕の目の前にいる彼女は…なにやら謎めいた動きを見せている。
「こう来たら…こうやって踏み切って、そのままグイッと…」
「…ナマエさん、何してるんですか」
不思議に思った僕は当人に尋ねてみることにした。
踏み切ってグイッと…って、一体何なのだろう。
僕が声を掛けると、彼女、ナマエさんはピタリと動きを止めた。
そして僕に目を合わせ、真顔で答えてくれた。
「イメトレ」
「…いめとれ…?」
だけそ僕は相変わらず首をひねることしか出来なかった。
イメトレ…って、イメージトレーニングだよな…。
そんなことはわかる。問題はなんのイメトレなのか…ということだ。
理解しきっていない僕を察したナマエさんは「はあっ」と溜め息をつくと、ずいっと僕に歩み寄り、ビシリと教えてくれた。
「戦闘に決まってるでしょ!戦闘!ホープを守るためのイメージトレーニング!」
「は、はあ…」
「なにその気の抜けた返事!さっきスノウが言ってたこと、もう忘れちゃったの!?」
「わ、忘れてませんけど…」
ナマエさんの勢いに、僕は少し負け気味だった。
だってなんだか凄い剣幕と言うか、熱がこもってるというか…。
「暗殺なんて冗談じゃない!誰がんなこと企ててんのか知らんけど、ぜってー阻止する!!」
パシッと良い音を響かせ、拳と掌をぶつけるナマエさん。
彼女はさっきからずっとこんな感じだ。
スノウが、3日後に僕が暗殺されるという知らせをくれてから…ずっと。
「あ、あの…そんな気張らなくても…」
なんだか圧倒されてしまっている。
だけど何とか彼女の熱を静めようと言葉を発したら、なぜか僕はキッと睨まれてしまった。
「気を張らずになんかいられるか!」
「え、ええ…?!」
「そもそもさ、あたしの得意ロールなんだと思ってんの?アタッカー、ブラスター、ジャマーとか何なのって話じゃない。突撃するために生まれてきました的な」
「べ、別にそんなことは…」
確かに、あの旅の時から彼女は前線で戦うことを得意といていた。
ファングさんあたりと一緒になって、威勢よく駆け出していくのなんて見慣れた光景だったっけ。
ブラスター、エンハンサー、ヒーラーなんて…だれがどう聞いても後方支援の僕はそれを後ろで見ておろおろしていた。
あの頃から、ずっと想っていたナマエさん。
怪我しないかな、大丈夫かな、って…いつもいつも。
怪我をしたら、真っ先に駆け寄って回復してあげなくちゃ。
守ることの出来なかったあの時の僕は、せめてそう出来る様に気を配ってた。
「本当、来るなら来て見ろってのよ!返り討ちにしてやるんだから!」
…ナマエさんは、相変わらず燃えていた。
そう、本当相変わらず。
あの時からちっとも変わらない。
このままじゃ本気で突撃していっちゃいそうだ…。
でも、僕も相変わらず…。
ナマエさんが怪我したらどうしようって、不安になって、たまらない。
それも…僕のために。
だけど、僕の相変わらずはここまでだ。
だってあれから僕だって成長したのだから。
貴方を守れるように…知識も力も、手に出来るように、出来る限り努力した。
少なくとも、あの時より出来ることはあるはずだ。
「ナマエさん。無茶、しないでください」
「え?」
僕はぎゅっと、彼女の手を両手で包むように握り締めた。
突然の行動だった。
だからナマエさんは、少しきょとんとしていた。
「もちろん僕は死ぬつもりなんか無い。未来がどんな形をしていようと、絶対に生きて、未来を変えます」
「そ、そうだよ。だからあたし、気合入れて…」
「でも、貴女が無理をしたら意味なんてない。貴女が怪我をしたり、最悪いなくなってしまったら…。僕はどうしたらいいかわからなくなる。あの時守れなかった分、守れるようになりたいと願ったのに…」
「ホー、プ…」
握る手に力をこめた。
すっぽりと、包むことの出来るようになった貴女の手。
そうさ。得意分野なんて関係ない。
触れていると、こんなにも守るべき対象なのだと実感出来る。
「だからどうか、無茶はしないでください。貴女が戦うなら、僕はそんな貴女を守ります」
「…い、今守らなきゃならない対象はホープだし…」
「でも、ナマエさんを守りたいという思いはどうあっても譲れませんから」
握る力をこめて、ナマエさんに微笑む。
するとナマエさんは俯いた。
前髪に隠れる顔色は、少し赤く染まっているようだった。
…ほら。やっぱりこんなにも、貴女を僕は守りたいから。
「(俺は3日間こいつらに挟まれなきゃならないのか…)」
そんな様子をノエルくんが遠目で見ていたことなど…僕達は知らない。
END
不憫ノエル。(笑)
パラドクスEDで「ふたりの門出」が一番好きです。
しかしセラとスノウの旅よりノエルになってホープを守りたい。←
あの続きはどこでやれるんですか!!←←